前回ロックダウンのご報告をしてからほぼ半年が経ちました。折よく仕事が忙しかったこともあり、あっという間に駆け抜けた感じでしたが、ロックダウンが「終わるであろう」春を楽しみに楽しみに頑張ってきたにもかかわらず、ふと気がつくと事態はますます悪くなっていたという。さらに政府が「ロックダウンを検討中」というニュースを聞くたびに「あれ、今ロックダウン中じゃなかったの?」みたいな感じです(以前はコロナ関係も他と同様州政府に権限があったのですが、このほど連邦政府の管轄となりました)。厳しくなったり緩んだり、コロコロ変わるので細かい規制にもなかなかついて行けていません。さらに、第3波は基本「別の新たなパンデミック」などと聞かされるともう……ここまで頑張ってきて「振り出しに戻る」じゃあ、もはや良心の市民のやる気もなくなります。

先月末から今月初め、イースター休暇も近づく頃、ドイツはとても春らしい気候に恵まれました。長い冬が終わりを告げて急に春めくこの時期は、ドイツ人が太陽を求めてこぞって外に出たがる時。まるでパンデミック中であるのが嘘のように、市街や公園に人が溢れました。我が家の次男も、友人3人と久しぶりに外出(計4家族の会合になるので、たぶんコロナルール違反)。ケンタッキーでバケツチャレンジ、と、1人1つずつフライドチキンバーレルをテイクアウトし(飲食店はテイクアウトのみ営業可)、案の定食べきれず家へ持ち帰ってきました。そんなアホな高校男児の試みも微笑ましく思えるほど、全体が意気揚々とした気分で満ち溢れていました。警官にも遭遇したようですが、取り締まりも特になかったよう。ドイツでも相変わらず陰謀論者やコロナ対策反対派のデモはありますが、長い冬のあと、ただ日差しを楽しみたいという市民を、警察も取り締まる気になれなかったのでしょう。

日差しといえば、1つ思い出があります。まだ自由に移動のできた遠い昔、仕事でフランクフルトを訪れた際にいつもお邪魔する日本人経営の居酒屋さんがありました。カウンターでマスターに話し相手になってもらいながら一人飲んでいると、1つ2つ開けたところに、若くて綺麗な日本人のお姉さんが席を取りました。ちょうどこんな、初めて春の日差しが訪れたような、3月末の日だったと記憶しています。

在住の方かな、と一瞬思いました。が、開口一番の一言で、日本から一時的に渡独されている方だとわかりました。「まったく嫌んなっちゃう、突然こんな日差しで……。日焼け止め持ってないし!」と。こんな春先の日は、こちらに住んでいる人間は皆わざわざ紫外線にあたりに行く感じです。自分もすっかり、外国生活が長くなってしまったなあ、と思った瞬間でした。

もう1つ最近の変化。近所のスーパーが「ショッピングワゴン必須」になったこと。これはショッピングマイバッグ持参と深い関連があります。

日本でもレジ袋が有料になり、個人的にはいい動きだと思っています。しかしながら、25年近く前にドイツを初めて訪れた際にレジ袋の料金を請求されたときの憤りも覚えていますし、万引きが増えた、などの問題点もわかります。ドイツでは長いことマイバック持参が基本です。お店のカゴやカートではなく、マイバックに購入するものを次々と入れていくのも比較的普通で、見落としてうっかりレジに出し忘れて結果「万引き」が起こってしまうこともあるでしょう。しかし、このパンデミックの最中、ただでさえソーシャルディスタンシングまるで無視のドイツ住民(11月のエッセイ参照)が、狭い店内で全員ショッピングワゴン使用となると……正直もうカオスです。対人距離まるでなし、というか人と何回もぶつかる始末。私がここに越してきた頃、そのスーパーには手提げカゴが置いてあったのですが(今でも大手スーパーにはあります)、ほんと、どうせならそれ復活してほしいです。

日本でもエコバッグ・マイバッグ使用が増えたようですが、ただ、お客様のマイバッグを汚さないために、店員さんがあの薄めの内袋ビニールを以前より大量に使うようになったとか。これでは環境にいいんだか悪いんだかわかりません。そもそも日本は、何か新しい流れが起きると、すぐにそのためのガジェットや便利グッズが登場する。1年前にはほとんどの人が知らなかったZOOM用の便利グッズなどが瞬く間に出てきたのがいい例でしょう。ショッピングバックも、おしゃれなものが次々と登場しているようです。でも、そのバックを汚さないためにビニールを多用するんじゃ、本末転倒のような気がします。こちらのショッピングバックは、シンプルな布地を縫い合わせた、なんの変哲もないもの。強いていえば、昔お母さんが作ってくれていた巾着袋みたいな? 肉や野菜のシミがついても丸洗いできます。あるいは、リサイクル素材で作った丈夫なプラスチックの袋など。

日本のガジェット文化は素晴らしいと思いますが、たまにはシンプルになってもいいかも、と思ったりします。