<初日、交流会の後に皆さんと>

今年8回目となる「シニア女性映画祭」へ、4年ぶりに参加することができました(祝)!

今回の映画祭のテーマは、「死んどるひまはない」。初日のオープニングを飾ったドキュメンタリー映画『死んどるヒマはない-益永スミコ86歳』からとった言葉です。上映は、2日間で5作品。すべてトーク付きという贅沢な内容で、楽しく、忘れがたい映画体験ができました。

2012年にスタートした本映画祭のきっかけは、メディアに流れる「女は若いほど良い」といった古い価値観や、シニア女性を不可視化しようとする日本の社会に対する、抵抗の手段を考えたことなのだとか。詳細は、本映画祭の主催者である三木草子さんが、東海ジェンダー研究所のニューズレター『LIBRA No.65』に寄せられたエッセイ「高齢女性を主役にするシニア女性映画祭」で語られています。そちらをぜひ、お読みいただければ幸いです。

<三木草子さんからの、オープニングのご挨拶>

オープニング作品『死んどるヒマはない-益永スミコ86歳』(松原明・佐々木有美監督)は、とにかく型破りなスミコさんの生き方に触れ、とても元気をもらえる作品でした。スミコさんは1923年、大分県生まれ。80歳を過ぎてなお、連日ひとりで駅前に立ち、憲法9条の存在意義をうったえ続ける姿と行動力に心を打たれました。47歳のとき、助産師として働いていた病院で67人もの女性を集め、医療現場では初となる女性だけの組合を作ったり、その後、死刑囚の養母となり死刑廃止の問題に関わったりといった、彼女のフットワークの軽さにもビックリ!戦中の自分は考えることを放棄していたと語るスミコさんの、「わたしはもう、誰にも従いたくない。従うということは、考えることをやめることだから」という言葉、つくづく名言だと思いました。

<「死んどるヒマはない」ゲストトーク会場風景>

午後のアニメーション映画『浜辺のルイーズ』(日本初上映!原題『Louise en hiver』/英題 『Louise by the Shore』)は、フランスのアニメーション作家、ジャン・フランソワ・ラギオニィ監督が、初めて高齢の女性を主人公に描いたという作品です。年を重ねていくことで誰もが向き合う不自由さと、手に入れる自由について。人生で体験してきたことのすべてが、意味を持ってその人を支えるということ。――年を重ねることの豊かさがやさしく、ときにシュールに、ユーモアをもって描かれていて、個人的に大好きな作品になりました。

<『浜辺のルイーズ』ゲストトーク、西岡恒男さん>

初日の上映会の後には交流会。この映画祭への参加の動機や作品の感想などを紹介したあと、「シニア、って言葉をつけるのはどうなの?」「存在を可視化し、シニアの意味を変えていきたい」「シニアとか高齢者じゃなくて、老女って言うのもあり」「大老女とかね」など、とても楽しい議論が交わされました。


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2日目の午前中は、2本のドキュメンタリー映画。泉悦子監督の『ニューヨークで暮らしています-彼女たちがここにいる理由』とエンドウノリコ監督の『60代から輝いて生きる』。つねづね思うことですが、何かを始めるのに性別や年齢は関係ありません。自分の生き方を自分で決めている人たちの姿に、自分もエンパワーされていくようでした。

<作品についてお客様とお話しされる泉悦子監督>

<エンドウノリコ監督と映画に出演された方々>


午後からの『勇気ある外交官ディアナ・アプカー』(こちらも日本初上映!原題『The Stateless Diplomat』)は、日本で暮らしたアルメニア人のディアナ・アプカー(1859-1937)が、オスマントルコによるアルメニア人大虐殺を知ったあと、同胞を救うために果敢に日本政府と交渉していった姿を描いたドキュメンタリー映画です。彼女の曾孫であるミミ・マラヤン監督が7年をかけて製作されたもので、墨で描かれたアニメーションは、歴史の悲しい側面を切り取りながら必見の美しさでした。この映画祭自体、アルメニアとのご縁が続いているのだそうです。そういった国を超えたシスターフッドやつながりが築かれていくことも、継続的に開催される映画祭ならではと思った次第です。

<「勇気ある外交官ディアナ・アプカー」上映後のゲストトーク。ホワニシャン・アストギクさんと山上千恵子さん>


「来年もまた映画祭が開催されるかどうかは、わたしたちが元気で生きていられるかどうかにかかっています!」というユーモアたっぷりの挨拶で締めくくられた映画祭。来年もぜひ、開催されますように。そして来年も、皆さまにお目にかかれることを祈っています。本映画祭を主催された「波をつくる女たち シスターウェイヴス」公式サイトはこちら。(中村奈津子)

※掲載したお写真はすべて、「波をつくる女たち シスターウェイヴス」よりご提供いただきました。撮影をご担当された岡橋時子さま、メールでやり取りをしていただいた正木美津子さま、映画祭の運営に関わられた皆さまにお礼申し上げます。ありがとうございました。