2021年夏、Chatterbox実行委員会は展覧会「ChatterboxⅡ-交錯する4人の場面-」を開催致しました。

 Chatterbox展は、毎年異なる組み合わせの4人の女性作家の個展を座談会によって緩やかに繋ぐ展覧会として2020年に始まりました。展覧会の事前に行われる座談会では、各々が体験した美術教育と時代、ジェンダー、制作や発表などについて率直な言葉で語られます。そしてその記録冊子を作成し、展覧会会期中に会場にて配布します。2回目となる本年、この冊子はWAN基金から助成を受けることとなりましたので、冊子についてご報告申し上げます。なお、展覧会についてはWANサイト内にてイベントの告知をして頂きましたので、そちらをご参照ください。

座談会記録冊子「ChatterboxⅡ-交錯する4人の場面-」

座談会はメンバーの一人の自宅にて非公開で行われました。幅広い年代の女性作家がひざを突き合わせて語り合う場には緊張感が漂うものの、会話が進むにつれて熱気が帯びて深まっていくのが感じられました。

5時間に及ぶ座談ではありましたが、メンバーによる文字起こしと編集・校正を経て12頁の小冊子にまとまりました。各頁には脚注を入れ、本文中に見られる美術の専門用語や各時代特有の用語、そしてフェミニズムに関する用語を解説しました。美術関係者であるなしに関わらず、幅広い年代の読者が得られる内容になったことと思います。

感想としては60代女性から「美術の世界に男女の格差はないものと思っていた」、50代男性から「同じ時代を、女性たちが全く違う形で捉えていたことが衝撃的だった」、40代女性から「個人的な経験が、既存の価値観に依らないそれぞれの視点と言葉で語られている」などの声が寄せられました。また、美術作家で美術評論家でもある石村実氏がこの冊子についてご自身のブログに記して下さいました。内容はアレクシエーヴィッチの『戦争は女の顔をしていない』と合わせたものではありますが、冊子からの引用も多くありますのでご参照頂けましたら幸いです。

展覧会来場者には、昨年の展覧会のリピーターも多く、展覧会への来場が叶わないものの冊子を得たいという内容の問い合わせも増えています。冊子は現在、国立国会図書館と東京都現代美術館美術図書室に収蔵されていますが、随時美術館図書室や美術大学図書館に所蔵される予定です。
市場主義に偏り、自由な表現を追求する美術作家に焦点が当たりにくい日本の昨今の美術界において、美術作家が援助を受けることは容易ではありません。そんな中で、私どもの活動にご理解いただき、WAN基金の助成を受けることが出来たことは大きな励みとなりました。心よりお礼申し上げます。