8月8日の午前10時半すぎ、上関町役場の前に町議の秋山鈴明(すずか)さん・清水康博さん・山戸孝さんがあらわれた。町議会の全員協議会が終わったことを報告する3人に、集まった住民や取材者は耳をそばだてる。それはスマホで中継され、遠隔地から私も耳を傾けた。
 このとき清水さんは次のように指摘している。
「私どもが立候補して議員になったとき、無投票だった。そして前回の町長選挙のときも、中間貯蔵施設のことは誰一人として言っていない。町長自身も、まったく言っていなかった」
 前回すなわち2022年2月の上関町議員選挙は、立候補した人が定数と同じ10人に留まったため24年ぶりの無投票となっていた。
 それから半年ほど経った9月に柏原重海(しげみ)町長(当時)が辞任を表明。10月には町長選挙がおこなわれ、町議会の議長(当時)が出馬して当選した。それが現在の西哲夫町長である。
 その町長選に際して現町長は、立候補を表明した22年10月4日の記者会見で、岸田文雄首相がその2ヶ月前に次世代型原発の建設に言及したことに「勇気をもらった」と語り、10月18日の告示日には「原発が唯一の町の起爆剤」と第一声で訴えていた。さらに「勝てばいい選挙ではない。得票率は何パーセント出るか」と檄を飛ばして、投票者の約7割の票を得ている。
 しかし、使用済み核燃料の中間貯蔵施設(以下、中間貯蔵施設)については、まるで触れていなかった。それは町議も同様だ。つまり中間貯蔵施設については、直近の町議選でも町長選挙でも、誰も俎上に載せていないのである。

本州の室津地区(写真中央)。右手に見える上関大橋が対岸の上関地区へ架かる。

長島の田ノ浦方面と対岸の祝島。いずれも長島の上盛(かみさかり)山から2022年10月18日に撮影)

 そうである以上、現職の議員がこのまま、中間貯蔵施設をどうするかと決を採ることには疑義がある。清水さんはそう問題を提起すると、言葉をつづけた。
「町長は、原発を推進するという立場でたしかに約7割の票を得た。だが、原発推進イコール中間貯蔵も推進、ではない。原発と中間貯蔵はまったく別物だと、町長自身も8月2日に中間貯蔵施設の話を聞いて駆けつけた住民に話していた。まず、中間貯蔵とはどういうものか。それを中国電力(以下、中電)が地域振興策として提案してきたのなら、どれだけ地域の振興になるのか。そういうことは現時点でも町長から町民にはっきり説明できるはず」
 そう言って、まずは主権者である町民に対して、町長が説明責任を果たす必要があると訴えた。
 報道によれば町長はそのころ、「姑息なやり方はせず、堂々と進めて賛否を問いたい」と述べる一方、町が直に住民への説明会をおこなうことは「検討する」としながらも、その時期は「臨時議会のあと」となる可能性を示唆したという。
 それから町長は山口へ出かけたようだ。山口県庁にて村岡嗣政県知事と、非公開で40分ほど面談したと報じられた。
 翌8月9日の定例記者会見で村岡知事は、「(中間貯蔵施設の)立地可能性調査をすることについて上関町へ申し入れがされた段階であり、町としては議会も開いて、どうするか判断していきたい」と西町長から報告を受けたと述べている。「推移を見守りたい」としつつ、原子力に関わる政策が地域の分断を生んできた過去を踏まえ、進め方について「丁寧な説明はしていかなければいけない」と中電に、「どのようなコンセンサスを町内で得るかは町の住民自治の話であり、やり方はしっかり考えていただく必要がある」と町に、県として求めてもいた。

 その中電は、8月7日から9日のあいだに、上関町内1300世帯のうち祝島をのぞく1000戸を戸別訪問したと後日、報じられている。「中間貯蔵施設について説明した」という。
 ただし「ポスティングしただけ」という声も聞こえていた。町内の1地区へは説明さえできない状況も、「丁寧な説明」には遠いと言わざるを得ない。
 では町は? 町長はやはり町民への説明を町議へ丸投げするつもりのようだ、と清水さんは問題視していた。なぜなら、すでに述べたように前回の町議選は無投票だったため「支持者が誰か分からない」。また、秘密会である全員協議会で話した内容は、外へ出してはいけないという内規がある。それに矛盾する要請となるため「できない相談」なのだ。そもそも、首長の手足となることは議員の役割でもない。
 ところが町長は、議員が中電の説明を聞いて住民へ説明すればいい、と話しているという。「議員は住民の代表だから」そして「中間貯蔵施設へも視察に行っているから」と理由を述べたそうだ。
 上関町議会は2019年と2022年、茨城県の東海村にある日本原子力発電(以下、日本原電)の東海第二原発へ行っていた。複数の関係者によれば、それに際して「議会の全会一致でないと(原子力に関する決定を)やらない」と当時の柏原町長が言ったそうである。「上関原発を建てさせない祝島島民の会」などの住民団体がつねに複数の議員を議会へ送りだしている上関町において、それは「原子力施設の計画は進めない」と言っているに等しい。すべての議員が参加した。
 東海村で中間貯蔵施設を視察したという。「町が原発立地から中間貯蔵施設への転換を模索しているわけではない」のに町内を「動揺させてはいけない」と、その事実は公表されてこなかった。
 しかし、議員は視察に行ったとはいえ、あくまで東海第二を見に行ったのみ。上関での計画がどういうものになるか、規模なども分からない状況を考えても、住民への「判断材料がなさすぎる」。清水さんはそう話し、町の進め方に疑問を呈した。(つづく)

注1) このレポートの予告動画3本の動画のうち1本目を現在も公開中です:
8月18日、上関町役場前で その1 
(午前8時すぎ、町内外の住民が平穏に町長へお願いしている時間帯の様子です)。

*この企画は一般財団法人上野千鶴子基金の助成を受けて実施しています。