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アイリス・ヤング 『正義への責任』

2014.07.08 Tue

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.本書は、合衆国を代表するフェミニスト政治理論家の故アイリス・ヤングさんの遺作であり、かつ始めての邦訳書となりました。ヤングさんは、合衆国に限らず世界的に著名なフェミニスト哲学者であり、かつ、社会主義フェミニストの伝統を引継ぎ、実践家として反戦運動や労働運動、女性運動にも積極的に関わってきましたが、2006年、世界中の多くの人びとに惜しまれつつ、57年の短い生涯を閉じられました。

わたしたち翻訳者は、約2年にわたり、ヤングさんの遺作となってしまった本書を、ヤングさんの声に耳をすませながら邦訳してきました。

ネオ・リベラリズムの席巻、女性の貧困化、戦争責任の問題、平和と軍隊の問題など日本社会の問題だけでなく、ヤングさんが本書を執筆していた当時よりも地球大に広がる不正義に圧倒されそうなわたしたちにとって、現状に立ち向かう知恵を与えてくれると信じています。じっさい、翻訳者であるわたしたちは、この2年間、悪化する一方の政治状況、社会的に不利な立場に置かれた者たちへの容赦ない暴力的発言や人権侵害が放置される社会のなかで、ヤングさんの議論に大いに励まされてきました。

本書は、1990年代以降の合衆国における「自己責任論」がどのような文脈のなかで威力を得、社会的責任として「貧困と闘う」といった認識を人びとが見失っていったか、といった分析から始まります。なぜ、合法的に日常行為を行っているのに、わたしたち市民の一人ひとりが、社会や他者に対する責任を果たさないといけないでしょうか。

貧困は社会構造的問題であり、「自己責任」だけでは捉えきれないこと (第一章)、シングルマザーの例を具体的に取り上げながら、社会正義の問題は、構造的で具体的な分析を要すること (第二章)、「罪」と「責任」との異なり (第三章)、そして、わたしたちに責任がある、というさいのモデルとしての、「社会的つながりモデル」の提示(第四章)など、正義論に関心のある方にとって興味深いだけでなく、日本における社会問題を考えるさいの、一つの指標ともなるはずです。

序文では、シカゴ大学で同僚であった、フェミニスト哲学者のマーサ・ヌズバウムさんがヤングさんの思い出とともに、本書の外観も提示しています。

合衆国のフェミニスト政治理論の真骨頂としてもお読みいただける、ヤングさんから--不正義が蔓延する--世界に向けられた最後のメッセージが込められています。(翻訳者 岡野八代)








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