2018年5月
日本で女性学が生まれて、すでに40年以上が経ちます。客観性と性中立性を標榜しつつ
、実は男性目線で営まれてきた既成のアカデミズムの世界に、女性の視点で切り込み、近
代社会の原理そのものを問う学問として、女性学は、多くの成果を上げてきました。女性
学は、各学問分野の内部で、既成の概念を問い直すだけではなく、学問の専門分化のあり
かた自体にも疑問を投げかけてきました。第2波フェミニズムの学問版が女性学だとすれ
ば、性差別の解消をめざすフェミニズム運動や、同じ流れの中で生まれたフェミニスト文
化活動や文化批評と連動しつつ発展してきたことは、いうまでもありません。
とはいえ、第2波フェミニズムを担った世代が高齢期を迎える今、学界でも運動でも文
化領域でも、担い手たちの若い世代へのバトンタッチ等の新たな問題が浮上しています。
また、フェミニズムを基盤とする研究、文化、運動の連携が充分な力を発揮しているとは
いえません。国際的なジェンダー平等指数における日本の順位が極端に低いという客観的
現実があり、まやかしの「女性活躍」が声高に叫ばれる中、フェミニズム・女性学を取り
巻く状況は、決して楽観視できません。
こうした一種の閉塞状況を打破するために、私たちは、運動や文化を含めた広い意味で
の、女性学のウェブ・ジャーナルを刊行します。紙媒体ではなく、あえて電子ジャーナル
を立ち上げる趣旨は、主として次の3点です。
1.ジャンルの制約を超えた、新たな言語表現の広場を!
学界の硬直した基準にとらわれることなく、女性として(または既存の家父長制社会に同調
できない男性として、あるいは性別二元論社会に違和感を感じている非女性・非男性として
)の生活感覚や人生経験に裏打ちされた調査・研究、フェミニズムの運動史や活動記録、
文化批評やエッセイ等、ジャンルの制約を超えた様々な作品を発表し交流しあう広場を作
ります。
2.女性学・フェミニズムの芽を探し、育てよう!
女性学・フェミニズムを表現する媒体はさまざまあります。しかし、紙媒体には配布範
囲の制約ゆえに、少数の人にしか届かない場合も少なくありません。電子ジャーナルを通
じて多くの人の目にふれることで、小さな芽も大輪に育つかもしれません。
3.誰でもいつでもどこからでもアクセスできるジャーナルを!
電子ジャーナルの強みは、なんといっても、無料で自由なアクセスと次世代への伝達可
能性です。購読料を払わなくても、図書館等に出かけなくても、その気になりさえすれば
、読むことができます。ICTの活用によって、若い世代へのバトンタッチも容易になるこ
とが期待できます。十年後、二十年後のフェミニストたちに、私たちの主張や経験がメッ
セージとして伝わることを、願っています。
以上のように、電子ジャーナルには、紙媒体とは異なる多くの可能性が見込まれます。
こんな思いを掲げて、WANは女性学の電子ジャーナルを刊行します!
2018.05.10 Thu