
本書は、2014年に刊行された『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』の続編です。
前作は、作家や画家、音楽家など「天才」と呼ばれている人物がどのような日常を過ごしていたのか、そしてその日常にどのようなルーティンを持っていたのか(例:ベートーヴェンは朝のコーヒーのために豆をきっちり60粒数えていた)を紹介した本で、そのトリビア的な視点も好評を得て、刊行から現在に至るまでロングヒットとなっています。
しかし著者のメイソン・カリーは前作には大きな欠陥がひとつだけあったといいます。
「この本には、いま思えば、大きな欠陥があった。そこで取り上げた161人のうち、女性は27人しかいなかったのだ。割合にして17パーセント以下だ。なぜ、これほど男女の比率にあからさまな差があるまま刊行してしまったのだろう。」(本書「はじめに」より抜粋)
続編にあたる本書『天才たちの日課 女性編』は「前作にみられた男女比のバランスの悪さを遅まきながら解消」すべく誕生しました。
女性の作家、画家、デザイナー、詩人、アーティストの日常を探ることでどのような風景が見えてきたのでしょうか。
著者はこのように述べています。
「今回、対象を女性に絞ったことによって、フラストレーションや妥協に満ちたドラマチックな景色が開けた。(中略)そしてそのほとんどは、女性による創造的な活動が無視されたり否定されたりした時代に育っている。妻、母、主婦としての伝統的な役割より芸術による自己表現を優先しようとして、親や配偶者から猛烈に反対された人も多い。また、母親として、子どもの世話と自分のやりたいことのあいだでひじょうに苦しい選択を迫られた人もたくさんいる。」(本書「はじめに」より抜粋)
草間彌生、ピナ・バウシュ、フリーダ・カーロ、アリス・ウォーカー、ヴァージニア・ウルフ、エミリー・ディキンスン、マルグリット・デュラス、スーザン・ソンタグ、ミランダ・ジュライ──。
これらの世界的な名声を得た女性たちは、いかにして「仕事」と「生活」のバランスを保っていたのでしょうか。
本書には143人の女性の試行錯誤が収められています。
女性が創作を仕事にするためにどれだけ格闘したのか、仕事を続けることがどれだけ困難だったのか。限られた時間をなんとかやりくりし、ワークライフバランスに悩む女性。これは現在進行形の問題といえます。
この本は、過去、現在そして未来の、ものをつくり、はたらき、生活していくすべての女性たちの姿を静かに照らしています。
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