こころ
相談13 ヘルパーの仕事で来ているのに性的関係を求める相手にどう対応すればよいのか教えてください
2011.06.02 Thu
私は、支援費制度の障害者介助のヘルパーの仕事をしている23才の女性です。仕事は好きなのですが、利用者さんから愛の告白を受けたり性的関係を求められることがあり、困っています。もちろん、自分はヘルパーという仕事で来ているのだから応じられないということをはっきりと伝えるのですが、「障害者だから断るのだろう」と言われることが少なくありません。
先日も、進行性の筋萎縮症の40前の男性から自分に障害がなければつきあってくれるのかと言われて(すでにことばが出なくなっているので、パソコンでの会話)、そうではないといくら説明しても、私にはボーイフレンドがいるのでどんな人ともつきあいたい気持ちが一切ないことを伝えてもしつこくからまれました。
そのことを事務所に伝えて交代を求めたのですが、利用者さんは女性のヘルパーを希望しており、この病気の人は長くは生きられないのでなんとか行ってあげて欲しいと言われました。
友達に相談すると、「その性格が嫌なんや!ときっぱりと言ってやったら」と言われます。その通りなのですが、しかし、この病気の人は短命で、この方はこの病気にしては長生きされているほうなのでいつ亡くなられてもおかしくありません。そう思うと実際にはとても言えない、というのもまた現実です。相手を傷つけることも怖いですし、自分が後悔するかもしれないことへの怖れもあります。
相手も自分も傷つけず、相手からも傷つけられずに介護の役割を果たすことができればよいのですが、そのためのアドバイスをお願いいたします。
回答
相談13 回答
私はあなたのリアルな現場(そこで起きている対人模様)を知りませんから、どうしても理想論になることをお含みおきください。
これまでの私の経験から、充分にわかっていない場合、助言(とくに具体的言葉や行動)があまり役に立たないことはわかっているからです。
申し添えますが、あなたのお書きになったことがわかりにくいということではありません。
そこで、以下のことを考えてみていただけますか。
①私たちは、障害者であろうとなかろうと、基本的にその人を尊重したいし、またしている(つもりである)ことを自分で確認する。援助者が「強者」で、被援助者が「弱者」なわけもありませんから。ただ、「弱者」が時として、立場を利用した「強者」になる現実も散見されるのは事実です。「強者」が立場を利用してさらなる「強者」になることも事実ですが。
また、障害者だから言いたいことが言えない的な対応は、けっしてその人を尊重することにはなりません。不正直と誠実は基本的に相容れません。
②確認できたら、誰であろうと、どのような場合であろうと、「セクハラ」は、容認できない、という立場を明確にする。曖昧な立場はかえってよくないと思います。
あなたはいかが? 二重メッセージになっていませんか。誘いを断りたくてはっきりとことばで「ノー」と言っていても、罪悪感をもって言っていると相手に「イエス」のメッセージとして受け取られしまうことがある、ということです。
③「相手も自分も傷つけず」というのはよい関係の目標のように思われていますが、状況によっては、ムリな場合があると思います。
④そこで、たとえばですが、「こうやって、私はあなたを援助していますが、障害をお持ち だからといってあなたの人間性を軽んじたことはないつもりです。いい援助関係を保つためには、相互の尊敬が必要で、お誘いをお受けするつもりはありません。お話しているように、私の事情(恋人が居るトカ)もぜひ尊重していただくとうれしいです」と言ってみます。リアルな現場に応じて、ですが。
回答者プロフィール
河野貴代美
アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。