わたしだって40才になって以来ずっと介護保険料は払っている。だから本当はもっと中身を知りたい。だけど老いやおとろえを認めるのはいやだし、老いた自分の姿を思い浮かべたくない。だからわたしのように制度の中身がよくわかっていない人も実は多いのでは?
父は骨折して退院後ずっと介護保険でデイサービスにお世話になった。近い将来わたしも介護保険にお世話になるのだろう。父が介護保険を利用するにあたって、ケアマネさんとのやりとりの窓口は私の母だったので、制度のしくみをくわしく調べてみることはしなかった。ここ10年のうちに近所には、老人用のキレイな建物が3つも4つも建てられている。あれは、なんという施設なのだろう? サ高住? 特養? 老人ホーム? どう違うの。どのような人が運営し、どのようなニーズにかなっているの。それと、ここが大切。いくらかかるの。わたしは入れるの?
ご近所を散歩中にはこんなことがあった。老婦人が転んで動けないようなので、どうしようとおろおろしていたら、サッと自転車を止めてくれた女性がいた。彼女は「大丈夫ですよ、私、介護ヘルパーなので」と、老婦人をかかえて立ち上がらせてくれた。その動作はなんとも頼もしく、流れるような所作にほれぼれした。
9月16日(敬老の日!)には、介護保険について「こんなはずじゃなかった、介護保険:私たちのケア社会をつくる」https://wan.or.jp/article/show/11320という無料オンラインシンポジウム開催される。
(当日、視聴無料でhttps://www.youtube.com/live/BV-oumqwWWAからアクセスできる)当日ぜんぶ見ることができなくても、見逃し配信がある。
誰もがお世話になる介護保険、でも、まだまだ先のことだしとか、知りたいのだけれど、そもそもがよくわかっていないから、シンポを聞くのもちょっとハードルが高いような。そんな方も多いのでは。
それで、予習にと図書館で本をさぐってみた。そのなかでスルスル読めて、すこしわかった気になれた本をご紹介したい。

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おすすめ①
『「市民活動家」は気恥ずかしい だけど、こんな社会でだいじょうぶ?』小竹雅子、2023、現代書館
タイトルに「介護保険」は入ってないけど、それぞれがおもしろい短いエッセイにひきつけられながら、介護や福祉、そして市民活動についても知ることができる。小竹さんは、メールマガジン「市民福祉情報」を2003年から無料配信を続けていらして、http://haskap.net/cgi-bin/magazine/index.cgi こちらに登録すると配信してくださる。なぜ無料でそのような尊い活動ができるのか、かねてからわたしは気になっていたのだが、しなやかな小竹さんのお人柄や等身大での活動にそのヒントがありそうだ。岩波新書や岩波ブックレットの著作も小竹さんにはあるけれども、このエッセイ本は力まずに読めて日常生活の目線で福祉や介護について考えるヒントがたくさん載っている。お人柄も浮かんで親しみやすく、ふだんの生活と介護保険をつなげて考えたい人にもおすすめ。
この本に書いてあったこと:
P171(ホームヘルパーは家に)あがられることを拒まれたら無給だ。訪問時に利用者が倒れているから救急車を呼んでも、サービスを提供していないから報酬はつかない。厚生労働省は通勤や待機時間の保障はあるというけれど、労働組合にほとんど加入していないパートタイム労働者に労使交渉しろというのは残酷極まりない。ホームヘルパーの労働条件を改善し、給与を引き上げない限り、本当に「消滅」してしまうだろう。

https://wan.or.jp/article/show/11393 より
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おすすめ②
『訪問ヘルパーがいなくなる!—在宅介護の終わりの始まり—』小島美里、2024、300円で頒布中。
https://wan.or.jp/article/show/11393
わたしは、終末をむかえるまでなるべく長く自宅で生きていたい。できるだけ最後まで住みなれた自宅で生活を続けるには、訪問ヘルパーさんたちの手助けが必要。
しかしその命の綱とも言えるヘルパーさんたちの報酬は、厚労省の分科会で減額につぐ減額の決定がされている。それって、厚労省は訪問ヘルパーさんの仕事の価値を見下している?
厚労省が報酬を減らす決定をしたせいで、訪問介護事業所の倒産閉鎖が激増し、訪問ヘルパーをやめる人は増え続けている。もしかして厚労省は、介護保険から在宅介護の訪問ヘルパーさんの仕事を切り離して、保険外にさせようとする方針でもウラでたてているのか?(怒) 全国展開の大手事業所も訪問介護をしているとはいえ、実際の運営にはどのようなカラクリがあるのか、ぜひご一読を。薄い冊子なのですぐに読めます。私はまとめて買ってお友達たちにプレゼントした。茶でも飲みながらマイエンディングはどんなのが理想か話さな〜い?とのお誘いも添えて。
この本で知ったこと:
大手の事業所はそもそも、低報酬の訪問介護をやらないことが多い。コロナの時、大手事業所は感染の疑いのある利用者の訪問介護を断ることが頻発。そのしわ寄せを引き受けていたのは地元密着型の小規模の事業所さんたち。実はコロナ禍の時にすでに、厚労省の在宅介護事業への冷遇ははっきり見えていた。PCR検査、抗原検査、コロナワクチンは介護施設には優先的に実施されたが、在宅介護事業者は優先枠からはずされていたというのだ(怒)。
訪問ヘルパーさんがいなくなる=在宅介護が成り立たない、ということ。そんなの困る。ほんとに困る!

おすすめ③
『史上最悪の介護保険改定?!』上野千鶴子 樋口恵子編、2023、岩波書店
この岩波ブックレットの帯に「もはや無知は罪。介護保険の危機を知ろう!」と書いてある。いま現在の問題を、いまの現場の実態から、多くの関係者が証言している。直面している問題を理解するための、はじめの一冊にするもよし。私はこの一冊からスタートして、わからないところを知るために他の本を読みすすめていった感じ。
この本を読んで考えたこと:
総合事業は本当に可能なのか?
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読みかけのおすすめ本④
『物語 介護保険ー命の尊厳のための70のドラマ』上下巻 大熊由紀子、2010、岩波書店
どのような人たちが、どのように議論し、介護保険制度をつくりあげてくれたのか。その原点から知りたい考えたい人におすすめです。


「こんなはずじゃなかった、介護保険:私たちのケア社会をつくる」8時間ぶっ通し介護保険マラソンシンポジウム 9月16日(月・祝)はhttps://wan.or.jp/article/show/11320に詳しい。

当日視聴はhttps://www.youtube.com/live/BV-oumqwWWA オンラインでご一緒しましょう〜。
WANサイト記事から
◯【投稿】介護ヘルパー国家賠償裁判傍聴記 ◆ケア社会をつくる会 鳩たけこ https://wan.or.jp/article/show/11060
◯WANサイトに掲載の、介護保険関連記事はこちらから
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昨年9月16日に行われた8時間のマラソンシンポの記録(https://wan.or.jp/article/show/11320)に基づいて編集したブックレットが出版されました。介護保険は崖っぷち――私たちのケア社会をつくるには』(岩波書店編集部)
https://wan.or.jp/article/show/11974
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