(*掲載担当者から・・・山梨県立男女共同参画推進センター「集約」 反対署名活動へ応援メッセージを寄せてくださいました。行政へのアクションをどのように広げたかを伝える2017年当時の経験談は、アクションの貴重な記録で活動の参考になります。こちらの記事とあわせてぜひお読みください。)

「女性行政縮小に抗しての私のアクション」  ◆亀田 温子

近年ジェンダー平等でない日本の姿が顕在化し、女性たちはそれを変えようとしているのに、肝心な女性行政を縮小させる動きが目につく。 今年2021年には甲府で第38回日本女性会議が開催されるが、その山梨県では、すでに昨年度から「県民生活・男女参画課」が「県民生活総務課」に改編されて男女共同参画は「担当」となり、今また、県立男女共同参画推進センターを3か所から1か所に統廃合するという女性行政弱体化の案が示されている。
多様な女性団体・グループが反対運動を展開し、私も署名に加わった。むしろ充実・強化でしょ!と言いたい。今後ますます、女性行政の動きをしっかりとらえ、後退を防ぐアクションの力が必要である。

<文科省男女課消失案に、反対アクション>

実は2017年に国でも同様な動きがあったことをご存知だろうか。9月に文科省が男女共同参画課名をなくし「室」に縮小する組織改革計画を示した。文科省が男女共同参画社会づくりの看板をおろすという事だ。
ここでは、この動きを阻止し成功に導いた「マイ・アクション」の体験を共有したい。
2017年9月の社会教育学会で文科省の組織改革として社会教育や公民館、男女共同参画課の消滅案が示され、大きな動揺が走った。この改組企画は、生涯学習局を学校教育も関わる総合教育政策局に組み直す大きな背景をもつものであった。私の思いは、文科省が男女共同参画を課名に残さなければそれは女性行政の弱体化のメッセージとなり、自治体などの女性行政の後退につながってしまうという、強い危機感であった。

<ネットワーク拡大による運動の広がり>
核になって動いたのは8名。女性の生涯学習などと取り組む社会教育関連の5名(入江直子、亀田温子、高井正、村松泰子、村田晶子)と、国際婦人年連絡会2名(牧島悠美子、城倉純子)、NPO関連(青木玲子)であるが、それぞれこれまで多様なキャリアを持ち、社会活動にかかわる幅広いネットワークを持つ人たちである。大学学長としての文科省とのつながり、男女共同参画事業に関わるネットワーク、国際婦人年関係団体とのネットワーク等々、人生100年時代の「人の財産」が生きている。
同時に、私たちは近年起こった女性運動へのいくつもの波の体験から、それに抗する力を蓄えていた。2000年前後のジェンダーバッシング、男女共同参画条例制定の阻止、女性行政組織では国立女性教育会館の事業仕分けによる統廃合計画などの波をかぶる中で、ネット組織や情報共有システムなどを生み出しており、それが大きな力となって今回発揮されたことは、大変重要である。
この8名が、関連の個人・グループ、団体に呼びかけ、ネットワークは次のような全国展開に広がりを見せた。

 ●女性学習に関わる団体 ー 各地の女性学習グループ、女性センター、全国の女性会館で組織する全国女性会館協議会、NPO家庭科教育研究社連盟等
 ●国内の関連団体 ― 国際婦人年連絡会(加盟全国組織35団体)、北京JAC、 男女平等条例ネットワーク、国際女性の地位協会、 全国地域婦人団体連絡協議会(47都道府県)、大学女性協会
 ●議  員 ― 区議、市議、県議、国会議員、議員秘書、全国フェミニスト議員連盟
 ●国際関連組織 ― CSW(国連婦人の地位委員会)、 JAWW 日本女性監視機構、国連ウイメン日本協会
 ●学会・大学関係者―日本社会教育学会、社会教育推進全国協議会、日本女性学会、国際ジエンダー学会、スポーツとジェンダー学会など多数
 ●人的ネット、情報ネット、MLなどージェンダーバッシング時にできたもの、条例作成時にできたネット、NWEC事業仕分け時にできたネット、ML

このように、国際的視点を持つ団体から、伝統ある地域の女性団体までつながりを創ることができたのは、男女共同参画は共生社会を生み出す一部ではなく、それらを貫くすべてにかかわる横断的なこととして重要だととらえているためである。私たちも要望書の第1として、これを強調している。
署名だけでなく、当時のメモには「今後様々な立場の方が要望書を出すなど、動いていただければ」と働きかけ、多くの声をとどけようとしている。

<行政職員から 国会議員、大臣への働きかけ>
文科省の組織改革であり、当初はもっぱら文科省男女共同参画課との質問のための訪問や、要望書を作成し、生涯学習局長、官房長、戦略官など行政職員との意見交換や要望の説明を行っていた。
このころ新聞やメデイアが「文科省「男女共同参画」やめる? 担当課名称消滅へ」「男女共同参画 格下げ なぜ?」「道半ばにして後戻り」などの記事を配信しはじめ、情報が多くの人に届いた。
問題にしている課名はどのように定められるかといえば、省の課名は政府の定める政令で、課の下の室であれば大臣の定める省令で決められ、組織としての位置づけにも大きな違いがあることを学んだ。
今回の事は政令に関わり、そうなれば政府への働きかけ、つまり議員への働きかけが必要となる。ある市民運動のベテラン活動家から「もはや相手は役人ではなく、与党の議員、大臣であること!」と言葉を掛けられ、はっとした。
その後議員へのロビー活動へ(ちょうどそのころドイツのジェンダー平等の話を聞き、加盟団体60を擁する「ヨーロッパ女性ロビー」があることを知り、なるほど!と感心した)。 議員訪問、関係グループ、市民そして議員にも呼びかける院内集会開催。議員の国会質問により担当大臣から「男女共同参画社会の実現と女性の活躍推進は、成長戦略の一丁目一番地だ」答弁を引き出し、12月には関係の人を介して大臣への面談が実現した。これには全国的な女性団体である全国地域婦人連絡会議のメンバーと同行する形となった。
そして12月22日、閣議決定により「男女共同参画・共生社会推進課」の課名となることが文科省HPに掲載され、私たちのアクションは、男女共同参画の課名存続という目的を達成した。担当局長は「要望書が提出されたことは1つの要因ではあるがそれだけで動いたわけではなく、男女共同参画は政府の基本方針であり、それに基づいたものである」と語った。おーや、「政府の基本方針」と言いましたね!

<見えてきたこと>
文科省は組織再編を当初は省内の事ととらえているようであった。わたしはなにやら官僚たちが組織をきれいに整えてるパズルでもしているように見えた。 文科省の改組案が、実際に自治体に、現場にどのような影響を及ぼすか、省内のことでは当然終わらないことがなぜ見えないのだろうか。 今回の反対運動の多様な女性たちの動きから、文科省という行政組織はそれにやっと気づいたのだろうか。

山梨でも行政組織の統廃号や改組は市民には見えにくく、不明確な形で進んでいるようだ。他地域でも同様であり、むしろ市民が気づかないようにされ、気づいた時にはもう遅い、とあきらめる形となる。
今日、行政組織や予算は複雑化している。市民として、行政組織の動きを深く読み、問題を明確化する。女性行政の弱体化が進むことがなぜ問題かなど、それが見える形として、チェックできる力を持つことが、これまで以上に必要とされる。
コロナ渦において、ますますそのことは裏づけられている。その時に、多様な人のつながり、ネットワークが変革への力となる。私たちは世界からの力をエンパワーし、アクションを重ねることにより、新しい力を発揮できる社会を未来世代につなぎたい!

http://chng.it/pJJtxb76nCより転載

山梨県立男女共同参画推進センター「集約」 反対【WEB署名】はこちらからご署名いただけます。
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