2010.08.22 Sun
さて、原稿の締切りも近づいてきたことだし、何を書こうかなと思った次第である。このコラムを書いている私は当然、オタクかつ「腐」である(最近はやおい/BL好きの男性もいるので、腐女子とは呼ばずに「腐」ということにする)。昨年から何を思ったのか同人活動を始めてしまい、ときどきイベント会場でスペースに座っている。というわけで、「萌え」を製造する側としてこのシンポジウムに何らかの視点や情報を提供できるんではないかということで、コラムを書かせていただけることになった(ありがとうございます)。
腐にとって、なぜ男同士の恋愛が重要なのだろうか。描き手として改めて考えてみると、それはファンタジーの差ゆえではないかと思ったりする。男女間の恋愛は、それこそかなり変わったカップリングであっても現実に存在してしまう。生殖(子どもというはてしなく現実的な存在)の問題が生じてくるのはいわずもがなである。それゆえ異性カップリングでは現実的要素を排した感情のもつれや葛藤に特化した物語(ファンタジー)を描きにくい。その点、男性同士の恋愛はそれだけでもなかなか成立しないファンタジーである。
また、鷲田センセイに言わせると女性は子どもを産むという機能があるために存在感が確かであるのに比べ、男性は現象でしかないので大変不安定な存在なのだそうである。実は男性の持つこの不安定さが、腐に妄想を抱かせる隙間を生みだしているのではないかと私は思っている(女性同士の恋愛である百合にファンタジーを覚える人が少数派なのは、女性の持つ現実感、その存在の確かさゆえではないかと思う)。
ちなみに、描き手にとって重要なのは、関係性をいかに描くことができるか(版権モノの場合は、登場人物の言動からどのような関係性を解釈として読み込むことができるか)、である。そして萌えを最大化するためには、できる限り現実的な要素を排したストーリーを描く方が望ましい。
現実の男性が感情よりも感覚が発達している存在であるとすれば、やおい/BLでそうした男性たちに、豊かな恋愛感情の表現をしてもらうことはファンタジーの度合を上げるので大変都合がいい。さらに描き手側にしてみると、やおい/BLをメタファーとして、自己の感情の葛藤の整理や乗り越えを行っている場合がある。この場合、なぜ自分がその話を描くのかわからない。自分でもわからないまま描き進んでいって、終了間際になってようやく自分の描きたいことに気づいたりする。後に本を読み返して、本当は自分がこんな風に言われたかったんじゃないか、と思うことがある(そしてそういう本の場合は、ありがたいことに同じように思ってくれる読者さんがいる)。多分、私は自分でもわからない何かを吐き出して救われるために、メタファーとしてやおいやBLを描くのだと思う。そして、読んだ人が少しでも何かを感じてくれたら、と思いながら描いている。だからなぜここまでBLややおいなるものが密やかに多くの人々を魅了したかといえば、単なるエロや萌えに留まらない何かがあるわけで、描き手としてはその言葉にできない部分をできる限り拾って描けたらいいなあ、と思うわけである(もちろんそうした表現行為の一環として性描写は当然出てくるし、性的な事柄は個人間のコミュニケーションとしては身体および精神への侵食度が最大のものであるがゆえに、関係性を描く上では大変重要な位置にある)。
孤独感に泣きそうになるときも、生き続けることすら苦しいときも、やおい/BLの中ではそうした葛藤を何とか乗り越えて、登場人物たちが(性的な事柄も含めて)互いを想いやったり、助けあったり優しくしあったりするわけで、それはもちろん現実ではないけれど、そうした関係性を夢見ることはできる。できるし、私たちにはそうした想像を共有しあうことが(自由主義社会だからこそ)許されている。そしてまた、そうしたイマジネーションは人間が生きていく上でなくてはならないものだと、私は思う。
ファンタジーは個人によって違う。現実の他者に対する危害とならない限りにおいて、個人のファンタジーは最大限許されるべきだと思う。もちろん、内心において思想やファンタジーを個人的に保持することと、それらを外部に表現することとは別次元の話である。表現行為は他者に影響を及ぼすため、ある程度のゾーニングや年齢制限は必要だろう。しかしそのことが表現者側の表現行為を必要以上に萎縮させることになってはいけないと思っている。というわけで、まだまだ自分のはまったカップリングの話が終わらないので、夏のイベント原稿に追われている腐からの意見でした(本業もさっさとやらんとあかんのですけど・・・)。シンポの成功、お祈りしています。
(ゴ-マルキュウ、関西在住某大学大学院生)
―――――――――――――――――――――――――――――――
日 時:2010年9月11日(土)13:30-17:30(開場13:00)
会 場:大阪市立大学文化交流センターホール
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
脱原発
女性政策
憲法・平和
高齢社会
子育て・教育
性表現
LGBT
最終講義
博士論文
研究助成・公募
アート情報
女性運動・グループ
フェミニストカウンセリング
弁護士
女性センター
セレクトニュース
マスコミが騒がないニュース
女の本屋
ブックトーク
シネマラウンジ
ミニコミ図書館
エッセイ
WAN基金
お助け情報
WANマーケット
女と政治をつなぐ
Worldwide WAN
わいわいWAN
女性学講座
上野研究室
原発ゼロの道
動画






