※署名の対象となる方について分かりにくいというご指摘を多くいただきました。当初は教育・研究者からの署名を想定していましたが、賛同の状況を踏まえ、署名の対象となる方々を教育・研究者に限らず広く募る方針に変更いたしました。また、変更にともない、署名の締め切りを4月10日(水)と延長しました。多くのご賛同をよろしくお願い申し上げます。
トランス女性に対する差別と排除とに反対するフェミニストおよびジェンダー/セクシュアリティ研究者の声明
2018年7月、お茶の水女子大学は2020年度の学部・大学院の入学者からトランスジェンダー学生を受け入れることを発表し、複数の女子大学がそれに続いてトランスジェンダー女性の入学について検討を始めていることが報道されました。トランスジェンダー女性の女子大への入学受け入れについては、2017年の時点で、日本学術会議法学委員会LGBTI分科会が「性的マイノリティの権利保障をめざして—婚姻・教育・労働を中心に」という提言(2017年9月29日)の中で「性自認に即した学校生活を保障されているMTFが、女子校・女子大に進学できないとしたら、それは『学ぶ権利』の侵害になる」と述べています。高等教育に携わるフェミニストとして、ジェンダー/セクシュアリティ研究者として、私たちは、この提言と方向性を同じくする形で実際の制度変更が決定されたことや、制度を変更する検討がはじまったことを、心強く喜ばしいものと受け止めています。
ところが、この発表を契機として、女性ジェンダーに割り当てられた公的空間にトランス女性が参入することへの懸念や反発がインターネットを中心に目につくようになってきました。とりわけ、このような懸念や反発が「フェミニスト」を自認する女性たちから提出され、しかも鎮静化するどころかトランスジェンダーに対してはっきりと差別的な見解がインターネット上で次第に多く流通するようになってきている現状を、私たちは深く憂慮しています。
フェミニズム、ジェンダー/セクシュアリティ研究は、性差別だけではなくあらゆる差別を、また複数の差別の連動性を問題視する視点を育んできました。この視点は、女性の/女性という経験は必ずしも一様ではなく違いをともなうという洞察を、また、権力関係は男女間だけにでなく女性間にも存在するという重要な気づきを、私たちにもたらしてきました。これは、女性の置かれた社会的位置の多様性に応じて多様な抑圧が生じる複合的な仕組みを考察する上で不可欠の視点です。私たちは、フェミニズムやジェンダー/セクシュアリティ研究の蓄積から受け継いできたこの視点と洞察の重要性をあらためて確認し、これを培っていくべきだと考えます。
私たちはその認識と自覚とに基づき、トランスジェンダー差別を許容することはできないと、ここに声明を発表し、広く賛同を募ります。
呼びかけ人(50音順)
熱田敬子(早稲田大学・社会学、ジェンダー論)
飯野由里子(東京大学・フェミニズム/ディスアビリティ研究)
石田 仁(社会学)
岡野八代(同志社大学・フェミニズム理論/政治思想)
小宮友根(東北学院大学・社会学)
清水晶子(東京大学・フェミニズム/クィア理論)
谷口洋幸(金沢大学・法学)
堀あきこ(ジェンダー、セクシュアリティ、視覚文化)
前川直哉(福島大学・社会史)
三橋順子(ジェンダー&セクシュアリティ史)
山口智美(モンタナ州立大学・文化人類学、フェミニズム研究)
梁・永山聡子(社会学、ジェンダー研究、旧宗主国と被植民地国のフェミニズムの権力関係)
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問い合わせ先◇withtransgender○gmail.com(○=@)
[声明文への署名入力はこちら]
https://jp.surveymonkey.com/r/tgsig
(賛同〆切は4月10日)
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