1996年にスタートしたあいち国際女性映画祭は、現在、日本で唯一の国際女性映画祭である。2016年は9月7日から11日まで開催し、長編23作品および短編11作品が上映された。今年のテーマは「華やかさ」。
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『火 Hee』©吉本興業/チームオクヤマ
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『フクシマ・モナムール』
オープニング作品は、桃井かおり監督作品『火Hee』。かつて放火をした女が精神科医に独白する意欲作。桃井さんは、脚本・監督・主演を務めた。アメリカに在住し色々な国の監督などと出会い、世界を広げている。野上照代さん(あいち国際女性映画祭運営委員)とのトークでは貴重な話が聴けた。『火Hee』はロサンゼルスの桃井さんの自宅で10日間で撮影したという。彼女ならではのこだわりの作品になっている。ドイツのドリエ・デリエ監督作品『フクシマ・モナムール』にも桃井さんが出演している。心が傷ついたマリーは、福島の被災者支援の活動をして、仮設住宅に住むサトミに出会う。二人の心はつながる。
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『Daughter』
パキスタンのアフィア・ナサニエル監督作品『Daughter』は実話を基に作られた作品。山間部の部族との和平のため10歳の娘を結婚させられることになり、母親は娘と逃亡する。パキスタンの歴史、文化、喜び、悲しみが描かれている。
『Start Line スタートライン』
『Start Line スタートライン』は今村彩子監督作品のロードムービー。母の死をきっかけに、沖縄から北海道まで自転車で縦断する。彼女は耳が聴こえない。この旅のテーマは「コミュニケーション」。自転車伴走者兼カメラマンの哲さんに何度も叱責され涙する。ラスト6日間に奇跡のような出逢いがあるが、それも更なる悩みとなる。そして、彼女はようやくスタートラインにたった。
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『わたし、ニューヨーク育ち』
マレーシアのジェス・チョン監督作品『わたし、ニューヨーク育ち』は、12歳のサラが、母親の仕事の都合でマレーシアの祖父に預けられ、伝統や文化に戸惑い、わがままを言いながらも、しだいに打ち解けていく。
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『厨房男子』©厨房男子を作る会
『厨房男子』は高野史枝監督のドキュメンタリー作品。料理を楽しむ男たちが、フレンチ、和食、カレー、酒の肴、パン、コロッケなど家族や友人、自分のためにつくる。本当においしそうだ。自分もまわりも幸せな笑顔になる。
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『わたしはマララ』©2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
その他、フィリピン『アニタのラスト・チャチャ』、イタリア『私と彼女』、日本『カリーニョ!南米に恋して~私の幸せ探しの旅~』などが上映された。
また、国連広報センター連携企画として映画『わたしはマララ』上映と「イスラムにおける女性たちについて、知ろう、考えよう」をテーマとしたゲストスピーチと現状リポートがあった。
長編および短編フィルム・コンペティションでは、長編グランプリは久保田桂子監督作品『海へ 朴さんの手紙』、短編グランプリは野本梢監督作品『私は渦の底から』が選ばれた。
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『海へ 朴さんの手紙』
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『私は渦の底から』
クロージング作品は吉永小百合さん主演の『母と暮せば』。吉永さんのトークがありチケットはすぐに完売!彼女は映画に対する情熱を持ち続け、いつまでも輝く映画スターだ。(山田祥子)
※あいち国際女性映画祭2016の公式ウエブサイトはこちら
※スライドショーの写真は筆者撮影。紹介作品のスチル写真については、あいち国際女性映画祭事務局よりご提供いただきました。