2011.05.14 Sat
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上野千鶴子さんは明言する。
男女共同参画社会の実現と履き違え、「男なみ」を目標に掲げ、女性は兵士になることも選択し、国家暴力の加害者となった。社会は、ジェンダー平等の罠にはまっている。
フェミニズムとは、女にも力がある、女も戦争に参加できる、と主張する思想のことだろうか。もし、フェミニズムが、女も男なみに強者になれる、という思想のことだとしたら、そんなものには興味はない。わたしの考えるフェミニズムは、弱者が弱者のままで、尊重され、生き延びるための思想だと。
いかにかっこよく死ぬか、惨めに生き恥をさらさないことを勲章と思い込み、お国のため、自らの命を犠牲にしてまで、権力や名誉の名のもと、男らしさに必死にすがって死を選ぶ思想とは真逆の、弱者が弱者のままで尊重され、強者にも抑圧者にもならずに、女性、高齢者、障害者たちが生き延びるための思想が、ここに書かれている。「逃げよ、生き延びよ。命よりも尊い価値など、ない」と。
あとがきにつけられたタイトル―「祈り」にかえて―は、上野さんが、無力に「祈る」ことを選ばないため、フェミニズムを選んだ、と言っている。本書は、「祈り」のぎりぎりまで傍まで行って、その手前でとどまろうとした者の思想である。
この世で人間が引き起こした問題なら、人間が解決できるはずである。「祈り」に代わるものを、わたしたちは紡ぎだすことができるだろうか。
堀 紀美子
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