2023年7月24日(月)
第4回WANアドバンスコース レポート


清水由紀子
4月に船出したWANアドバンスコースは快調に⁉ 大海原を航海中だ。早や4回目を終え 、Zoomの画面越しに見る仲間の顔に親しみを覚えるようになった。とはいえ、ゼミが始 まれば、「なんで月曜日の夜にこんなことを……」などと思いにふける間もなく、全身を 目と耳にして、あらん限りを振り絞る。
  「なぜ、そんなことしてるの?」と思うなかれ。きっと誰にだって、なんで? 変じゃな い? どうなってるの? 見て見ぬふりはできない! ということがあるだろう。そんな自分 の半径数メートルのところにある小さな刺が、研究に姿形を変えていく。 上野先生は、ひとりひとりが自分の刺と妥協なく向き合うことを、「いいね!」言って くれる人なのだ。「そんなつまんないことしてないでさ」なんて、さも大人が言いそうな ことは絶対に言わない。そう思えるから、とことん格闘し、失敗し、チャレンジできる。 私たちは、「私の刺」と向き合いながら、その向こうに社会を見ている。私の問いは、き っと、私だけの問いじゃないと信じて。


荒井ひかり
「上野先生の授業が受けたい!」
もう30年近く経つが、自分が社会人なりたての頃、上野先生の著書『さよなら学校化社会』を読んでから、ずっとそう思っていた。職場の研修で用いられるKJ法は名ばかりで、上野先生の本に書かれているものとは全く違う。「どんな状況にあっても生きていける知恵」「自分の目と手と経験からつかんだ情報をもとに、それを分析して、そこから何かをつかみとっていくノウハウ」「一次情報を処理して、それを新しい情報に転換していく、情報生産の技術」(サヨナラ学校化社会P121)その技術が欲しかった。当時、就職してお金を貯めて京都の大学へ行ければ良いのにと思っていたのに、気づいたら先生はすでに東京大学の先生で、とても手が届く場所には居なかった。
 そして、とても遠回りをして、8年前にWANに出会った。やっとやっとの思いでたどり着いた。東大に行く頭脳はなくても、どんな状況でも生きていける知恵をつけられるように、上野先生はWANで門戸を広げて受け入れてくれた。そして2023年4月。いよいよアドバンスコースの開講!である。
 懐のどでかく広い上野先生でも、私のような無学の者が受講生になって大丈夫なのか?私は、社会学の研究なんて触れたこともなく、高校生から絵を描くことしかして来なかった。本当に大丈夫なのかと不安しかなかったが、昨年度、フェミニズム入門塾でともに学んできた仲間がアドバンスコースでも一緒で、それが何より心強い。講義も4回目になり、ZOOM画面越しに見える受講生は、それが誰なのか、どんな研究がしたいのか、どんな話し方をする人なのか、どんな時にリアクションするのか、何に疑問を感じ、何に怒りを覚えているのか、見えてくるようになった。
 仲間がいて心強いとはいえ、アドバンスコースは情報生産の場、しっかりがっつり学問の場だ。 「性別役割分担gender role assignment、性別分業gender division of labor。 性別役割分業にあたる専門用語は英語にはありません、使わないこと。」 「次のステップを踏むとしたら、再分析した方が良い。もっと読み取れる!」 「映像メッセージ(非言語情報)はコンテクストではなく、テクストの一種です。」 「いかなる意味と結びついているか。違いは見えてくる。」 「研究計画が、これだと羅針盤にならない!」「Speculation なんと言う?」
 上野先生は精一杯、素人向けに優しく易しく表現してくれているのに、毎回、文字面だけが右から左に通りすぎていく。言葉の検索から入り、メモを取り、参考文献を読んで、また一か月。研究計画を、リベンジリベンジ、またリベンジ。研究計画提出初回は「みっともないタイトル」と、ズバッときた。ズバッと鋭く切り刻みつつ、私でもわかるような言葉で解説して、より良い言葉や方法を提示してくれる。そしてみんなの計画が、目的も方法も精選され、見事に生まれ変わっていく。講義を受けながら、私はいつも、上野先生のこの愛の源は何なのかなと考える。まだまだ女性が生きにくい日本社会で目くじら立てて声挙げて、私たちが息つくスペースを切り開いてくれた先人が、「もっと頑張りなさい」と、闘うスキルを授けてくれている。次へ、次へ、また次へ。勇気と知恵とその愛を、つなぎ続けたいから。なんとしてでも修了まで走り続けたいと思う。


第一回レポートhttps://wan.or.jp/article/show/10703
第二回レポートhttps://wan.or.jp/article/show/10645
第三回レポートhttps://wan.or.jp/article/show/10714
第五回レポートhttps://wan.or.jp/article/show/10810