
アステージ(明日のステージ創り手)メンバー
第1期生は、16人。
「動けば変わる。社会は変わる。」プロジェクト(主催:レッツ・アステージ、共催:WAN)で、WANシンポジウム2017@北海道・札幌のレポーターを務めました!
「自分ゴト」の半径が3メートルから30メートルに広がる瞬間を実感したメンバーからのレポートを連載します。
アステージ・メンバー第1期生
柘植みのり(つげ みのり)
シンポジウム参加前に、名古屋の仲間たちと『そろそろ「社会運動」の話をしよう』の読書会に参加してきました。この本を読み進めていく中で、学部生のころ参加していた学生FD運動(学生の視点から大学の授業改善を求める運動)のことを思い出しました。
私は今大学院生なので、何年か前のことになりますが、その当時は運動に参加するぞ、と意気込んだわけではなく、ただ単に大学の授業に不満があったから、参加していたのでした。
さて、シンポジウムでは田中優子さんをはじめ、様々なパネリストの方々からも貴重なお話を伺いました。その中でも下郷沙季さんが、日常の中でちくしょう!と思ったことに対して、それが起きた社会的背景を調べ、自分にできる行動をとっていくとお話しされていたところは、自分の経験と重ねながら聞いていました。
下郷さんからは、そうした社会運動のきっかけとなった経験が、運動のなかでは一般化される恐れもあるとの重要な指摘もありましたが、まず自分が抱いた感情をもとに行動し、社会運動を始める経緯に共感しました。私が学生FD運動を始めたきっかけも、教員が一方的に話しているだけの授業や受け身な学生たちに対して、ちくしょう!と思った経験がきっかけだったからです。
そこから今の大学のあり方はどうなっているのかを知り、仲間とも出会い、これは自分だけの問題ではないと考えていった経緯が自分にもあったと思います。
このシンポジウムを通して、自分の経験を振り返りながら社会運動について考えることができたと思います。
まずは自分の感じ方や気持ちを大事にしていいんだ、そして肩ひじ張らずに、気づいたら社会運動している、ぐらいの気持ちでやっていけばいいんだ、と思えました。
もう一つ、大きな影響を受けたのが鎌田華乃子さんによる「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」のお話です。鎌田さんによると、性犯罪に関する現状の刑法では、暴行・脅迫を用いた性暴力が処罰されるため、教師や上司などの上下関係を利用して暴行・脅迫せずとも性交を強要した場合は、裁判で合意があったとみなされることがある、など多くの問題点があり、性被害を受けた女性の権利が十分に守られていません。
「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」では刑法改正を求めるオンライン署名をはじめ、ロビーイング活動、SNSでの発信、ダンスプロジェクトなど、多様でユニークな方法によって、性犯罪について多くの人が自分事として考え、行動に移す機会を作り出していました。運動の方法が参考になっただけでなく、女性の権利にかかわる重要なテーマを提起されたご報告でした。
私も何かしなければ…という気持ちで名古屋に帰ると、タイミングよく大学院の授業のテーマが、性暴力について。刑法改正を求めるオンライン署名のチラシを受講者に配ってみたところ、次の週、署名したよと言ってくれる人もいました。
6月7日、3万名に届いた署名が、金田法務大臣に提出されたとの報告をFacebookで見たとき、自分も運動に加わったんだという気持ちで達成感がありました。そして16日には、改正案が参院で可決され、110年ぶりに刑法が改正されました。残念ながら改正法には、「暴力脅迫用件」が残されたままという問題点があります。
しかしロビーイング活動のおかげで、3年後の見直しが定められました。これから3年後に向けて、この問題について関心を持つ人を増やしていきたいと思います。このような経験も含め、ひとりひとりが行動を起こせば社会は変わることを実感できたシンポジウムでした。
刑法改正については以下の記事を参考にしました。改正された点や現状の性犯罪に関する対応の問題点もまとめられています。
渡辺一樹,2017,「刑法改正がヤマ場『性暴力被害者が前向きに生きられる日本に』当事者ら、大臣に要望」,BuzzFeed News,(2017年6月15日取得https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170607?utm_term=.eqbvn9WER#.ci7VWxzd6).
安藤美由紀・北條香子,2017「性犯罪、法定刑引き上げ 改正刑法が成立 厳罰化へ」,東京新聞,(2017年6月18日取得,http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201706/CK2017061702000126.html)
林やすこ(はやし やすこ)
WANシンポジウム2017「”自分ゴト“から始まる社会づくり-半径3メートルをこえて-」に参加した。このシンポジウムのテーマのもとになったのは、『そろそろ社会運動の話をしよう―他人ゴトから自分ゴトへ。社会を変えるための実践論』(2014年、明石書店)という本である。シンポジウムは、本の著編者である、田中優子法政大学総長による基調講演「さぁ、『社会を変える』をはじめよう」、実践事例報告(4名)、パネル報告、総括という構成で進められた。
田中さんの基調講演では、出版経緯や内容、また法政大学総長としての取り組みについて触れながら、「市民として社会で生きる」ことと「社会運動」がどのようにつながっているのか、などが話されたなかで、「市民」とは「行動するための知性」をもった人であるという言葉が印象的でした。
実践事例を報告された4名のみなさんは、「行動するための知性」と、当事者として直面した問題の解決に向け、個人の問題を社会の問題としてとらえ直す思考をもち、主体的に「社会を変えること」という行動を日々の暮らしのなかで実践しているものだと感じました。
その活動や方法は多様で事例報告のなかで興味深かったのは、下郷紗季さんが問題提起した「経験の一般化・単純化」に関する議論です。「過度な一般化や単純化は伝わりやすいという側面を持つが、他方で自分や他者を傷つけることや思考停止に陥ってしまうという側面がある」という指摘に対して、田中さんからの「運動のなかで言葉を敏感であることが必要である」との発言がありました。
いろいろあって思考停止状態の今の私にとっては、下郷さんの自分で考え抜く思考のスタイルや言葉を大切にするということを触れたことは、大きな力となった。『そろそろ社会運動の話をしよう~』の中の一文、「運動は戦争ではなく、攻撃でもなく、人がこの複雑な社会でかろうじてひとりの個人であり続けるための行動と発言」であることを糧に、自分で考え、自分の言葉で語ることからもう一度始めたいと考えている。
また、美馬のゆりさんのサイエンス・サポート函館の取り組み事例で、科学館がない函館に、ハコモノを作るのではなく、科学祭という「祭り」を行ったという実践事例報告を聞き、「そうだ。わたしたちも同じだ!」とつぶやいていた。
今回のシンポジウムでは「市民」がわたしのキーワードとなった。「市民」とは、権利主体としての自覚をもち、当事者性をもつ(自分ゴト化)、そして、行動するための知性をもった「人」である。さらに、社会化する側面では、コミュニケ―ションと討論、メディアの活用が必要であると『そろそろ社会運動の話をしよう~』は指摘する。
シンポジウム開催に向け、『そろそろ社会運動の話をしよう~』の読書会(札幌・名古屋)やブックトーク(東京)が開催されたり、実行委員会のみなさんはさまざまに工夫を凝らした企画を創ってくださった。それぞれが「市民」であることへの一歩であったように思う。
「動けば変わる。社会は変わる。」★WANシンポジウム2017@北海道・札幌★レポート#1は、こちらから★
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