2014.04.25 Fri
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本書は『家族と住まいを社会学する』上野さんと、建築家である山本理顕さんとの対談と、上野さんが家族と住宅について発言してきたエッセイや対談が収録されている。上野さんの『家族と住まいを社会学する』手腕には、今回もまた目からウロコがホロホロ落ちる。家族の変貌を追いかけてきた上野さんの関心と、山本理顕さんの仕事とが出会って引き起こした幸福な化学反応を、わたしたちは見逃す手はない。それどころか手応えたっぷりである。
家は「家族を容れるハコ」であり、家に住んでいる人びとのことを、家族と呼ぶ。ハコに住む人間は、変化・成長・衰退している家族である。想起すべき課題は、「この家族の変化に柔軟に対応する住宅がそろそろ登場してもよい頃でしょう」である。
理念的な近代家族は虚構でしかなかった。フェミニズムがいちばん対抗し、破壊しようとしてきたのは、「家族は愛の共同体」という神話である。因習や規範に忠実なハコは、近代家族の理念が虚構でしかなかったにもかかわらず、家族を容れてきた。わたしたちが住む家は擬態であるといえる。なぜなら、この擬態こそがなければ、家族というユニットが崩壊してしまうから、である。
「家族は愛の共同体」とし、プライバシーを一見、守るふうに見せて家のドアは、何を隠そうとしてきたのか。近代家族というものはそれが成立したスタートの時点から「積みすぎた方舟」という上野さん。そのココロは出帆した時から、座礁が運命づけられていた、である。
「家族を容れるハコ」を考える着眼点が、現実の諸問題の解決に寄与する。理念に忠実に生きようとして生きづらいと気づいているなら、ハコ舟から降りる。擬態が長引くと、わたしでなくなる気がする。
堀 紀美子
『家族を容れるハコ 家族を超えるハコ』
平凡社
2002年11月発行
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