1 はじめに
  はじめまして。新人弁護士の松田亘平と申します。2020年12月に弁護士登録し、この度医学部入試における女性差別対策弁護団に参画させていただきました。
  今回は、私が医学部女性差別入試について考えてきたことに触れつつ、当弁護団に参画した理由をお伝えし、簡単に現在の活動をご紹介したいと思います。

2 私が当弁護団に参画した理由
(1)発覚時に思ったこと
 医学部女性差別入試が発覚した時、私は司法試験受験生でした。被害者と同じく受験生という立場にあったことから、この問題を他人事とは思えず、注目していました。
 入試の実態が明らかになるにつれ、とてもショックを受けました。とくに、小論文で行われていた得点調整には愕然としました。もし仮に司法試験で行われていたとしたら、得点調整の対象になるか否かによって合否が決すると言っても過言ではありません。
  そして、そのような甚大な不利益を、何ら落ち度のない女子受験生らに負わせてきた大学に、憤りを覚えました。貴重な10代・20代を賭して努力してきた受験生を、あまりにバカにしています。
(2)同情論の問題点
  他方で、このような女性差別入試を行った大学に対し、どこからともなく同情論が聞こえてくるようになりました。とくに「医療現場を回していくためには必要なことだ」という声は、現場の医師からも発せられていました。
 確かに、医療現場の過酷さは、コロナ以前から話題になっていました。しかし、それがどうして女子受験生差別を正当化することになるのか、まったく理解できません。「女性はいずれ子育てに時間を取られるから」などという言明は、女性に対する差別・偏見にほかなりません。
 まず、上記言明は、子どものいる女性を医療現場から排除するという意味では、差別です。女性医師が子どもの急な発熱で休むと白眼視されるという話を聞きますが、子の看病と両立しない医療というのは、医療の名に値するのでしょうか。
 次に、上記言明は、子どものいない女性の存在を看過しているという意味では、偏見です。子どものいない人生を歩む女性医師も少なからずいます。そのような人たちを、いずれ子どもを持つだろうと決めつけて差別することは、女性の自己決定に対する重大な侵害です.
 女性が男性と同じか、男性以上に可能性に満ちていることは、私たちが日々経験するところです。仮に女性医師が活躍できていないとすれば、問題は医療現場の側にあります。医療現場の実情を理由に女性差別入試を正当化しようとすることは、医療現場の問題を、未来ある女子受験生らの犠牲において先送りし続けることに他なりません.
(3)女性差別入試は女性だけの問題?
 今回の女性差別入試は、主に女性医師数を抑制するという違法な目的のために行われました。ではこの問題は、男子受験生にとってはまったく無縁のことなのでしょうか。
  差別を受けていない男子受験生にとって、今回の得点調整は、自分の利益に直接かかわりません。そのため、彼らの多くがこの問題に関心がなく、「医療現場を守るためには仕方ない」という声に同調したとしてもおかしくありません。
 しかし、そのような男子受験生が、医師になって医療現場に入った時、何を思うのでしょうか。厳しい上下関係や際限のない長時間労働等で、つらい思いをすることがあると思います。その時、「医療現場を守るためには仕方ない」という考えは、結局は自分自身を苦しめることになるのではないでしょうか。
  このように、女性差別によって成り立っている社会は、男性にとっても生きづらいと思います。訴訟を通じて、誰もがジェンダーに縛られない社会作りに貢献したい―これが、男性である私が当弁護団に参画した理由です。

3 現在の活動
 私が弁護団に入ったあと、対順天堂大学の訴訟期日と、対東京医科大学の訴訟期日に出頭しました。
  まず、対順天堂大学訴訟期日では、大学が、女性に不利な得点操作は女子寮のキャパシティなどの観点から私学の裁量の範囲内の合理的な行為であった等と主張しており、当弁護団からはそのような事情が憲法上保障された平等原則に優越するものではないと強く反論をしたところです。
  次に、対東京医科大学訴訟期日では、元鈴木学長を証人として法廷に呼ぶべきかどうかにつき議論を交わしました。当弁護団としては、得点操作の具体的な態様やそれが歴代の学長で引き継がれてきた経緯を明らかにするためにも、証人とすべきことを主張していく予定です。
 今後は、対聖マリアンナ医科大学の訴訟にも参加する予定です。まだまだ不勉強ですが、一日も早く一連の訴訟の全体像を把握できるよう頑張ります。

4 おわりに
  先日、森喜朗氏が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」「女性の発言時間を制限してはどうか」などと発言したと報じられました。この発言においても、問題の構造は女性差別入試とまったく同じです。「会議」を思い通りに動かすために女性を排除したいという思惑が見て取れます。この国のお偉方は、いつまで同じことを繰り返すのでしょうか。
  ただ、ほんの少しだけ、森氏のことをかわいそうに思うこともあります。それは、「女性がたくさん入っている会議」の楽しさをご存じないようだからです。当弁護団では、男女を問わず、訴訟の方針などを自由に議論しています。余計な忖度は不要です。メンバーの率直なお考えを聞けるので、私は毎回会議を楽しみにしています。
  私のような新人も含め、弁護団一丸となって、受験生の皆様が被害の実態に即した救済を受けられるよう尽力しています。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

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