長崎県大村市弥勒町にある「おおむら夢ファーム シュシュ」は、農家が出資して生まれた会社。
地域農家と連携した直売所と観光農園、それにレストラン、パン工房、体験教室などを組み合わせ、
町全体に50万人を呼び寄せるようになった注目のところだ。
長崎空港から車で15分ほどの山村にある。
http://www.chouchou.co.jp/

◆「おおむら夢ファーム シュシュ」は女性が主役
いまでは売上は約10億円。働く人は72名にもなった。そのうち8割が女性だ。購買をする人も75%が女性だ。購入者の6割が半径2キロメートル以内の人だというから、今や近郊の人たち日常の買い物の場にもなっている。
 施設内にある農産物直売所「新鮮組」は、170戸の農家が出荷。売上は3億5000万円。農家の平均売上は210万円だ。
 ちなみにシュシュとは、フランス語で、「可愛らしい」という意味らしいのだが、これは公募で決定したのだという。
 そもそものスタートは、1996年ビニールハウスを使った農家の野菜を販売する農産物直売所「新鮮組」だった。そのあと、2000年、8戸の農家が出資して新たに「おおむら夢ファーム シュシュ」が生まれた。


◆観光農園から直売所・農家レストラン・農業体験など合わせて人気に
 この地域は、ぶどう、梨などの果樹を、直接、消費者に販売する観光農園が中心だった。しかし、人が訪れるのは、9月、10月の収穫時期のみ。あとは閑散としている。高齢化もすすみ後継者がいないというところもある。そこで地区農業農村活性化協議会が生まれた。
 まずは、実際に足元からやるしかないと始まったのが農産物直売所。そして1997年、今度は、果実を使ったジェラート工房を創り若い人の集客につながった。そこを核に、農家レストラン、ピザづくり体験、観光農園、農家民泊など地域と連携し、人を魅了するところとなった。

◆出荷できなかった果物も女性の手でケーキや饅頭に生まれ変わった

山口幸子さん

 この創設にかかわった農家の一人が山口純典(やまぐち・すみのり)さん。梨40a、田んぼ60a、桃10aを栽培する。現在は、「おおむら夢ファーム シュシュ」の専務取締役でもある。会社が多忙で、農業は、週2回ほど。今では、農業の中心は、奥さんの山口幸子さんとなっている。
 妻の幸子さんは、ほかの農家女性とともに、創設以来、農産物「直売所・新鮮組」に出荷してきたメンバー。彼女たちの活動が、饅頭、弁当、お菓子などをもたらし、売り場を豊かなものにした。
そして画期的なことが起こった。
それまで、傷ついたり、強風で落ちたり、完熟したりといった果樹や、大きすぎるホウレンソウ、など、出荷できないものが、加工によって生まれかわり商品になったのだ。
 農家の作物を市場に出荷するためには、決まった規格やサイズがあって、綺麗で大きさをそろえる必要がある。だから大きすぎたり、小さすぎたり、傷ついたりした農産物は出荷ができない。出荷できないものが2割から3割になることもある。なかには破棄されるものもある。
 そんな農産物がもったいないと加工をするようになったのが山口幸子さんだった。
桃をコンポートにしてパイ生地に包んでだしたり、梨のパイ、桃のゼリー、果物時期が終わると、蒸し饅頭、おはぎ、お餅などを作る。
加工場は自宅の一部を改装したところ。売上は400万円にもなった。

大人気のお餅

シュシュ店内



  ◆「もったいない」が始まりだった
 幸子さんは、以前は、保育園で保育士として働いていた。子供たちが大好きだったという。農業をするつもりはなかったのだという。ところがご主人のお義父さんが病気になり、やむなく保育士を辞めて、家の手伝いをすることとなった。
 当時、小さい子供が3人いた。長男が小学2年生、次男が3歳、長女が2歳だった。
 子供の服もほしい。食費もほしい。自分の小遣もほしい。不安だったという。
 そんなとき、ご主人たちが、地域の仲間と直売所を立ち上げた。そこで、幸子さんは、家で栽培をしている桃や梨など、出荷できないものをパイやゼリーにして販売をし始めたのだ。幸い直売所は車で行けば5分もかからなかった。
 「保育園のときに1週間3回、3時のおやつがあって、手作りしていたんです。家では、梨や桃の農産物をみたら、ちょっと傷ついたり、強風で落ちたりしたものが、捨てられている。それも2割くらいあるんです。もったいない。それで梨や桃をパイやゼリーにした」
 加工場は、枇杷(びわ)の選果場にしていたところ。ご主人が応接室にしようと思っていたらしい。ところが幸子さんの加工場になった。改装し、手洗い、シンク、冷蔵庫などを置いた。保健所の許可をとった。改装費は約50万円だった。
 「果物がないときは、蒸し饅頭、おはぎ、お餅を作っている。主人にもち米を栽培してもらっている。
 ニンジンの葉っぱとか、大きくなりすぎたホウレンソウとか出荷していないものがある。それを茹でてミキサーにかけてニンジン餅とかホウレンソウ餅とか作る。茹でた葉は冷凍にしとけば一年使える。
 ナガモチは、梨摘みのときのおやつで食べたもの。米粉と小麦粉を練ったものを広げて、そこに餡を入れて巻いたもの。アレンジで、ヨモギ、ホウレンソウ入りを作る。ヨモギやホウレンソウをミキサーでかけると汁がでるでしょう、それをナガモチに入れて作る。
 サツマイモを蒸かして練って、米粉、生姜を入れた揚げたツキアゲとかね。
 捨てるものない。余ったものがあれば、こちらが欲しいくらい(笑)」

ツキアゲ

バーコードを印刷する幸子さん


◆地域をうまく巡る暮らしと仕組みが女性から生まれた
 直売所への搬入は、冬場は一回。日曜は2回。夏場は2、3回もっていく。
 直売所には、POSのバーコードを打ち出し印刷をする機械がある。そこに幸子さんが商品の名前、値段を入れると、バーコードが印刷されて出てくる。レジのPOSで読み取られれると幸子さんの携帯に売り上げ状況が1時間おきに配信される。販売数がすぐにわかるという仕組み。
「ほんとうは、保母が大好きで、ずっとしたかった。自分がやりたいことをしないとむなしくなる。でも、今は、むなしさはない。自分で考えたものが形になっているから」
 今は、加工品を出す女性は6名いる。農産物を出す農家も170名もいるから、直売所は仲間の集う場所にもなった。
「会話があるし、余ったものをぶつぶつ交換したりする。普段農家だと会えないような人にもあえる。お客さんにもあえる。ここに出しているおばあちゃんたちも張り合いがでている。このへんの直売所の周りのみんなとおしゃべりできるのが楽しい」
 新鮮組のイベントで豚汁をみんなで作ったり、食事をしたりもします。研修で、7月のこのあたりの直売所を巡ったりもするし楽しいです」
 加工品が余ったものは近所におすそわけすることも。すると、いただいた人が、庭の野菜をくれたりして、そこから、また新しい商品が生まれることも。
 地域のなかの農産物が、どれもがうまく巡っている。

 2106年から、農家民泊も始めた。山口さんのところで9軒目になる。たくさんの人が来てくれるが、泊まるところがない。そこから民泊が始まった。
「主人が、おいやるぞ、と言ってきた。主人を信じていますから。16歳から17歳くらいの学生がくる。インド、パキスタンとかね。海外交流ですね。普通の暮らしを知りたいとやってくる。おばあちゃん(83歳)も社交的だから張り切っている」
 現在、山口幸子さんは、ご主人と、おばあちゃんの3人暮らし。子供たちは、みんな無事大きくなって、それぞれが社会人となった。

◆ シュシュの商品のご注文はこちらから
http://www.store-chouchou.jp/  
農業生産法人 有限会社シュシュ  
〒856-0005  長崎県大村市弥勒寺町486  
TEL:0957-55-5288  
FAX:0957-55-5323