法律
相談 11:パワハラを受け校長に相談したところ、解雇されてしまったのですが…。
2012.09.12 Wed
中学校で今年(2012年)の4月から採用されていました。
5月に話し合いの中、意見の食い違いで上司から暴言を受けました。
校長にその暴言について「パワーハラスメントではないか」と相談したところ、校長からも圧力、他言するなとの脅しを受けました。
後日、校長から突然「辞めてもらう」との通告を受けました。
理由は、パワハラをした教頭と会わないことが私の心理面に良いだろうから。
常勤(正社員)の先生を雇わないと学年行事などの人手が足りないから。(実際に新しく雇用したのは私と同じ非常勤講師なので、話が矛盾します)
労務局に相談しましたが、訴訟を起こすのなら雇い主が対象であって、この教頭や校長を訴えることは難しいとのことでした。
ここまでハラスメントを受けた以上、再雇用されたいとは思いませんが、せめて私の名誉が毀損されることは避けたいのです。
どうかよろしくお願いします。
■大阪府 40代 女性 非常勤講師■
回答
回答 11:小島妙子さん(弁護士)
上司による暴言は,あなたに対する不法行為になり,校長があなたから被害申告を受けたにもかかわらず適切な措置を取らず解雇したことは,職場環境配慮義務に違反する違法な行為であり,不法行為が成立します。
民間企業の場合には,民法715条による使用者責任と併せて,加害者個人に民法709条にもとづく損害賠償を請求することができますが,公務員が職務上行った不法行為については,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことになっており(国家賠償法1項1項),公務員個人は責任を負わないというのが確立した判例です。
そこで,あなたの場合,校長や上司を相手取って損害賠償を請求することはできません。
あなたの場合,地方公共団体を相手方として労働審判を申し立てることをお勧めします。労働審判は,公務員を一方当事者とする任用上の紛争(身分の得喪,懲戒処分,配転など)については,民事に関する紛争として対象になりませんが,セクハラやパワハラを受けた被害者が提起する損害賠償請求(国家賠償法にもとづく損害賠償請求)などは,公法関係上の紛争ではないとされ,労働審判制度を利用できます。
上司や校長を直接の相手方とすることはできませんが,労働審判の中で,加害者を利害関係人として参加させて調停手続の中で解決を図ることが可能です。
当事者に弁護士である代理人が付いている場合,労働審判の調停成功率が高いので,弁護士に依頼することをお勧めします。
回答者プロフィール
小島妙子
ジェンダー法学に詳しく著作も多いすぐれた理論家であると同時に、セクハラ・DV、不当解雇、離婚、財産分与等々、幅広く訴訟を扱う頼りになる実務家。事務所にはほか2名の女性弁護士がおり、女性からの相談の受付体制は万全です。