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『日本人「慰安婦」―愛国心と人身売買と―』 VAWW RAC編 西野瑠美子・小野沢あかね責任編集

2015.04.05 Sun

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.韓国をはじめアジア各地の元「慰安婦」たちが声を上げたことにより、日本軍「慰安婦」問題が重大な人権問題として認識されるようになって20数年経ちました。この間、歴史の中で不問にされてきた戦時性暴力が「人道に対する罪」として国際法の中に位置づけられるという世界史的な流れができましたが、一方、日本人「慰安婦」の名乗り出は無いまま、その存在は置き去りにされてきました。

人々のイメージの中に、日本人「慰安婦」たちの多くは公娼出身で、主として将校相手で優遇されていたという認識があり、それが意図的、無意識的に「慰安婦」被害の枠組みから日本人を外してきた要因だと考えられます。

本書は、「慰安婦」=未婚の処女が強制的に連行された、というモデル被害者像にとらわれていたら見えない日本人「慰安婦」たちに光を当て、改めて「慰安婦」問題における「被害」とは何かを再定義したいと、VAWW RAC日本人「慰安婦」プロジェクトチームが2011年から3年間にわたって取り組んできた共同研究です。

「慰安所」生活が、「わたしの人生の中でも最も良い時代」、「なつかしい」と語る日本人「慰安婦」の言葉は、前借金に縛られた絶望的な公娼時代と、帰国後の戦後社会の冷たい視線にさらされたという構造の中で理解されるべきですし、「こんな汚れた体で兵隊さんの役に立てるなら」、「死んだら靖国神社へ入れてもらえる」という言葉からは、彼女たちの愛国心が巧妙に利用され搾取される戦争国家の罠をこそ見据えたいと思います。わたしたちが無意識のうちにとらわれている「慰安婦」イメージを攪乱する日本人「慰安婦」たち。構造的な暴力のもとでも、必死で、今より、より「良い」状況を自ら手にするために、生存戦略を駆使した日本人「慰安婦」たちの姿を多くの方々に知っていただきたいと思います。より多様な「慰安婦」を包摂する「慰安婦」像を共有し、問題解決を進めるために。

以下、目次です。

第1章 日本人「慰安婦」はどう集められたか?

日本人「慰安婦」の徴集と近代公娼制度 小野沢あかね

長崎事件・静岡事件大審院判決を読む―「慰安婦」強制連行は誘拐である 前田 朗

植民地朝鮮の公娼制度と「慰安婦」制度 宋連玉

日本の慰安所政策について 永井和

第2章 日本人「慰安婦」はどう扱われたか?

日本人「慰安婦」の処遇と特徴   西野瑠美子

書籍・雑誌にみる日本人「慰安婦」

慰安所業者の聞き取りから  石橋菜穂子

沖縄・芭蕉敷の慰安所の事例 田場祥子

沖縄の日本軍慰安所 林博史

第3章 日本人「慰安婦」の戦後はどうだったか?

日本人「慰安婦」の戦後―菊丸さんの場合   広田和子

書籍・雑誌にみる日本人「慰安婦」の戦後

〈コラム〉かにた婦人の村で戦後を送った城田すず子さんの戦後  天羽道子

〈コラム〉シンガポールに置き去りにされた日本人「慰安婦」 西川幸

日本軍「慰安所」からR.A.A、占領軍「慰安所」へ 平井和子

〈コラム〉元「慰安婦」たちの「戦後」―日本人/朝鮮人/中国人ではどう違ったか 金富子

文献・資料紹介  (紹介者 平井和子)








カテゴリー:著者・編集者からの紹介

タグ:慰安婦 / / 戦争責任 / 歴史 / 戦時性暴力 / 軍隊性奴隷制