
セクシュアリティをことばにする 上野千鶴子対談集
上野千鶴子著
青土社 発行
2015年4月発行
「まず第一に、セクシュアリティを語ることは研究者にとってはタブーでした。女にとってはことさらそうでしたし、男性にとっても好事家、というか「お好きなんですね」ということになっていました。第二に、女が語るための言語さえなかった。セクシュアリティを語る用語は、どれも男目線のジェンダーまみれだったからです。第三に、女が語れば告白か体験記となり、ポルノグラフィとして男性に消費されてしまうようなものだったことです。だから、告白でも体験記でもなく、研究対象をしてセクシュアリティを主題化したこと自体が確かに新しかったと言えます。」(本文p.157)
上野さんがことばにしたセクシュアリティを、同時代に生き、読むことができたことは、回心と言える。その読み物を読んだ後はもう、読む前の自分には戻れないと知る。読まなければ、知らなければよかったと、後悔するかもしれない。耳をふさぎ、目を閉じ、自らを偽る作業を無意識に延々とし続けながら、社会に適応していくことを選ぶかもしれない。そのどちらでもなければ、からくりを知り、「女」を知り、ことばにできなかった怒りややるせなさから、一気に解き放たれ、一瞬空っぽになる感覚に浸ることができる。タブーであるにはタブーであることの意図を包含している。知られては困ること。ゆえに語られることはタブーなのだ。誰が?だれに?
まさに、上野さんがわたしたちに贈ってくれた数々のセクシュアリティを語った読み物を、再度紐解いていこうと思う。知る知がわたしをつくっている。ことばがわたしを生かしている。
■ 堀 紀美子 ■
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