2013.06.27 Thu
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.とのさまガエルのブンナが、ある日、高い椎の木に上ってみると、頂上のくぼみ土がたまり、広場のようになっている。土の中で一晩をあかし、帰ろうとした時、蛙の天敵である鳶が頭上を舞っていることに気付く。出るに出られず、息をひそめているうち、鳶にさらわれた雀や百舌までもが広場にやってきた。
広場は鳶が餌を置いておく中継地で、鼠、蛇、ウシガエルと、ブンナにとっての天敵が次々とそこへ連れてこられる。どの動物も、鳶のせいで深手を負っている。地上では互いに捕食者-被食者の関係である彼らも、弱者となり、死期を覚悟したいまわの際の対話で、心中を吐露し合う。ブンナは土中に隠れたまま、じっと彼らの会話に耳を傾ける。
彼らの会話を聞くうち、憎い蛇や百舌にも自分と同じように大切な親がいることに気付かされたり、強さゆえに他の生物に嫌われる、体が大きい分人間につかまりやすいなど、それぞれの立場に長所・短所があり、生きるうえでそれぞれの悩みを抱えていることを知っていく。そうしてブンナは・・・
平易な文章、親しみのある語り口という児童文学の型の中で、水上氏ならではの展開の妙や美しい描写が存分に発揮されている。
根底に流れているのは、多様性への理解と共生思想だ。
「ブンナよ、おまえは自分だけが悲しい目にあっていると思うだろうが、そうではない。
もうずっとまえ、この世に私たちが生まれる前から、もうそのことははじまっていたんだよ。」
ブンナの父がブンナにいってきかせる言葉、鳥達の歌、ブンナの叫び・・彼らの言葉は、生存競争の過酷さ、哀しさを示しながら、それを引き受けて、生き続けていくことの強さをも示してくれる。
確かな生物観察に裏打ちされた、生の喜びと信頼が詰まった珠玉の名作である。
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