法律
相談49:はじめまして、私は機能不全家庭出身です。父、母、兄と私の4人家族です。
2017.03.16 Thu
はじめまして、私は機能不全家庭出身です。父、母、兄と私の4人家族です。
母はジェンダー観にすごく歪みを抱えた人で、「女親が息子をひいきするのは当たり前やから」といってきょうだい差別を正当化していたり、「女が間違っていたら男が殴って直すのが当たり前や」といって、祖母が祖父に殴られていても、私が兄に殴られていても見て見ぬふりをしたりしていました。
父は「愛しているから」といって母の歪みを正そうとせず、子ども達が苦しんでいても何も感じていないようでした。
私は彼らのことを心底気色悪いと思っていて、到底受け入れられません。
今大学4回生ですが、自力で脱出しようと途中体調を崩しながらも努力して、なんとか就職先を見つけることが出来ました。
これを機に引っ越しして両親、兄とは距離を置き、自分の領域が守られた自由で安全な生活がしたいと思っています。
先日役所に行き家族から住民票の閲覧制限を掛けて頂きました。
分籍の手続きもさせて頂いたのですが、あと一つ、自分の苗字も変えたいと思っています。
法的にどんな手続きが必要でしょうか?
緑(神戸市、22歳、女性、学生)
回答
回答49:小島妙子さん(弁護士)
「氏」(=戸籍上の氏)の変更は,家族関係の変動(婚姻,離婚,養子縁組,離縁)によって必然的に生じます。このほかに,家族関係の変動を前提に選択的に氏を変更することができる場合もあります。たとえば,父母の離婚により,母が婚姻前の氏に復する場合,子の氏を母の氏に変更することが認められています(民法791条)。
さらに,「やむを得ない事由」がある場合には,家庭裁判所の許可を得て氏の変更をすることができます(戸籍法107条)。
珍奇・難解・難読な氏については変更が認められます。また,離婚の際に婚氏続称(前夫の氏を称する)を選択した者が,後日,旧姓に戻りたいという場合には,氏の変更が認められる場合があります(東京高決平26.10.2,判時2278号66頁)。
このほかに,元暴力団員として氏が広く知られている者について,氏による社会生活上の現実の支障や不利益があり,本人の更正に必要と認められる事情があるとして氏の変更を許可した裁判例(宮崎家審平8.8.5,家月49巻1号140頁),戸籍上の氏名の使用が,幼少時に受けた性的虐待の加害者である近親者(実兄)及び加害行為を想起させ,強い精神的苦痛を与えることなどを理由として氏名の変更を認めた裁判例(大阪家審平9.4.1,家月49巻9号128頁)があります。
あなたが「氏」(=戸籍上の氏)の変更をするためには,「やむを得ない事由」を主張して家庭裁判所に氏の変更の申立てをすることになります。兄からの暴力による精神的苦痛が大きく,現在の氏を使用することによる社会生活上の現実の支障や不利益が生じていること,氏を恣意的に変更する意図はないことを主張する必要があります。
裁判所は「やむを得ない事由」を相当厳格に解しており,あなたの場合,「氏」の変更が認められる可能性は極めて低いと思われます。可能なかぎり「通称」を使用していくことも検討されてはいかがでしょうか。
回答者プロフィール
小島妙子
ジェンダー法学に詳しく著作も多いすぐれた理論家であると同時に、セクハラ・DV、不当解雇、離婚、財産分与等々、幅広く訴訟を扱う頼りになる実務家。事務所にはほか2名の女性弁護士がおり、女性からの相談の受付体制は万全です。
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