「母を語る」は、『ラジオ深夜便』というNHKのラジオ番組のなかで、
アンカーを務める遠藤ふき子さんが、
1995年にはじめたインタビュー・シリーズである。
この第二集には、10名の方の母の姿が語られている。
「『母を語る』にだけは出たくない」と思っていたという上野さん。
「プライベートにかかわることはお受けしない」と、
出演の依頼を二度断っていたそうだ。
「両親の夫婦仲が悪く、母と娘の関係が良くなかった」と、
遠藤さんに引き出され、このとき語られた上野さんの本当の気持ちが、
ラジオを聴く人の心に、じわりじわりと届いていったと感じる。
『「お母さん、あなたの失敗は夫選びが原因じゃない。
夫を取り替えても、あなたの人生の不幸は変わらないよ」と。
つまり、夫の人柄がよかろうが悪かろうが、
経済力のない妻は、結婚制度の中では、夫の顔色を見ないでは過ごせない。
考えてみれば、父だって特別に悪人だったわけではなく、単に小心者だっただけです。
父も母も、ごく平均的な日本人でした。そういうごく普通の人たちも、
結婚制度という仕組みに“はまって”しまったら、不幸になる。
これはもう人柄の問題ではなく、組み合わせの問題でもなく、
世の中の仕組みの問題だと思いました。
そう思ったことが、後に私が女性学の道で
研究者になる素地になっていると思います。』(本文p.116-117)
上野さん自身の言葉で、研究の出発点となる生い立ちが語られている希少な本。
「遠藤さんに口説かれて、まんまといろいろなことをしゃべってしまいました。」(本文p.125)
これは、必見です。
■ 堀 紀美子 ■

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『ラジオ深夜便 母を語る 第二集』
上野千鶴子 他
財)NHKサービスセンター(平成22年7月発行)
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