シネマラウンジ

views

2890

『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』評 個性豊かなフェミニスト群像の記録 松本侑壬子

2015.01.09 Fri

何を怖れる・メインスチール WANが製作支援にかかわったドキュメンタリー映画『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』が1月17日より渋谷シネパレス(2月7日からは横浜シネマリン)で劇場公開されます。
 公開にあたり、映画評論家・松本侑壬子さん(元共同通信社記者、元十文字学園女子大教授)の映画評(初出:『女性情報』2014年9月号)を掲載します。

 なお、渋谷シネパレスでは上映後、「公開記念 ティーチ・イン」が行わる予定です。松井監督はじめ、映画に出演している現役フェミニストたち(田中美津、 上野千鶴子、池田恵理子、樋口恵子、井上 輝子、桜井陽子、以上登壇順・敬称略)が、1人ずつ、日替わりで登壇し、それぞれのテーマの下、トークを行い、観客と交流する貴重な機会です。 みなさん、ぜひ、劇場に足をお運びください。 公開情報、「公開記念 ティーチ・イン」スケジュールの詳細は、映画評の下をご覧ください。WANによる無料試写会上映権付与に関する情報もあわせてご覧ください。

『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』評  個性豊かなフェミニスト群像の記録  松本侑壬子

  70年代のウーマンリブ(リブ)から現在までの40数年間の日本のフェミニズムの歴史と、現在も続くさまざまな女性の活動を、インタビューと映像記録とで綴る貴重な映像女性史である。劇映画「ユキエ」「折り梅」「レオニー」の松井久子監督の第4作で、今回は初のドキュメンタリー映画だ。題名の通り現代日本の代表的フェミニスト15人(物故者含む)に真正面から向き合い、その主張と生き方を通してフェミニズムとはを問いかける本格的な記録映画である。上野千鶴子、田中美津、樋口恵子、高里鈴代…それぞれ1本ずつの映画の主役になれそうな個性豊かな女性たちが、自身のフェミニストとしての人生を振り返る。

 冒頭の、70年代初頭の女性たちの激しいデモや座り込み、そして熱気あふれるリブ合宿の場面に、改めて衝撃を受ける。現代の“おとなしい女性たち”の目にはどう映るだろうか。彼女たちが何に怒り、何に対して、いかに闘ったか。だが、当時のマスメディアは、彼女らの“男並み”の行動を興味本位に、時に漫画チックに報道した。彼女らと多くの一般女性の間には、無関心というガラスの壁が出来ていた。
 実は、松井監督も無関心派の一人だった。良妻賢母を目指し、恋愛・結婚・出産で得た“女の幸福”も夫のDVで離婚、子どもを抱えてメディアという男社会で働き始めてからも、仕事の場から排除されないように気を使い、フェミニズムには無関心だった。昨年末、田中喜美子さんから「私たちの記録を残したい」と依頼されて初めて膨大な数のフェミニストたちの著書・資料を読んだ。
「これは私だ!」。自分がこれまで劇映画で表現し続けて来たのは、つまるところ「女の心の叫び」であり、彼女らの「女性として生きることとは、を根底から問い詰める」リブとは、繋がっている。何を怖れることがあろうか。映画のタイトルは、自分自身の実感から生まれた。
 この映画は、9月に行われた「あいち国際女性映画祭2014」で初めて一般公開されたが、「題名に惹かれて観に来た」「背中を押される気がした」という男女参加者が詰めかけ、上映後のシンポジウム(84歳の元「わいふ」編集長田中喜美子さん、社会学者上野さん、松井監督)は大いに盛り上がった。
 リブに参加した頃20代、30代だった女性たちは、この40数年の間に草の根の活動を続けるもの、評論活動、大学教授、民間の全国組織のリーダー、また議員や行政に関わる座に就いた人などさまざま。だが、格差社会が進むにつれて、「生き難さ」に悩む女性は増える一方だ。
 監督が最初「怖い」と思っていたフェミニストたちは、会ってみると自分と同じ悩みを抱え、懸命に生きて来た人なのだと分かった。映画の題名は、自分を含めた多くの女性への叱咤激励、将来が不安な若い世代への励まし、女の強さを怖がらないで、との男性へのメッセージだという。フェミニズムと距離を置いてきたからこそ「映画で彼女らの勇気ある人生と素晴らしい言葉を後に続く世代へ贈りたい」と松井監督は語る。劇映画からドキュメンタリーへ力強いチャレンジを果たした松井監督。映画祭の在り方にも、佐藤祈美栄・あいち男女共同参画財団理事長は、「国内唯一の国際女性映画祭として、映像文化を通してより幅広く「女性の活躍」の発信をしてゆきたい」と、新たなチャレンジに意欲的だった。
「何を怖れる フェミニズムを生きた女たち」に関する問い合わせは、FAX:03-3523-0212
または info@essen.co.jp まで

初出:『女性情報』2014年9月号掲載

『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』

上映: 9月6日(あいち国際女性映画祭)
監督 松井久子 企画 田中喜美子
出演 上野千鶴子、高里鈴代、田中美津、樋口恵子、中西豊子ほか
日本/2014年/120分/エッセン・コミュニケーションズ

(C)2014Essen Communications,Inc.

作品公式HPはこちら

予告編はこちら

公開情報:

1月17日(土)〜2月6日(金)渋谷シネパレス Tel.03-3461-3534

2月7日(土)〜2月27日(金)横浜シネマリン Tel.045-341-3180

どちらの劇場も毎日午前10時から朝一回の上映です。

「渋谷シネパレス・公開記念ティーチ・イン」スケジュールはこちら

上映権付与に関する情報掲載記事

■「フェミニズム映画上映権提供 試写会主催団体を募集」2014年11月25日付静岡新聞掲載記事(掲載許可を得ています)

■「 戦後女性運動たどるドキュメント映画」 2014年11月18日付愛媛新聞掲載記事(掲載許可番号:G20160201-01842)

映画チラシ

何を恐れるチラシタイプ2表名前入り  何を恐れるチラシタイプ2裏面2C

 (文責・構成:宮本明子、川口恵子)

カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 『何を恐れる』完成記念キャンペーン

タグ:女性運動 / 女性監督 / 松本侑壬子 / 女と映画 / 邦画 / 松井久子