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  • 石内都の「横須賀ストーリー」 境界の傷跡

    2019/07/13

    • カルチャー

    著者名:但馬みほ

    著者プロフィール:但馬みほ(たじまみほ) 1965年神奈川県横須賀市生まれ。10歳から11歳にかけてブラジルに住み、長じてからは15年間アメリカ・カリフォルニア州に居住する。様々な職業に従事した後、2006年、41歳でカリフォルニア大学バークレー校に入学。2009年、同校卒業(East Asian Languages and CulturesとAsian Studiesを複数専攻)、Highest Honorsを授与される。離婚して日本に帰国するが、日本近現代文学、比較文学、ジェンダー批評に主軸を置いた学際的研究を続けるために、2012年城西国際大学大学院に進学、2018年3月博士号取得(指導教授:小林富久子教授)。比較文化博士。現在は語学教育のNPOに勤務しながらインディペンデント・リサーチャーとして研究活動を続けている。

    コメンテーター:池川 玲子(いけがわ れいこ)

    石内都の「横須賀ストーリー」 境界の傷跡

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    2018/05/19

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    著者名:Keith Vincent

    コメンテーター:小林 富久子(こばやし ふくこ)

    米文学研究者として出発後、ジュディス・バトラー、ガヤトリ・スピヴァクなど、海外の先鋭的理論家の邦訳を手がける傍ら、自らもセクシュアリテイに関わるラディカルな問いを発し続けることで、日本のフェミニズム界を牽引していた竹村和子さん。そんな彼女が突然の病に没してから早くも七年が経つ。本稿は、早くから彼女と親交を結んでいた日本文学研究者でクィア理論家のキース・ヴィンセント氏がフェミニストとしての竹村さんの思考の軌跡を独自の立場から辿ろうとした極めて刺激的な論考である。 現在ボストン大学で教鞭をとるヴィンセント氏は竹村さんとは常々、自身は米国にいて日本文学を研究する一方で、彼女は米文学を日本で研究していることについて冗談を交わし合っていたという。その後、彼はこの話題が実は竹村さんにとって頭から離れないほど重いテーマとなっていたことを悟る。それを彼に知らしめたのが、遺作としての彼女の英米文学論集『文学力の挑戦』の最終章にあたる「ある学問のルネサンス?英(語圏)文学をいま日本で研究すること」なのであった。 本論の後半部でヴィンセント氏は、この章の綿密な読みを展開することで、果たして「英米文学を研究する日本人」であることが竹村さんにとって「何を意味」していたかを、まるで優れた推理作家のごとく鮮やかな手さばきで解明してゆく。仮に日本のかつての多くの英米文学者が自らの研究対象を熱心に研究することで、英・米というより卓越した帝国としての国家との一体感を果たさんとしていたとすれば、ちょうどその逆を行こうとしていたのが竹村さんで、それを助けたのが、国家をはじめとするホモソーシャルな集合体を批判する学としてのセクシュアリティ研究への竹村さんの傾斜であったというのだ。 本論文は、文学もまたそれぞれの国のナショナルな欲望の装置として作用しうるという重要な事実に目を開かせてくれるとともに、孤独に一つ一つの作品に向き合い、そこから漏れ来る諸々の得体のしれないものに遭遇しうることにこそ文学の喜びがあるということも伝えてくれる。何よりもまず本論は、二人の優れたフェミニスト学者が国境を超えて交わしえたかけがえのない友情を跡づける物語でもあることを強調しておきたい。

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