モイ!(Moi!こんにちは!)
森屋淳子です.

 前回のレポートから1か月.この1か月で世界の状況は大きく変わりました.
フィンランドでも3/16に緊急事態宣言が発令され,国境閉鎖,学校閉鎖,10人以上の集会禁止,公共施設の閉鎖,70歳以上の高齢者への訪問禁止などを含む19の制限が発表されました.

人口550万人と日本の23分の1の人口のフィンランド.
3/16当初はPCR検査陽性者が383名(前日+45名),死亡者は0名という状況での緊急事態宣言でした.

住まい近くのトーロ湾.ヘルシンキも春めいてきました.


  私は医師ではありますが,感染症の専門家でも政策の専門家でもないため,フィンランドや日本の新型コロナウィルス感染症対策の是非を問うつもりはありません.
今回は,小3と年長の子どもを持つ母親として,また,フィンランド語が分からない外国人として,感じたことをご紹介したいと思います.



1. 制限の根拠が明確で分かりやすい
 日常生活に非常に様々な制限がかけられていますが,「70歳以上の高齢者やリスクのある人たちの命を守るため」という大原則がしっかりとしているため,納得しやすいです.
 また,フィンランドにも「外出制限」はありますが,今のところは「家の中から一歩も出てはいけない」というわけではなく,こちらの表のように,たとえ感染者であったとしても,屋外/アウトドアは安全間隔に気を付けていればOKとされています.

表:Yle(フィンランド国営放送)の記事より引用.日本語訳を追記. https://yle.fi/uutiset/3-11270954?fbclid=IwAR1D7R-LAOHBhAho15MT-RtL19wqvYTtE1pWvIQHi10f_oDkfybs9-HAQDQ


 そのため,市街地はガラガラですが,森や海沿いには通常より多くの人がいます.けれど,フィンランドは都市部であっても自然が潤沢にあり,人がいるといっても空いていて,安全間隔を容易に保てるのがありがたいです.

 また,住まい近くのスーパーマーケットでは,通常の営業時間は8-21時なのですが,朝7-8時の時間帯を,70歳以上の高齢者やリスクのある人たちのために特別に開けています.このような配慮を見かけると,気持ちがホッコリします.



2. 学校のICT活用がすごい!
 フィンランドでは,学校閉鎖であっても,小1~3の保護者で社会維持に必要不可欠な職についている人々の子どもたちは通学可能です(途中から,職業によらず希望者の子どもは通学可能となりましたが,実際の通学者は7%程度とのこと).
また,通学者や希望者には給食も提供されます.

つまり,休校ではなく,対面授業を避けて遠隔授業を推奨する,という判断のようで,とても合理的であると感じました.
長男(小3)のクラスでは,クラスのWhatsAppグループ(日本でいうLINEグループのようなもの)に担任の先生が毎朝,その日の課題を送ってくれます.ほとんどの生徒がスマートフォンを持っているため,自分たちのスマートフォンで,課題を写真や動画に撮ったり,ボイスレコーダーで録音して,WhatsAppグループにアップしています.
 また,Office365を利用してオンラインで学習ログをつけたり,Google Hangouts Meetを使って先生に質問したりクラスメイトと挨拶しています(スマートフォンやパソコンを持っていない場合は,学校からノートパソコンを借りることもできます).

 遠隔授業であっても,子どもたちが興味をもって課題に取り組めるように,という担任の先生の想いや工夫も垣間見ることができて,母親としても勉強になります.





フィンランド語が分からない私たちのためには,英語でメールを送ってくれます.





「外に出て“春の兆し”を写真に撮りWhatsAppグループに送って下さい」という課題もありました.


 フィンランドでは普段からさまざまな科目の授業にICTを取り入れており,上の学年では,もっと多様なオンラインツールが活用されているようです.
今回の遠隔授業を通して,「ICTはこういう時に活用するんだよ」ということを子どもたちも実感をもって学ぶことができ,ICTスキルは間違いなくアップしていると感じます(お陰様で私のICTスキルもアップしました…笑).



3. 子どもへの配慮を忘れていない
3/3に次男の通うプレスクールから送られてきたメールの文面の一部をご紹介します.

  The essential thing is to answer the children’s and young people’s questions and discuss the fears that the news might have raised.
  It is also important to explain what we as adults are already doing to prevent infections.
  If you feel that your children need counselling, please contact the day care centre director or the school principal and teacher.

  -重要なことは、子どもや若者の質問に答えて、ニュースが提起したかもしれない恐れについて話し合うことです。
   感染を防ぐために私たち大人がすでにしていることを説明することも重要です。
   お子様にカウンセリングが必要だと思われる場合は、保育所長または校長と教師にお問い合わせください。

 普段はフィンランド語で届くメールを,Google翻訳を使って英語に訳して読んでいるのですが,今回はフィンランド語だけでなく英語でもメールが届きました.
フィンランド語が分からない外国人や,子どもへのケアの視点を忘れていないのが流石だと思いました.

 また,学校閉鎖が始まる前の週に長男の小学校に見学に行った時も,授業に入る前に,担任の先生が「新型コロナウィルス」の話題を取り上げて生徒たちと話し合っていました.
フィンランド語だったので,詳しい話は分かりませんでしたが,あとで先生に尋ねてみると「週末にすぐ近く,5km先の小学校にも感染者が出たので,子どもたちも気になっているんだよね.なので,集中して授業に取り組めるようにするためにも,まずはコロナウィルスの話題をきちんと取り上げないとね」とのこと.
性教育にしても,何にしても,子どもに対して「何事もないかのように振る舞う」のではなく,事実は事実として,隠さずにきちんと向き合って話し合う姿勢は見習いたいです.



4. 外国人への配慮も忘れていない
 前述したように,フィンランド語が分からない外国人に対する配慮も忘れずにいてくれており,ホームページには英語ページも用意されていることが多いため,情報難民になることもなく,比較的安心して過ごせています(もちろんGoogle翻訳もフル活用です).

 また,3/31にはヘルシンキ市長が英語で新型コロナウィルスに関する会見を開いてくれました.
その会見では,「ヘルシンキ市のサイトには,フィンランド語・スウェーデン語・英語だけでなく,ロシア語・アラビア語・ペルシア語もあります」と説明されており,インクルーシブな姿勢に感銘を受けました.



5. 女性首相/大臣が大活躍!!
 政府の記者会見で,女性の首相と大臣が,ずらりと並んでいる姿は圧巻でした.
女性が活躍している写真や映像の,ロールモデルとしての子どもたちへの影響は計り知れないものがあると思います.

緊急事態宣言が発令された3/16の記者会見の様子  https://yle.fi/uutiset/3-11260395?fbclid=IwAR1JzR42fYjnDLhyd7vnHGPq0N9yL--k5vIT2g2jqYn2p76WQdBSpdkpwLI


 また,サンナ・マリン首相は毎日のように会見を開き,「この困難な局面を一緒に乗り切りましょう」「あなたの大切な人の命を守るために,行動制限してください」と国民に語りかけています.
フィンランド語は分からなくても,ノンバーバルに伝わってくるものがあり,とてもカッコイイです.

 以上,簡単ではありますが,フィンランドの新型コロナ対策で私が感じたことをご紹介させていただきました.
先が見えない中,言葉の分からない外国で子育てしながら生活をするのは,不安なことも多いです.
それでも前向きでいられるのは,周囲の人たちが温かく支えてくれていることと,すぐ近くにホッと一息つける自然が広がっていることが大きいです.

住まいの近くにあるシベリウス公園で自転車に乗る次男


 3/20に発表された国連の「幸福度調査」で,フィンランドは3年連続「世界一幸せな国」に選ばれました.
この調査は,人口あたりのGDP,社会的支援,健康寿命,人生の選択の自由度,社会的寛容さ,社会の腐敗度の6つの項目に基づいています
今回の非常事態を通じて,フィンランドの社会的支援の豊かさ,弱者への配慮,国民の政府への信頼感を実感することができました.

 誰かを非難したり傷つけあったりするのではなく,世界中の人々が愛や信頼を分かち合い,お互い助け合えますように.一日も早く事態が収束しますように.

ヌークシオ国立公園にて.空を見上げてパワー充電!