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2006

NPO法人参画プラネット☆講演会・ワールドカフェ女性の「働く」を考える

2013.06.12 Wed

5月の市民交流事業は、中部ダイバーシティNetとの共催で、講演会&ワールドカフェ「女性の“働く”を考える。」を開催しました。20-60代の女性を中心に、約100人の参加がありました。
第1部基調講演の講師は、NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長の上野千鶴子さん。テーマは「女たちのサバイバル作戦」です。
講演では、日本女性の地位指標の国際比較、雇用の変革、女性間の格差拡大など、主に1980年代以降現在までの状況を、たくさんのグラフとともに解説されました。
1985年の労働者派遣業法によって、民間企業に人材派遣業を許可したことから、日本の雇用体系が徐々に破壊されてきたこと。女性と若者は置き換え可能な“使い捨て労働力”との位置づけを強化され、現在では若者の新規労働者の半分は非正規雇用であるという状態にまで至ってしまったこと。当然、女性や若者の生活基盤がさらに不安定になり、貧困問題を生み出していることまでがクリアに提示され、誰もが社会的弱者になり得る現実が重く迫ってきます。
このような希望が持ちづらい社会を生き延びる戦略の1つとして、単一の収入源に限らない、ダブル、トリプル、そしてマルチプル・インカムで暮らす“一人ダイバーシティ(多様性)”が提案されました。これは、さまざまな仕事をして得られた少額の収入を持ち寄って暮らすというスタイルです。

続いての第2部は、ワールドカフェという語り合いの手法を用いてのグループディスカッションです。ワールドカフェは、少人数のグループに分かれて、まるでカフェに集うようにオープンでリラックスした雰囲気の中で行われます。初対面の参加者同士でも自由にアイディアや意見が共有されて、交流とネットワーク作りが進むことを目的としたものです。
今回は、8名ずつのグループに分かれ、30分の枠組みで1つのテーマにそって話し合いをします。心に残ったこと、ひらめいたアイディア、イラストなどを、テーブルに用意された模造紙に、自由に書いていきます。テーマは「働く私のモヤモヤトーク~上野さんのお話を聞いて」。基調講演からそれぞれ感じたこと、考えなど自己紹介を交えながら共有し合います。30分が終了したところで、グループメンバーのうち1人を残して、それぞれ新しいグループに分かれて、また話し合いを開始するというやり方で、第2ラウンドまでおこない、最後に共有タイムを持ちました。
各テーブルでは、まだ育休がなかった頃に両親のサポートを得ながら子育てしたことを振り返る方や、現在子育て中で、会社で忙しい一日を過ごした後の子どもへの接し方に悩む声、子育てをサポートする制度の整備の不十分さへの怒りなど、さまざまな体験、感想、意見などが出され、グループでの熱心な話し合いが展開されていきます。
第2ラウンドでは、「明日から私のサバイバル作戦」をテーマに、今後どのような対策、工夫ができるかを話し合いました。メンバーの体験談を聞いて自分の将来に生かそうとする学生の方や、「夫は主たる家計を負担すべき」という考えを見直したいという男性からの意見など、活発なやりとりが見られました。
共有タイムでは、各グループからのまとめを短く発表して、全体で分かち合いをします。職場だけではなく活動を広げて居場所作りをするという意見、職場で考えや希望を口に出してみることを挙げた方。お互いの価値観を認め合い、助け合うこと、共感力を高めるといった作戦が披露されました。

第3部では、「生き延びるための実践へ」と題して上野さんからワールドカフェ全体を通してのまとめが話されました。共有タイムで発表されたアイディアを受け、今後のサバイバル戦略として上野さんは、ワールドカフェの参加者からの報告から生まれた言葉―“マルチハピネス”―つまり自分を幸せにする源を仕事や育児だけに限定せずに、あれこれと広げて多様化する大切さを挙げられました。さらに、サバイバルとコミュニケーションの関係性についても話されました。声に出して体験や思いを伝え合うこと。共感し違いを認め合うことから助け合いが生まれるのだと。

「女性と仕事」はこれまでも多くの女性が悩み、工夫を重ねて取り組んできたテーマです。雇用の不安定さがさらに進んだ状況でのこの講座は、さまざま視点や考えが得られた、刺激的で貴重な機会でした。才能があり機会に恵まれて“困ってない”女性はごく一部。そんな人だって、一生困らない保証はない時代。人口が減少し、経済発展に頼れない社会はもうすぐそこまでやってきています。フレキシブルな生き方のほうがおそらく有効となる時代は、多様性になれた女性は生きやすいのではないでしょうか。一方で、20代の女性の専業主婦願望がますます高まっていると聞き、若い女性こそ今から考えてもらいたいテーマでした。私にとってのマルチプル・ハピネスとは何か。今後も考え続けていきたいです。 (塚田 恵)

カテゴリー:参画プラネット

タグ:仕事・雇用 / 上野千鶴子 / 働く女性 / 女性センター