
アメリカで初の女性副大統領になったカマラ・ハリス。あれから早1年がたとうとしている。移民問題など複雑なテーマに取り組むハリスは、どんな子どもだったのか。
この絵本の文章を手がけたのは、姪のミーナ・ハリスだ。大好きだった、おばのカマラと母のマヤの子ども時代のエピソードを元にストーリーを書いている。
カマラと妹のマヤは、あるとき、空き地になっていたマンションの中庭に「あそび場があったらいいね!」というすてきなアイデアを思いつく。
ママに相談して、さっそく、大家さんにあそび場をつくってほしいと頼みにいくが、反対されてしまう。あきらめきれないふたりは、あれこれ考えて、同じマンションの子たちに意見を聞いてみる。みんなは大賛成。そこで長い手紙を書いて、ふたたび大家さんに会いにいく。だが、「あそび場をつくるにはお金がかかる」としぶい顔をされる。
「もし、ぜんぶ自分たちでできるなら、あそび場をつくってもいいですか?」カマラが聞くと、「自分たちでできるのなら、やってごらん」といわれた。期待した返事ではなかったけれど、「反対」されたわけではない。そこからカマラたちは行動を起こす。あそび場づくりの計画をたて、手伝いをよびかけるポスターをはり、1けん1けん訪ねて頼みにいくのだ。
できることからやっていくうち、「反対」されて「できない」と思われていたことが、「できるかもしれない」という期待に変わる。大人たちも巻き込むなかで「できる」という自信が生まれ、周囲の声も「賛成」へと変わっていく。その過程がていねいに描かれている。
こうしたカマラの姿勢は、母シャマラに教わったものだ。母は科学者としてがんの研究をしながら、どんな人でも平等で、自由に生きる権利があるということを訴える活動(公民権運動)をしていた。幼かったカマラたち姉妹も、いっしょにデモ行進をしていたのだ。
「ひとりひとりができることはちがうし、それは小さな力かもしれない。けれども、小さな力をあつめれば大きな力となり、できないこともできるようになる。カマラはその教えを大切にしていたからこそ、あそび場をつくる夢をかなえることができたのです」(巻末より/ジャーナリスト 増田ユリヤ)
大人になったカマラは、サンフランシスコ市郡地方検事、カリフォルニア州司法長官、上院議員などを歴任し、2020年11月、女性初・黒人初・アジア初のアメリカ副大統領となった。あれから1年、移民政策などで苦労をしている様子が報道されているが、女性の政治参加の象徴的存在という意味でも影響力は大きく、これからの活躍を期待したい。
自分たちの置かれた状況をより良いものにしたいと願うなら、カマラたちのように、できることから行動を起こさなければならないと改めて思う。小さなことでも行動を起こせば、何かを変えられると信じて。
◆書誌データ
書名 :夢のビッグ・アイデア カマラ・ハリスの子ども時代
文:ミーナ・ハリス 絵:A・R・ゴンザレス
翻訳者:増田ユリヤ
出版社:西村書店
刊行日:2021/10/8
頁数 :34頁
定価 :1500円(税込)
慰安婦
貧困・福祉
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