加藤周一 青春と戦争『青春ノート』を読む

著者:渡辺 考

論創社( 2018-12-14 )

2008年12月、加藤周一さん逝去。享年八十九。
「そして、2018年―番組に関心を持たれた論創社の志賀信夫さんの尽力で
本書が出版されることになりました。
奇しくも加藤さんの死から10年、そして1968年の変革から半世紀、
さらに言えば、明治維新から150年という節目を迎えています。
晩年、加藤さんが憂えていた日本の閉塞状況は変わることなく、
というより政治の閉塞は深刻化しメディアへの規制は強まりつつあります。
加藤さんの透徹した目は、世界史の大きな潮流の中で今日の課題を剔出してみせます。
その犀利な分析力に私はいつも驚かされてきました。」
(あとがきp.236)

  本書には、2016年8月にNHKで放送された「加藤周一 その青春と戦争」
という番組作りを通して見えてきた加藤周一さんの青春像が描かれている。
加藤周一さんが残した8冊のノートは、1937年(18歳)から1942年(22歳)に綴られていた。
これらを『青春ノート』と名づけたのは、著者の渡辺さんと鷲巣さんで、
このノートは、加藤さんの身内にその存在を明かすことなく、
特別なものとして保存されていたものだという。
加藤さんの著書「羊の歌」が10代のときの愛読書だったという上野さんは、
「行動する加藤への思い」に寄せて、こう語っている。
「びっくりでしたね。積極的に座談・講演・集会などへ参加しているのを知り、
まさか、という気持ちでした。常に超然としているのが
加藤さんのスタンスと思い込んでいたので」
(本文p.209)
2000年代、突如として「九条の会」の発起人として加藤さんが行動を起こしたことに、
上野さんは烈しい衝撃を受けたという。

戦争のない平成が終わろうとしている。
現代を生きるわたしたちが、これまでの時代を引き継ぎ、
次の時代になにを活かしどう創造していくのかを考え、行動する。
「誤った道をふたたび歩んではいけない。」(本文p.213)
ひとり一人が言葉を受け止め、大切にするべきものを心ふかく刻んでいくとき、
わたしたちは未来を守ることができるのだろう。

■ 堀 紀美子 ■

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渡辺考 鷲巣力著
「加藤周一青春と戦争『青春ノート』を読む」
(論創社 2018年12月発行)
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