2012.11.27 Tue
さる10月21日、東京国際女性映画祭が閉幕した。バブル期に東京国際映画祭の協賛企画「カネボウ国際女性映画週間」として始まり今年で25回目。突然(と私には思えた)のフィナーレ宣言に驚かされたが、関係者によれば、実行委員の高齢化も一因だったようだ。
たしかに今年も映画祭の顔というべき高野悦子ジェネラル・プロデューサーの姿はみられなかった。岩波ホール総支配人として世界の映画人と交流の深い高野さんの不在は大きい。観客側も銀髪が目立つ。
映画と共に生き、日本の映画文化を支えてきた女性映画人の高齢化。避けては通れないことだが、寂しい限りだ。フィルムの時代も終わり、今年上映された三作品もHD-CAMやブルーレイによる。映画史は新たな段階に入ったといえる。
一方、同映画祭の発足当初からの目標であった「日本の女性監督の輩出」は、特にドキュメンタリー部門で成果をあげた。昨年『3.11ここに生きる』で評価された我謝京子監督のように、かつてこの映画祭で観客として世界のすぐれた女性監督の作品に接したことで、映画を志した女性が増えているのだ。
フィナーレをしめくくったのは、第一回から20本の作品を上映し続けてきた大ベテラン羽田澄子監督が数日前に編集を終え完成させたばかりの「そしてAKIKOは・・・AKIKO―あるダンサーの肖像II」。
昨年75才で亡くなったダンサー、アキコ・カンダの最後の日々を、若き日の姿と公演映像を織り交ぜ描く。27年前、第一回映画祭で上映した「AIKIKO―あるダンサーの肖像―」と対をなす作品だ。
二作続けて見る機会があれば、芸術に生涯をかけた女性の人生について、多くを考えさせられるだろう。圧巻は最後の公演。命の炎を燃やし尽くすかのごとき気迫と、ダンスにかける思いの純粋さに心うたれる。
会場にはアキコさんを支えてきたお姉さんや芸術家としての母に敬意を払う息子さんの姿もあり、場内は暖かな拍手に包まれた。
80代半ばにして気取らずかまえず鷹揚な語り口が魅力の羽田監督とアキコさんの古くからの友人だった大竹洋子ディレクターの上映後のトークもしみじみ味わい深く、良い意味で年の功を感じさせた。この調子で映画祭を続けてギネス記録をうちたててほしかったな。
(映画評論家・川口恵子)
上記は、愛媛新聞朝刊2012年10月30日火曜 文化面コラム「四季録」掲載記事を同新聞社の許可を得て転載したものです。
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カテゴリー:新作映画評・エッセイ