NPO法人WAN エッセイ

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台北婦女救援基金会訪問レポート--台湾慰安婦と女性の人権博物館オープンを前に 牟田和恵

2013.09.10 Tue

今年12月に台北で、台湾人慰安婦問題の解決をめざし歴史を記録する博物館がオープンします。これを前に、9月4日、準備にあたっておられる台北婦女救援基金会(Taipei Women’s Rescue Foundation)を訪れ、代表のカンさんと国際渉外スタッフのケンさんに、お話をうかがうことができました。

台湾の慰安婦問題

基金会は、貧しさのために女児が売春に追いやられる人身売買の防止をめざして、1987年に設立された組織です。以来、DV問題にも取り組み、1992年からは、台湾の慰安婦問題の解決に向けた活動を始めました。

カン代表(右)とケンさん

カン代表(右)とケンさん

日本ではあまり知られていませんが、台湾でも、日本軍の慰安婦とさせるため、多くの女性たちが被害に遭いました。その数は約2000人と推定されています。

1992年以来、被害者の女性たち(韓国のハルモニと同様、「おばあさん」という意味で阿媽(アマー)と呼ばれています)がカムアウトし、その数は1996年までに58名にのぼりました。現在では、その多くはすでに亡くなり、ご存命のかたは6名のみで、最高齢は92歳になられます。

当時、日本支配下の台湾で、役所の募集で女性たちが集められたことや、軍による移動の措置などを示す証拠書類が残っており、日本政府の関与は証明されていますが、これまで、日本政府に慰安婦への謝罪と賠償を求めた裁判はすべて敗訴に終わりました。でも、阿媽たちは「心は負けていない」と語っておられます。

阿媽たちと支援者たちは、毎年8月15日に交流協会(大使館に代わるもの)の前で、抗議行動をおこなってきました。阿媽の高齢化のため4年前からは基金会はじめ支援者たちによる行動となりましたが、抗議文書を協会職員に手渡しています。来年からは、慰安婦メモリアルデーとされたのに合わせ、8月14日になります。

心のケア

台湾の阿媽たちは、日本のアジア女性基金による「償い金」は、求めているのは日本政府による謝罪であるとして、拒否しました。

台湾政府は、日本政府への抗議は公式には行なっていないものの、阿媽たちへの生活扶助をおこなっています。基金会は、スタッフがそれぞれの阿媽によりそって、サポートを行なってきました。

とくに基金会が力を入れてきたのが心のケアです。

基金会と支援者たちは、若い頃に心身に傷を負い、その後の人生も苦難が多かった阿媽たちと、70回以上におよぶワークショップを行なってきました。阿媽たちが歌い踊り、絵を描き、そして思い出を語る機会を作ることで、日本政府と自分たちの苛酷な運命に対する怒りを表出し、そして心をいやす機会をつくります。慰安婦として過ごさざるを得なかった過去のために結婚することがかなわなかった阿媽にウェディングドレスを着てもらうものもありました。

また、夢を叶えるプロジェクトもやりました。一日交通警察官を務める、郵便配達人を務めるなどの夢を叶えるのです。その「夢」の背後には、前者では20年以上警察の洗濯係を務め、後者では子どもの頃から文字が読めて公務員である郵便配達人に憧れていた、という阿媽の思いがあったのです。

これらの活動からは、基金会が、阿媽ひとりひとりの心に寄り添いながら人生をサポートする活動をしてきたことが伺え、強く印象に残りました。ご存命の阿媽もずいぶん高齢となられた今では、こうした活動は行えなくなりましたが、カウンセラーが戸別訪問を行なって阿媽の支えとなっているとのことです。

基金会とは

基金会はこれまで、女性や子どもへの暴力に抗する法改正などにも大きな力を発揮してきました。基金会の理事は女性運動家や弁護士たちで、基金会での活動から政府の法務部長となった女性もおり、政治や法とのつながりが基金会の強みです。スタッフは総勢50名で、とくに若いスタッフが多いそうで、私たちが訪問したときにも、基金会事務所で10名以上の若手スタッフたちが各ブースでPCに向かって仕事をしていました。これらスタッフはボランティアではなく、台湾でいっぱんに仕事経験の無い大学新卒者が得るのとあまり変わらないくらいの給料が出ているそうです。これには、同行の大学院生ともども、大変うらやましく思いました。基金会の運営は、政府からの援助と寄付金で成り立っているとのことですが、日本でもこんな強力な女性運動を作りたい!との思いを深くしました。

スタッフたち

スタッフたち

12月の開館に向けて

『慰安婦と女性の人権博物館は、今年の12月10日(世界人権デー)の開館に向けて、着々準備が進んでいます。開館式には、馬英仇総統も参列予定です。

まずは、この博物館の成功がまず第一の課題とカンさんは語っておられました。歴史を次の世代につなぎ、グローバルな視点から歴史を見ることのできる教育の場になることが願いです。それは、女性への暴力、戦時性暴力を予防していくことにもつながるでしょう。

「女性の発展・平和・安全のために」–それが基金会のモットーです。

ノーDV!の看板を前にカン代表

基金会を訪問して、慰安婦はじめ被害女性たちに丁寧に寄り添いながら、とてもパワフルな活動をしている基金会に大変感銘を受けました。そして、グローバルな女性の連帯と権利の増進のために、WANも一翼を担いたいとの願いをいっそう強くしました。

基金会のHP http://www.twrf.org.tw/index.aspには英語版もあり、現在すでにweb上にある、慰安婦と女性の人権バーチャル記念館には日本語版もありますので http://www.womandpeace.org.tw/www_jp/index.html、これらのHPをお尋ねください。また、現在、基金会の協力により、東京・早稲田の、女たちの戦争と平和資料館(wam)で「台湾・「慰安婦」の証言 日本人にされた阿媽たち」特別展が開催中です(2014年6月まで) http://wam-peace.org/

なお、WANでは、12月の博物館オープニングを取材しその模様をWANサイト上で報告配信する予定です。どうぞご期待ください。

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タグ:慰安婦 / 牟田和恵 / 台湾