2013.04.10 Wed
2013年3月4日、北海道を襲った暴風の中で、身動きが出来なくなった父と娘のニュースは人々の記憶に残る物であったと思います。9歳の一人娘を守ろうと、53歳の父は、倉庫の壁と自分の体の間に娘を入れ、その胸で娘を包むようにして抱きかかえ暴風雪から遮り、自身のジャンパーすら娘にかけて10時間守り続けた。そして・・・娘は奇跡的に凍傷だけですみ、父は低体温症で亡くなった。
涙腺がゆるんでしまう切ない事件。文字通り命がけで我が娘を守った父の行動は、「娘を思う父親の気持ちに共感です」「読むだけで泣いてしまう」「胸が詰まる思いだ…娘さんにはお父さんの分も精一杯生きてもらいたい」と、現代日本の多くの人の共感を呼びました。
しかし、もし、これが100年前の日本の出来事であり、父は旧家の跡取りであったらどうであったでしょうか? 「跡も継げない女子にかまけて命を落とすとは、情に溺れていて跡取りとして情けない」「なぜ再婚して男児をもうけていなかったのか、ふぬけ」「娘だけ助かるとは親不孝者」というような、厳しい言葉が投げつけられていたのではないでしょうか?
そして、21世紀になって13年たった今も、この日本では「病身の妻と離婚せず、遅くに生まれた10歳の娘を大事にする53歳の父」「人柄が良いと評判の父」「そして国連で、水と災害に関する特別会合で講演もする53歳の男性」が、「ふぬけであるから退位せよ」と罵られています。
その男、53歳、いたって常識的な感覚を持つ、皇太子徳仁親王。
最近は、一人娘の愛子さんが、強硬な男系派のテロリストから命さえ狙われているという噂もあります。もし、狙われた時に、とっさに父が娘を庇ったら、そして重症など負ったとしたら、「皇位継承ができぬ娘の命を、自分より大事にするとは、大いにフヌケであるから、天皇になる資格なし」と、徳仁さんは、ますます声高にマスコミから罵られることでしょう。
このような機構が「国民統合の象徴」なのです。
左派あるいはリベラル派と言われる人達は、皇室を無視するのではなく、きちんと批判し、「天皇は国民統合の象徴」という条文を憲法から無くし、天皇制をただの文化遺産になるよう働きかけるか、あるいは、天皇という機構が「国民統合の象徴」にふさわしい物に変化するように働きかけるか、どちらかをすべきでしょう。無視を続けるのは卑怯だと思います。
そして、2006年2月、天皇という機構を「国民統合の象徴」にふさわしい形に変化させる一つの動きと言える、「女性も皇位を継げるように皇室典範を改正しよう」という改正審議中に、ある皇族女性が妊娠超初期段階であるという臨時ニュースが流れました。それが6週という妊娠初期であったこと、そして心音確認すぐにNHKが速報を出したことを考えれば、これが「全くの偶然の妊娠」だったと考えるのは非科学的と言えるでしょう。そして審議は中断され、これみよがしな賛辞の中で月は満ち、皇室に41年ぶりの男児が誕生しました。
邪魔者になった女児愛子さんは、週刊誌のストーカーのような悪意取材に差し出され、男児は、宮内庁からの罰則つきの報道規制で守られる。その中でも、この53歳の父は、一人娘を守り続けているために、最近は「廃太子論」「退位論」まで書き立てられています。
そして、あの2006年2月の「ご懐妊速報」への、国民の「違和感を持ったものの抗議はしない」と言う態度は、確実に国民自らに降りかかってきていると言えるでしょう。「人の命に優劣をつける」ことを許してしまった国民に対し、国民の命も優劣をつけさせられる日が近づいているように感じます。天皇の国家元首化を唱える政治家が目立ちだし、「男系男子派の安倍首相」は改憲を目指しています。
今年の3月11日、政府主催の東日本大震災犠牲者追悼式典の報道で、東京新聞は、コメントを述べる遺族にピントをあわせ、天皇皇后へはピントがあっていない写真を使ったということで、「不見識」「敬意が無い」と批判されました。いったい誰のための追悼式であったのでしょうか?
思えばあの「ご懐妊速報」は分かれ道でした。そこで我々が選んだ道は「天皇のご真影(写真)を神と飾り、天皇の赤子となり、女性は社会的な人権を無くす」というゴールへ続いており、すでに幾分か歩き出しているように思います。「娘を守る常識的な53歳の男性、皇太子徳仁親王」を雪の中に捨て置きながら、私達は危険な道を歩いているのではないでしょうか?
昨年12月18日 政府の女性宮家創設へのパブリックコメントの結果が発表されました。約26万7千件よせられたコメントの多くを反対意見が占めたということです。女性人権をねじ曲げるおかしな制度を阻むことにご協力いただきまして、誠にありがとうございました。
引き続き、皇室と女性人権の関係への監視に、ご協力をお願いいたします。
皇族女性の人権を考える会~ひばりに寄せて~ 代表 Haruna
http://nagamiya.sakura.ne.jp/
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