https://wimnjapan.net/2021/06/28/protest-statement/ より転載

22日に、旭川医大の学長解任問題を取材中の北海道新聞の女性記者(22歳)が大学職員により私人逮捕され、警察に48時間勾留されました。
この事案は、取材・報道の自由に対する侵害であり、看過することはできないと考えます。
当団体として、抗議の声明を公表しました。
ご一読のうえ、拡散・シェアにご協力いただけますとありがたく思います。
どうぞよろしくお願いいたします。


抗議の声明 → https://wimnjapan.net/2021/06/28/protest-statement/

(以下、全文貼り付けます)

旭川医大で取材中の女性記者逮捕・勾留に関する抗議声明

メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)
2021年6月28日

 6月22日、旭川医大の学長解任を議論する学長選考会議を取材していた北海道新聞の女性記者が、大学職員により私人逮捕され、北海道警旭川東署に48時間勾留されました。事案の細部は現時点では不明な点が多いですが、この逮捕・勾留が報道機関による取材・報道の自由に抵触し、取材活動に委縮効果をもたらしかねない重大な問題をはらんでいると私たちは考えます。

 取材活動は、取材対象の組織が自ら情報を公にするまで待つものではありません。組織内で何が起きているかを同時進行で取材し、関係者の動きや考えを探ろうとします。なぜなら、組織が公にするのはその組織にとって都合のいいことだけである可能性が高いこと、都合の悪いことは極力外部の目から隠そうとするのが通例であることを、記者たちは知っているからです。歴史上も、そのような事例は枚挙にいとまがありません。そういった情報を社会に伝えることが、民主主義社会の維持発展にとって欠くことができない意味を持つことも理解しています。だから、記者は取材先に止められても必死で内部に接近しようとします。取材活動は常に、そのギリギリのせめぎあいのところで行われています。

毎日新聞の報道によると、旭川医大は22日午後3時50分ごろ報道各社にファクスを送り、新型コロナウイルスの感染防止措置として、記者団の取材に応じる午後6時ごろまでの間、記者を含めた学外者の立ち入りを原則禁止すると伝えていました。女性記者は、立ち入り禁止通告の40分後の午後4時半、学内で大学職員によって建造物侵入疑いで現行犯逮捕されました。

 今回の事案で、大学側は庁舎管理権の侵害を理由に私人逮捕したとのことです。大学は、個人宅のようなプライベート空間とは異なります。国立大学法人である旭川医大は国民の税金で維持されており、その庁舎は国民の財産です。研究・教育活動の妨害や器物損壊の恐れがあるといった特段の理由がないかぎり、国民に対して開かれた存在であり、取材記者の通行も当然認められるべきものです。当該の女性記者は、警察に対して記者であることと取材目的を明らかにしており、逃亡や身元不明の恐れがないのは明らかです。逮捕・勾留は明らかに行き過ぎた措置であったと考えます。

旭川医大では昨年12月以降、報道各社の取材により、吉田晃敏学長による数々の不祥事が発覚しました。大学は、病院長を「学長発言を録音し、報道機関に情報漏洩した」との理由で解任しており(病院長は否定しています)、内部告発に神経をとがらせていました。そうした中、学長を解任するかどうかを話し合う会議の取材で、女性記者は逮捕されました。4日前にも同じ会議室付近で道新を含む複数社の記者が取材制限を受けてもめており、この私人逮捕の目的が取材妨害であることは明らかです。大学はこれまで、会議を開く日程さえ明かさないなどの取材拒否をしてきたといいます。国民の共有財産であり、研究の発展や教育に大きな役割を果たす存在でありながら、重要事項に関して取材拒否や情報の非公開を続けた大学側の姿勢こそが問われるべきではないでしょうか。

今回の事案に限らず、公的な施設や庁舎で、記者の立ち入りを拒む事例が近年相次いでいます。以前は、重要な会合が開かれている会議室のドアの前で、記者たちが情報を求めて待ち続ける姿は当たり前でしたが、それすら難しい状況が各地で起きています。パリに本拠をおく「国境なき記者団」が発表する「報道の自由度ランキング」では、日本は2021年に67位と低迷しており、日本に対して「記者が権力監視機関としての役割を十分に果たせていない」との懸念が示されています。今回、まさに懸念されているような事態が起きてしまったと私たちは危惧しています。

 メディアで働く女性ネットワークは、ジャーナリズムで働き、その機能に現に関与し、あるいはしてきた女性たちの職能集団として、報道の自由と民主主義社会の強化に貢献することを目的として2018年に設立されました。私たちは、新聞社に入社してまもない22歳の女性記者が、市民の知る権利に応えるため事実に迫ろうとした取材の中で、逮捕・勾留という行き過ぎた権力行使を受けた今回の事態を見過ごすことはできません。ここに、今回の逮捕・勾留に抗議するとともに、関係各機関が取材と報道の自由の意義を理解し、尊重するよう一層の努力をすることを求めます。

以上

連絡先: https://wimnjapan.net/
wimnjapan@gmail.com


*WANより追記  2021年7月12日 新聞労連からも北海道新聞記者逮捕に関しての声明が出ました。