2010.03.31 Wed
本書は、戦争を経験し、政治空間に切り込むことで日本社会における性差別と正面から闘ってきた女性二人の対談集である。70年代から護憲を掲げ、女性政治家としてつねに第一線で活躍してきた土井さんの半生と、土井さんにインタビューする吉武さんの半生が共鳴することで、対談という形式をとりながら、戦後日本政治の一つの局面が女性たちの目によってくっきりと描き出される点では、貴重な歴史的資料ともなっている。「与謝野晶子じゃないけど、それが女性の党首がよ、「わが党は」とか「我々は」じゃなくて、「わたしは」という一人称で演説するのを後ろで聞きながら、本当に、食らいつきたいぐらい愛しちゃった!」 (119頁)。
本書には、上の吉武さんの言葉が象徴するように、男性中心主義的な社会で、女性たちが「わたし」という立場をそれぞれに確保しながら互いに手を差し伸べる姿に、現在のわたしたちが勇気づけられることが多く語られている。それも、本書を歴史的資料と呼びたい理由である。
1989年の土井さんの「山が動いた」という言葉は多くの方の記憶に鮮明に残っているだろうが、その後の衆議院議長への就任、村山内閣の誕生、そして社会民主党の誕生と、土井さんの口から語られる経緯もまた、日本政治の20年を証言する貴重な資料となるだろう。それにしても、第7章で語られている2003年の選挙妨害に対するメディアの反応はあまりにひどい。その事実を教えてくれたことも、日本の政治文化を証言する本書の貴重な貢献といえる。
しかしなにより、本書の随所に掲載される土井さん・吉武さんのお写真こそが、お二人が生きてこられた厳しくも豊かな歴史を物語っているように思う。(moomin)
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