お助け情報

お助けWANは、女性のこころと健康、仕事、法律の相談室です。このコーナーの担当者・回答者はいずれも、女性の心と健康、仕事など、暮らしに寄り添ってきた専門家です。どうぞ、安心してご相談ください。一人の悩みは、同じ悩みを抱える女性たちへとつながります。

法律

相談62: 離婚について

2020.02.21 Fri

28歳で結婚し現在65歳、自宅で私一人で自営業を営んでいます。約6年前に夫が倒れ入院、一命をとりとめ退院後在宅介護5年目に入りました。身体障碍者一級、要介護5です。夫の介護費用は主に夫の年金から、それ以外は私の収入で生活しています。子どもたちはすでに家を出ており、夫を施設に入れて私は自分の身体と生活を守るべきと強く言われてきました。病気発症以前から考え方の違いその他から離婚を話し合ったことは何度もありましたが、離婚に至らず。私としては目の前の弱者に対してできるだけのことをする、という意識で介護行為をしています。医師、看護師、理学療法士、介護士、多くのプロの手を借りながら、私は仕事を続けることができています。身体麻痺だけでなく高次脳機能障害による問題行動もあり、次第に私自身が在宅介護を続けられなくなるかもしれないという健康面での不安が増してきました。夫は病気であること(多分本来の性格も起因しているかも)から、何かと私を頼っています。独立したそれぞれが生活を共にする関係を今更築けなくなっており、そこを解決するのは、離婚ではないかと私は考えています。それでも同じ家(共有名義のマンション一室)に住んでいると離婚という形をとっても、法律的には内縁関係となり変化がないのでしょうか。同じ家に世帯主が二人ということで、納める税金その他もそれぞれの負担が重くなるのは、しかたないと考えますがどの程度かはまだ調べていません。これまで介護に関する書類に、代理(関係妻)と書いていた部分は、関係性が変わると代理人にできないということも出てくるのでしょうか。現在は月に1泊程度のショートステイから、月の半分を施設に宿泊するなど、本人に納得してもらうためにも、夫婦であるから頼って当然という認識を取り払うところから始め、夫婦であってもなくても生まれる時も逝く時も人間は一人なのだというところを理解してもらうところから始めたいと考えた次第です。自分の考え、行動が特異なのか、誤りなのか、どうしたらいのかわからなくなってきて相談しました。文章もうまく整理できず申し訳ありません。                         
                                (千葉県・65歳)

回答

回答62: 小島妙子さん(弁護士)

 あなたのご質問をまとめてみると,「離婚したいと思っていた夫が倒れ,在宅介護5年目に入ったが,自分自身の健康面に不安があり,在宅介護が難しくなっている。夫は夫婦だから頼って当然という気持ちでおり,施設介護への話が進まない。夫の認識を変えてもらうために離婚を考えているが,離婚すると法律関係はどう変わるのか。離婚後も同じ家に住んでいれば,内縁関係となり,法律関係は変わらないのか」ということでしょうか。
離婚後に相手(前夫)が死亡すると,相手名義の財産を相続することはできません。あなたの場合,共有名義の家(マンション)について,夫の持分についてあなたが持っている「配偶者相続権」を失います。たとえ離婚後に同じ家に住んでいても,同様です。また,夫が厚生年金を受給している場合,離婚後に夫が死亡した場合,遺族厚生年金は受給できません。離婚により,配偶者という地位に与えられる「特典」がなくなります。
 介護関係の書類(「介護保険サービス契約」)の「署名代行者」については,事業者の判断次第ですが,離婚すると,子などの親族への変更を求められる可能性があります。
 ちなみに,離婚するには夫の同意が必要であり(協議離婚),相手が離婚に応じない場合には裁判離婚しかありませんが,この場合,一定の「離婚原因」が必要です(民法770条1項各号)。あなたの場合,夫は身体障害者1級,要介護5なので,今後の療養,生活等について見込みがついていないと,離婚が認められない可能性があります。
夫の認識を変えるためであれば,「離婚」ではなく,夫と距離をとる他の方法,たとえば,ひとまず「別居」するなどした上で,あなたの気持ちを伝えるというのはどうでしょうか。

回答者プロフィール

小島妙子

ジェンダー法学に詳しく著作も多いすぐれた理論家であると同時に、セクハラ・DV、不当解雇、離婚、財産分与等々、幅広く訴訟を扱う頼りになる実務家。事務所にはほか2名の女性弁護士がおり、女性からの相談の受付体制は万全です。

タグ:DV・性暴力・ハラスメント / 非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / 女性政策 / 高齢社会 / 小島妙子