エッセイ

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これが家父長制ってものかしら?(銀行編) 古久保さくら

2009.05.21 Thu

 WANの事務作業をしていると、ゆうちょ銀行の通帳に記載される振込者氏名とWANのNPO会員として登録したい氏名が異なるという場合にちょくちょく出会う。「田中という名前で振り込みましたが、登録は山下でお願いします。」というような事態だ。多分、この場合田中が戸籍名で銀行口座の名義なんだけれど、通姓としては山下を使っておられるのだろうな、と推察している。 推察するのは、自分自身も戸籍名と通姓の二つを使用しているからだ。私の場合、通姓の通帳ももっている。通姓が旧姓でもあるため、婚姻届を出す前につくった通帳を延々と使っている限りは通帳は生き残って使用可能だった。ところが、先日、M銀行で、旧姓の通帳から戸籍名の通帳へ振替しようと2通をいっしょに窓口に出してしまい、もめた。M銀行側は「戸籍名の通帳しかつくれないので、改姓届けを出してくれ」と主張。私のほうは、旧姓の通帳が必要と主張。別室に通されてえんえん議論して分かったことは、「特別の場合」があれば戸籍名でない通帳はつくれるということ。通姓使用届けというものを提出して、通姓を通帳名義とし、通姓と戸籍名の連関は別途記載するという方法がある。マネーロンダリングの防止をうるさくいう昨今、これくらいの手続きはせざるを得ないというのは分からないでもない。でも、この程度の手続きで通姓使用ができるんだったら、「特別の場合」に限る必要ってあるんだろうか?
 別の言い方をすれば、「特別の場合」って何?ということ。今回のやりとりを通じて、本を書く、講演をする、など「仕事」上通姓を使用している、これが「特別の場合」になりそうなことは分かった。でも、通帳に通姓を使いたい場合はこれ以外にもあるはず。離婚したくてたまらない相手と同じ苗字を使いたくない、とか。いや、夫婦円満でも、通姓を使いたいということだってあるだろう。このような場合は「特別の場合」になるんだろうか?というより、このような場合を認めないために、「特別の場合」を設定しているようにすら思われる。
 どの名前を名乗りたいのか、おんなの意思を尊重することは、実はそんなに難しいことではないはずなのに、「難しいこと」にしておきたいのだ。これが「家父長制」ってものかしら?

カテゴリー:ちょっとしたニュース

タグ:家父長制 / 古久保さくら

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