【山梨県からお礼とご報告】
池田政子さんから「山梨県立男女共同参画推進センター「集約」問題を考える連絡会 これまでの活動の総括と発展的解散について」の投稿です。
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山梨県立男女共同参画推進センター「集約」問題を考える連絡会の池田政子です。
2021年2月、山梨の地形上、3館あることが必要だった県立の参画推進センターのうち2館を閉鎖し、甲府のセンターも複合施設化するという方針が突然新聞報道されました。
私たち利用者は何も知らされていず、意見も聞かれていませんでした。
そこで「統廃合反対」の一点で、様々な立場の団体・個人が緩いネットワークを作って、請願の提出や署名活動などを始めました。
このような連携の仕方による女性たちの運動は、山梨ではこれまでにないことでした。
皆様にも、請願の賛同者になっていただいたり、知事あてに要望書を出していただくなど、大変お世話になり、また励まされました。
県内だけではなく、全国から「見られている」ということは、知事・行政担当者に大きな影響があったと考えています。
約2年の経過の中で、結局、1館は閉鎖して別の場所に3室程度のスペースを確保、もう1館については建物を市に移譲し、その中に県が新たに3室程度借り受けるということになりました。
規模も人員も縮小されています。
ただ、私たちの運動がなかったら、望む形ではないにしても2館が残ることはなかったと思います。
また、私たちにとっては、多様な団体がつながることの大切さや、地方自治とか主権者であることの意味をあらためて考えるきっかけになりました。
そこで、センター問題については、一定の成果を残したということで、この連絡会を解散することにしました。

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一方でせっかくのネットワークをそのまま解散するのではなく、全国最低ラインをさ迷っている山梨のジェンダー平等状況を何とか変えていくために、また若い世代の方々につなげていくために、新しいネットワークをつくろうという声が上がり、このたび、立ち上げに至りました。
地元紙の記事ではあまり書ききれていませんが、40代~50代初めの方々が中心になって担っていくことになっています。
生まれたばかりで、まだ形が整っていませんが、今後ともどうぞよろしくお願いします。
これまでのご支援に感謝し、ご報告させていただきます。
ありがとうございました。
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WANサイトでは各地で起きているまたは起きそうな女性センター統廃合の動きに、私たちはどのように運動するのか、注目しています。
過去の関連記事:
「女性センター統廃合攻防の現場から:山梨県の場合」
報告① https://wan.or.jp/article/show/9530
報告② https://wan.or.jp/article/show/9572
報告③ https://wan.or.jp/article/show/9573
報告④【上野千鶴子の講演全文公開「女性センターはなぜ必要か 女性政策 “骨抜き” の歴史から」】 https://wan.or.jp/article/show/10294
そのほか関連記事は以下から↓
https://wan.or.jp/article/show/9533
https://wan.or.jp/article/show/9630
https://wan.or.jp/article/show/10014
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以下は、連絡会からの報告です。
【山梨県立男女共同参画推進センター「集約」問題を考える連絡会
これまでの活動の総括と発展的解散について】
2023年7月8日 連絡会メンバー一同
<始まりと私たちのしたこと>
2021年2月、突然、地元紙が県立3館のセンターのうち、ぴゅあ富士(都留市)とぴゅあ峡南(南部町)の2館を閉鎖し、ぴゅあ総合(甲府市)に「集約」するという県の方針を報じました。私たち利用者、県民には何も知らされていませんでした。山梨のジェンダー平等は全国最低ラインに沈んでいるというのに、なぜ?
そこで、山梨県女性団体協議会を筆頭に55団体、601名による「請願」を県議会議長宛てに提出しました。請願内容は、①県民の声を聴いて「集約」を見直す、②県全域の参画推進のために3館を存続する、③専門的知識を持つ人材を配置するなど3館の機能を充実強化することでした。県外からも2団体74名が賛同してくださいました。
県内外からこれだけの女性団体・個人が結集しての「請願」は、山梨の女性運動としては初めてのことです。この「請願」は2月県議会で全会一致の採択となりましたが、近年の県政において、行政が一度予算をつけた事業を「見直す」という趣旨の「請願」が採択されたのも、稀有なことでした。
その後、本連絡会を立ち上げて署名活動を始め、最終的に1万5614筆の署名を県当局に提出しました。また、SNSでの発信、地元紙への投稿・記者会見・メディアへの発信、県議会議員との意見交換、街頭活動による県民へのアピールなども行いました。県内諸団体、自治体推進委員会からの要望書の他に、「市川房枝記念会政治と女性センター」、「全国女性会館協議会」、「日本BPW連合会」、「全国フェミニスト議員連盟」の県外4団体が知事宛に「集約」の見直しを求める要望書を提出してくださいました。
<その結果起こったこと>
県は請願の採択を受け、県民との意見交換会を6回開きました。「集約反対」の意見が圧倒的でした。6月県議会ではこの件についての質疑も行われ、「男女共同参画」という言葉がおそらくこれまでにはないほど発せられて、知事も「男女共同参画の推進は県政における最重要課題の一つであり、これまで以上に施策を充実強化することが必要」と答弁することとなりました。
にもかかわらず、7月の「庁議」によって「2館閉鎖」を決定し、直後に知事の「男女共同参画先進県に向けた 取り組み断行宣言」が出され、現施設は閉館するが代替スペースを確保するという方針が示されました。その結果、2022年6月にはぴゅあ峡南の代替スペースが旧中学校舎の中に開設、ぴゅあ富士については建物を都留市に譲渡してその中に代替スペースを県が借り受けることとなり、そのための改修工事が現在行われています。またぴゅあ総合は旧国際交流センターとの複合施設とするための1年間の改修工事を終え、この4月にリニューアル・オープンしました。
一方で、県は男女共同参画に関する新たな事業や政策を打ち出しました。
2021年度、2館閉鎖決定後、「山梨県男女共同参画活動団体促進事業費補助金」の制度を新設。またこの年に策定作業が行われた「第5次山梨県男女共同参画計画」については、県民からの意見聴取の機会が設けられ、そこでの意見が最終案にある程度反映されました。そのため県民の関心も高まり、パブリックコメントの募集に際し、第4次計画策定の際には1名1件だったのに対し、15人101件のコメントが寄せられ、いくつかは計画に反映されました。
この第5次計画では、これまで県の「連携先の一つ」という位置付けでしかなかった「センター」について、「男女共同参画推進センターの充実」として、①峡南地域、富士・東部地域に新たな拠点を整備、②専門人材を分野ごとに配置、③センターを中心に対話を重ね、施策の立案、事業の企画段階から多様な主体と連帯、協働しながら地域課題の解決に取り組む、④県が責任をもって事業を遂行する体制の構築などが記載されましたが、私たちの要望と異なる点もあり、十分とは言えません。
また「集約」問題発覚当時、県の男女共同参画行政の部署は「県民生活総務課」の中に「担当」が置かれているだけでしたが、2022年度には「男女共同参画・共生社会推進統括官」という部局が新設されました。また「統括アドバイザー」として国立女性教育会館の萩原なつ子理事長が委嘱され、上記②に対応するものとして「専門アドバイザー」制度が新設されました。さらに④に関し、2023年度は、男女共同参画推進センター館長及び「特任専門員」が、県の統括官部局に所属する形でぴゅあ総合に配置されましたが、この点についても問題をはらんでいると認識しています。
<これまでの活動の評価>
1.県議会議員及びメディア関係者はどう見たか
(1)県議会議員へのアンケート(2022年1月実施)より
2館閉鎖が決まり、代替スペースの方向性が決まった時期に、全県議会議員に対する「公開アンケート」を行い、意見を伺いました(回答率47.1%)。
「連絡会の運動が影響した結果として起こった事柄」について、「非常に重要と思うこと」(3つ選択)は、多い順に「県と県民との意見交換会の開催」「県議会・委員会でこの件についての質疑応答が何度も行われた」「知事が『男女共同参画の推進は県政の最重要課題』と何度も表明」「知事の『取り組み断行宣言』の発表」が上位を占めました。「請願」を全会一致で採択した県議の方々が、本連絡会の運動は県政に一定の影響を与えたと評価していると受け止めました。
また、「県政における男女共同参画の取り組みがいかに遅れているかを広く県民に知らせることとなり、知事も『取り組み断行宣言』を行うなど、運動が行政、政治を動かしていると思う」などの意見もありました。
(2)県議・メディア関係者へのインタビューより(2022年11月)
①小越智子県議(当時)
最初に予算書の中でこの「集約」方針を見つけて、問題化させたときも、県は強行するだろうと思った。こんなに幅広くいろいろな女性団体が集まって力を合わせた運動は今までになく、大きな影響があった。この運動がなかったら2館も残らなかったと思う。関連のシンポジウムなどもすることによって、山梨のジェンダー平等をどう考えるか、みんながあらためて振り返り、何とかしていく必要があるという認識が広まったのではないか。女性の政治参画が少ないことと、こういう問題がリンクしていると思い、責任も感じた。
②笠井辰生県議
町議時代にこの件を知り、「閉館ありき」で進んでいると思い、知事のフェイスブックに「利用者の声を聴いて見直してほしい」と投稿。県議になり指定管理を調査する委員会の委員となって、男女参画の人材育成と地域への意識づけ、市町村との連携が契約の中に全くなく、県はセンターを「貸館」くらいにしか思っていなかったのか、県としての「資産」にはなっていないと感じた。代替施設ができたのもこの運動があったから。峡南地域ではこれまでネットワークがなかったが、問題意識を共有して何とかしようという人とのつながりができた。この経験値を記録として、資産として残すことが大切。地域の女性議員を増やすこと、人を育て委ねることもしていきたい。
③メディア関係者(3名)
共通していたのは、次のようなことでした。
・県の「集約」方針を「唐突」と感じ、利用者の反発があるだろうとは思ったが、県の方針は変わらず、このまま進むだろうと予想していた。
・実際には、関係団体が声を上げ、その運動が「盛り上がって」、県行政の姿勢に一石を投じ、知事の「取り組み断行宣言」、部局の設置、規模・機能は縮小したけれど代替施設が確保されるなど、政治・行政を少し動かした。
この結果に対し、それぞれ、「住民目線に立った取材の重要性を再認識した」「こうやって声を上げると変わるんだ、声を上げることは大事なんだ」「館の存続自体が女性運動なんだとわかった」という感想を述べられました。
2.私たち自身の評価
(1)「請願」したことはどうなったか
①「集約」方針について県民の意見を聞いて見直してほしい。
⇒ 県民との意見交換会は開かれたが、結局、元の方針通り「2館閉鎖・集約」となる。
②県全域の男女共同参画推進のために3館を存続してほしい。
⇒ 2館を閉鎖し、規模・機能共に縮小した代替スペースを設けることに決定。ぴゅあ峡南は更に南に移動した場所に新規開設、ぴゅあ富士は現在の建物の中にスペースを確保することとなり改修中。ぴゅあ総合は改修して複合施設となった。
③専門的知識を持つ人材の配置など3館の機能の充実・強化をしてほしい
⇒ 統括アドバイザー、専門アドバイザー制度を作ったが、私たちの求めたセンターの常勤職員ではない。
(2)私たちが得たものは何か
私たちは、上に述べたこと以外にも、県議会・委員会を傍聴し記録化して共有すること、また関連したテーマでのシンポジウムや学習講座、主権者としての基礎力をつけるための「市民力UP」基礎講座などを県内外に向けて開催し、私たち自身が共に学び県外にも発信する機会を創出してきました。2022年12月にはNWECフォーラムに「ありえない! センターを消そうとするなんて ~山梨県で起きたセンター『集約』問題~」というタイトルで出展し、これまでの活動を振り返り、3つの視点から次のような整理をしました。
① 住民活動の意義を実感
この活動がなければ2館はなくなっていた/おかしいことはおかしいと声を上げることが大切/粘り強くやってきたことが自分たちの力になった/署名を通してわかってくれる人が増えた/拠点のあり方、活かし方を考えることができた/ジェンダー問題等の勉強になった/記録を残すことの重要性を感じた
② 行政が住民を「パートナーとしてみていない」という認識
県はこんなに大きな動きになるとは予想していなかったのではないか/県は県民を見ているのか/知事の「取り組み断行宣言」の本気度は?/地域格差をまた作るのか
③ 未来に希望をつなげるために「声を上げ続けること」の重要性
県を変えていくには声を上げていくことが必要/残ったセンターをどう活かしていくかが重要/教育・人材育成が重要/もっと女性議員を!/若い人につなげたい
<運動当事者としての私たちの総括と今後>
様々な立場の団体・個人が「センター統廃合反対」という一点で集まった本連絡会は、「代表」も置かず誰もが「世話人」でいいという、一切制約のない非常に緩やかなネットワークとして活動してきました。
「請願」に掲げた要望は完全に実現したわけではなく、不十分な点が多々あります。しかし、私たちの運動がなかったら、たとえ望んだ形ではないにしても2館が存続することはなかったというのも事実です。また、県政の中で、「男女共同参画」や「ジェンダー平等」についての政策がクローズアップされることも、なかったかもしれません。
何より私たち自身にとっては、県行政の在り方や政策に関心を持ち、地方自治や主権者であることの意味をあらためて考える契機になりました。またこれまではお互いにあまり関係を持たなかった団体や個人がつながって、自分たちの思いを声に出すこと、アクションを起こすことの手応えも体験できました。
最近発表された世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ報告書」によると、日本はまた順位を下げ146カ国中125位と過去最低となっています。その日本の中でも最低ランクに低迷している山梨県ですが、知事の「男女共同参画先進県」実現に向けた「取り組み断行宣言」の行方を、私たちはこれからも注視していきます。
また、主権者である県民がこの状況に変化を起こすためには、個別の団体や個人の努力はもちろん、山梨のジェンダー平等実現という共通の目的に向かって、何らかのネットワークを形成することが不可欠だと、今回の経験が教えてくれました。
以上のことから、私たち「連絡会」はセンター「集約」問題については一定の成果をあげたことを確認した上で、発展的解散をいたします。そして多様な団体・世代の方々を含む新たなネットワークにつなげたいと思います。どうぞこの趣旨にご賛同くださる方は、どなたでもぜひご参加ください。
「請願」にお名前をくださった皆様、また署名をくださった方、署名を集めてくださった皆様、さらに私たちの活動を支援してくださった様々なお立場の皆様に、心より感謝いたします。
PDFは下↓にあります。
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