東大の学部の女子比率は約2割。ならば他の大学はどうなのか、それは一体何を示しているのか。
以前にここで東大に関する記事を書いて以来、気になっていた。
「教育というのは、特に建設的な議論をしにくい分野の一つ。関心が高い人が多く、誰しも自分の経験があるから、何らかの意見を強く持っていることが多い。
そしてそうした意見は自分や身近な人の経験、ちょっとしたサンプルに基づいているだけであることに気づかず『法則』のように思ってしまう。専門知による積み重ねはもちろん、事実関係・エビデンスなどが軽視されやすい。」
学生時代にゼミで聞いたこの言葉を思い出して、教育に何らの専門性を持たない私が安易に取り組める問題ではないかもしれないと思ったが、どうしても気になること二つだけは整理したかった。
一つ目、大学別の男女比の数字そのもの。
二つ目、大学生の男女比が「頭の良さ」の問題であるという説の雑さ。
一点目は、私自身が見当がつかなかったし、メジャーな情報でもないようだ。大学別かつ学部別の数値比較は、ネットで検索した程度では見つけられなかったため、自分で収集することにした。
今回、旧帝大7大学を調べた結果が以下の表である(各大学のHPより、平成29年5月1日現在の学部生の人数。人数が多くほぼ各大学にある学部を抜き出した。色づけはエクセルのカラースケール機能)。
全7大学において、学部生全体の女子比率は2~3割程度だが、学部によって差が大きい。「どこも大学全体では女子比率は低い」「それにしても東大は文系学部においても低い」というのが一目見た私の感想だ。
ついでながら、日本の大学学部生全体では女子比率は44.8%(文部科学省学校基本調査、平成29年度)。大学進学率そのものの差ではない。
これは、「妥当な数字」だろうか。さらに、こうした男女の人数差を持って各分野の人材が育っていくことを考えて「望ましい数字」なのだろうか。
二点目、「大学の男女比率は、純粋に男女の頭の良さの差を表しているだけ」という意見がある。
しかし、大学に入学するために求められるのは「頭の良さ」というような抽象的な能力ではない。必要なのは「入試突破力」であり、大雑把に分解して「意思×対入試学力×経済力」の総合力だ。
【意思】どの大学の何学部に行きたいと意思を持つこと
【対入試学力】テスト解答力や面接スキルを身につけること
【経済力】入試代や学費、生活費をまかなえること
これらのうちどれかが一つでも決定的に欠ければ、入学できないではないか。
これらはお互いに関係し合っていて、一般に意思や経済力が高ければ対入試学力は伸ばしやすいし、逆も成り立つだろう。「頭の良さ」というのは「受験生内部の対入試学力の差」の話でしかない。
そして、意思なんて大した問題ではないと思う人には、次の◯◯に自分に当てはまる何かを入れて読んでほしい。
できれば性別、出身地、血液型など基本的に自分の意思と関係なく決まっていて変えにくいものを。
または「勉強」のところに自分がやりたいことを入れてほしい。これを家族や友人、教師などの自分にとって影響力の強い人に、繰り返し言われることを考えてみてほしい。
「◯◯なんだから、地元にいなさい、実家にいなさい」
「◯◯なんだから、勉強しなくていい、頑張らなくていい、どうせできなくなる」
「◯◯なんだから、親の世話をしなさい」
「◯◯なんだから、そんなにお金は出せない」
「◯◯なのに、そんなに勉強するなんておかしい、◯◯らしくない」
今も昔も全国各地で言われ続けてきたこれらの言葉の存在を、無視するのか、これからもどんどん使うのか、過去の遺物にしていくのか。
大学の男女比率は、私にとってはこれを問いかける数字でもある。
■ 小澤さち子 ■