夫が高齢になり、さまざまな体調の不具合が出てきて、病院通いが多くなりました。病院では待たされることが多いので、つい働いている人たちのことをじっくり見るようになりました。
まず各フロアーで忙しく立ち働いているのは、さまざまな制服の女性スタッフです。受付や入退院の相談窓口はほとんど女性です。看護師も男性はやはり少ないし、採血の技師も、心電図、CTなど検査技師、そしてそうした部屋にいる助手も女性が多いです。
診察室に入ると、各診療科の医師は男性も多いですが、夫の通う病院では循環器内科、神経内科、泌尿器科、呼吸器科、眼科、どこにも女性の医師がいて、女性医師が増えていることを実感します。医療現場は女性中心の現場、女性の力でもっている職場だとつくづく思います。
そして、たいてい、ここで働いている女性たちはみな、歩き方が早いです。いつも急ぎ足で歩いています。元気でなければ務まらない様子です。いつもいつも元気そうにふるまっているわけにはいかないでしょうが、そういう時はどこで休んだりrefreshしたりしているのでしょうか。休める時はしっかり休んでくださいね、と言いたくなります。
そして、今のようなコロナで学校や保育園が休みになることが多いとき、この女性たちの子どもは大丈夫かと、本当に心配になってしまいます。
ちょうど子育て真っ最中の年頃の働き手が多い職場です。この3月、学校が突然一斉休校になり、休園する保育園が多くなったとき、ここで働いている皆さんはどうやって急場をしのいできたのでしょう。保育園も医療関係者の子どもは受け入れたようですが、突然友だちが来なくなって自分たち少数だけが通園するようになったとき、子どもたちは混乱しなかったでしょうか。
緊急事態宣言が解除になり学校も徐々に元にもどっているようですが、今度は学校で感染が起こって臨時休校の学校も出ています。そういう学校に通っている子どもの親はどうするのでしょう。それは医療関係者に限った問題ではありませんが、ここでは話の続きとして病院の女性スタッフに絞っていきます。突然子どもの学校が臨時休校に入っても、病院でいろいろなシフトに入っている親たちは急に休むことはできません。
子育てしながら働いている人たちは、普段から、子どもが熱を出したらどうしよう? 子どもがけがをしたらどこへ連れて行こう?と、いつもいつも心配事を抱えています。それに加えて、学校が臨時休校になったらどうしよう、保育園が臨時休園になったらだれに子どもを見てもらおうと、新しい不安をかかえて働かなければなりません。
最近政府は、2020年までに「指導的地位に女性3割」にするという目標を取り下げました。3割にするという目標は2003年の小泉内閣のとき立てられました。当時、そんな大きな目標を掲げてほんとに達成できるの?と大風呂敷を疑いました。でも目標は大きい方が達成率も高くなるだろうと、応援したい気持ちでいました。ところが17年経って、衆議院議員の割合は10%にも達していません。政府が本気で3割達成を考えたなら、衆議院の女性議員を増やすことで達成できたはずです。簡単なことです。それを全くしようとしないから、当然目標は絵に描いた餅だったわけです。
今回、コロナで経営が苦しくなった病院もたくさん出てきて、看護師のボーナスカットなどと言いだした病院も出て問題になりました。ほんとうに、何かあるとすぐ女性にしわ寄せがきます。
医療機関などで指導的立場の女性が3割いたら、医療スタッフの働き方ももう少しましになったはずです。子育てをほとんどしないで偉くなった男性には、学校が一斉休業になったときの親たちの苦しみや不安は実感できないでしょう。一番献身的に働いているスタッフのボーナスをカットするなど、考えなかったでしょう。
指導的女性3割の目標は、ぜひ達成してほしいです。もう一度目標として掲げてください。それがなければ、どちらかの性が4割以上でないと平等にならないという、本来の目標に少しも近づけないのですから。
2020.08.01 Sat
カテゴリー:連続エッセイ / やはり気になることば