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  • 博士論文データベースを通して見る女性学/ジェンダー研究の40年

    2019/01/01

    • リサーチ

    著者名:内藤 和美

    コメンテーター:原ひろ子(はら ひろこ)

    博士論文データベースを通して見る女性学/ジェンダー研究の40年

    博士論文データベースを通して見る女性学/ジェンダー研究の40年
                                 内藤 和美
    1. はじめに
    女性学・ジェンダー研究(以下、WS/GSとする)の知を集積して活用に供する資源に1つを加えることを目的に、また、そこに日本のWS/GSのアイデンティティが蓄積されていくようにとの意をも含んで構築し、2012年8月の公開を経て個人で管理運営してきた「女性学/ジェンダー研究博士論文データベース」(以下、WSGSDDBとする)は、2017年9月に、認定特定非営利活動法人ウィメンズ アクション ネットワークWomen's Action Network(以下、WANとする)に移管された。
    本稿では、823本(2018年7月末現在)のWSGSDDB登録論文の情報を切り口に、日本のWS/GSの40年間の蓄積を示すとともに、WAN移管によってて共同化・公共化が進んだことによるデータベースの今後の活用可能性の拡大について記したい。

    2. WSGSDDB構築の背景と経緯
    WSGWDDBを構築したことの背景となったことが2つある。
    1つは、日本のWS/GSの発展経緯に由来する強みとやや不利な面についての認識である。〈日本では1970年代後半に始動した女性学、そこから展開し、1980年代後半に研究が本格化したジェンダー研究は、学問領域、学部・学科等、輪郭づけられたDisciplineを形成するというより、あらゆる学問に視点・課題認識を持ち込む形で発展してきた。そうした発展のしかたは、既存の知への批判的立ち位置の保持、DisciplineよりIssueまたは目的志向の超領域性といった強みを形づくる一方、既存の学問に比べて、知の集約・集積、ポストの獲得、担い手育成等の面で不利な面があった〉という認識である(内藤2014:147)。
    なお、従来、WS/GS特徴として、しばしば「学際性」という語が用いられてきた。しかし、90年代後半来「複数の学問体系が共同で研究を行う」「多学問領域性」(multi-disciplinary)、「複数の学問体系の相互作用により、新たな知」を創成する「学際性」(inter-disciplinary)、「複数の学問体系に及ぶ新しい専門分野が生成する」「領域横断性」(cross-disciplinary)および「諸学問の知見を相互にかつ自由に節合し学問自体の創造をはかる」「超領域」または「超学問領域」性(trans-disciplinary)が使い分けられるようになってきた(赤司1996、池田1997、大場1999:183)。これに即すと、WS/GSが志向してきたのは、「特定の研究テーマに即して下位領域の知見が高い 自由度をもって動員され、既存の学問領域の垣根を取り払うことが前提とされ」、「研究テーマに即して学問が新たに編制される」(大場)「超領域性」であると解される。そこで、本稿では「超領域性」を用いることとする。
     2007~2009年ころ、日本の女性学の立ち上げと発展に大きな役割を果たし
    てきた、いわゆる女性学4団体(国際ジェンダー学会、日本女性学会、日本
    女性学研究会、女性学研究会)が相次いで発足30年を迎えた。30周年を記念
    して、シンポジウムの開催、雑誌の特集、本の出版等の取り組みがあった
    (表1)。これが2つ目の背景である。30年を振り返り、できごとや活動や数
    字が跡付けられ、記述され、課題や展望が議論された。
    これらイベントや出版に関わり・接する中で、30年間に創出され蓄積され
    た日本のWS/GSの知の実質・アイデンティティはどのようなものなのだろうか?と考えるようになった。課題認識、分析や理論化のパラダイムといった“製造装置”ではなく生み出された知、そして、個々の研究の成果というより、集積され、相互に作用し合って日本のWS/GSの知を成す中身である。多くの場合、個々の研究がそれを名乗って行われるわけではないが、視点、立脚点を異にする女性学とジェンダー研究の知の違いも気になっていた。こうしたことをどうしたら探究できるかを考えた末、WS/GSとしての内容をもつ博士論文を集めてみようと思った。「博士論文は、審査と学位授与によって研究の独創性と知見の新規性が認められており」、そこにWS/GSの知の生産過程と生産物の実が表わされていると考えたからである。
    しかし、該当論文を把握し、収集することは容易でなかった。特定の学位種別で把握・収集しきれないことは明らかである。博士(女性学)や博士(ジェンダー学/研究)がないのはもちろん、学位種別は、しばしば論文提出先の研究科に規定され、把握の手がかりにはならない。敏感度と特異度がともに高いキーワードを探すことを中心に、試行錯誤を経て、収集対象論文と検索キーワードを次のように設定した。

    【収集対象論文】
    ①国内大学で博士の学位を授与され、国立国会図書館博士論文書誌データベース(以下、CiNii Dissertationsとする)に登録されている、または、海外大学で博士の学位を授与され、国内で著書や論文として公刊されており、
    ②要旨の閲覧等により、性差別の撤廃・ジェンダーバイアス解消の課題認識を含むことが確認される論文(内藤2014:149)。

    「性差別の撤廃・ジェンダーバイアス解消の課題認識を含む」とは、以下のような要素を含む認識とした。
    ・性別は本来多様だが、社会的には、女性/男性の2カテゴリーが設定されている
    ・社会資源=社会的力の、男性カテゴリーへの偏在を結果する、性別分業の慣習・通念をはじめとする社会的文化的構造がある
    ・個々人は、こうした社会構造の中に置かれ、その影響を受ける
    ・社会的に、人生が性別に左右される・性別の影響を受ける状態は、人生が人種に左右されてはならないのと同様、人権の観点から不合理である
    ・こうした社会構造を変革し、性別がどうであれ、個々人がその人として能力の開発発揮機会を得、行動を選択し、その人として生きて行ける社会を志向する。

    【検索キーワード】
     公開当初、もちろんこれらに限られないが、相対的に敏感度と特異度がともに高いキーワードとして以下を設定した(表2-1)。

    なお、その後経験を積み、また、2013年度の「学位規則」第8条・9条の改正によって、要旨や本文の確認が格段に容易になったことが転機となって(次項3.)(文部科学省2013)、徐々に検索語を拡げつつ、対象論文を探し当てられるようになった。現在は、以下を目安としている(表2-2)。

    3. 収集した博士論文情報のデータベース化
     〈論文情報が増えるに伴い、このまま抱え込んでいては所詮個人的資料を超えないが、データベース化して公開すれば、日本のWS/GSの公共資源として多くの人に活用してもらえる、やや不利な面があった知の集積蓄積を補う一つになるのではないかと考えるようになった。情報専門機関およびWS/GSの専門機関計3箇所に、収集した論文情報を提供するのでデータベース化し、公共利用に供してもらえないか相談したが叶わなかった。学術情報データベースは機
    関・組織が開設運営してこそ活用され得ると思ったからだ〉(内藤2014:146)。その目途が立たない中、約300論文の登録情報を整備した時点で、公共性拡大を爾後の課題としてデータベース構築を決断した。あらためて、WS/GSの知を集積して活用に供する資源に1つを加え、まとまった研究情報入手の一助となること(日本のWS/GSのアイデンティティの蓄積先の1つとなる)ことを意義・使命と認識し、2012年3月に343論文を初期データとするWSGSDDBの設計とWebサイト開設を業者委託し、検討・試行を経て、同8月1日にWeb上に公開した。
     データベース化にあたっては、どのような情報が研究者・学習者にとって有用かを考え、CiNii Dissertationsの書誌情報に加え、所蔵先リポジトリにおける各論文の本文/要旨の収録先頁URLと、論文が図書として出版されていたり一部が学術雑誌に掲載されている場合にはそれら公刊物の情報を収録することにした(表3)。
    翌2013年には「学位規則」(第8条・9条)が改正され、学位論文の要旨および全文の公表がそれまでの「印刷公表」から「インターネットの利用による公表」に変更された(文部科学省2013)。これにより、要旨、本文へのアクセス・確認が格段に容易になり、該当論文の把握・登録が加速した。

    4.WANへの移管によるデータベース管理運営の共同化~公共化
     当初より、公共の資源である博士論文情報のデータベースの運営を個人で行うことは、持続可能性・安定性、活用のリーチ、社会的信用等さまざまな面で限界があり、軌道に乗り次第、WSGSDDBの管理運営を私的活動から共同の活動に、多くの人によって維持され活用されるものへと転換していかねばという課題を負っていた。(独法)国立女性教育会館女性教育情報センターとWAN のウェブサイトにリンクを張ったのみの4年を経て、2016年、WAN にデータベースの移管を相談、WAN の意思決定過程、サーバー移動等の手続きを踏み、2017年9月に、735論文を以て移管が実現した。これにより、WSGSDDBは共同化~公共化へと大きく前進した。

    5.登録論文情報に見る日本のWS/GSの40年
    (1)登録論文の現況
    ①学位種別
    2018年7月末時点の登録論文823本の概要として、まず学位種別は「学
    術」が圧倒的に多く、ついで「文学」、「社会科学」、「社会学」といった分布になっている。
    「学術」の多さは、WS/GSの超領域性の表れと見ることができる。その一方、
    テーマや内容もさることながら、提出先研究科に規定されている面が大きい
    と思われる論文も少なくない(表4.)。
    ②学位授与機関
    学位授与機関の分布は表3の通りで、お茶の水女子大学が群を抜いている(表5.)。
    ③学位授与年
    学位授与年の分布は図1.の通りで、もっとも古い登録論文「女性の地位の規定要因
    についての研究」は1962年のものである。1995年度以降、WS/GSに当たる学位論文の産出が本格化したことことが伺え、2005年度以降は、ほぼ年間50本前後が新規に登録されてきている。2015年度以降の論文が少ないのは、各機関での、リポジトリへの学位論文の格納、国立国会図書館への報告、国立国会図書館での書誌情報の登録に時間がかかるからで、これから増えてくると考えられる(図1.)。

    (2)検索語に見る動向
     登録対象論文把握の手がかりは、基本的に検索語である。
    表6.は、把握の契機となった検索語である。823論文の半分近くが「女性」
    によって、約1/3が「ジェンダー」によって検索され、この2語が群を抜い
    ている(表6.)。「女性」および「ジェンダー」による初期および直近の論文
    標題を表7.,8.に示した(表7.,表8.)。
     図2.は、「女性」366論文と「ジェンダー」261論文の学位授与年の分布で
    ある。性別カテゴリー「女性」による博士論文は、1962年度を皮切りに1980
    年代から書かれている。「ジェンダー」による論文の登録は1995年に始ま
    り、2000年から増えている。この頃、ジェンダーが分析概念として普遍化、
    成熟したことが伺える(図2.)。
    表9.,10.は、検索語「女性」および「ジェンダー」による論文の学位種別
    の分布である。「女性」による論文の学位種別分布は登録論文全体と同様の傾向である一方、「ジェンダー」は、「文学」が最多で、全体および「女性」とは異なる傾向である(表9.,表10.)。
    初期から出現する「女性」や「家族」、1995年から出現する「ジェンダー」
    等に対し、2005年から検索されるようになり、以降数を増してきているのが「セクシュアル・マイノリティ」「LGBT」「ゲイ」「レズビアン」「同性愛」等SOGIの多様性に関する論文と、暴力に関する論文である。表11.,12.に、直近のSOGIの多様性に関する論文、および暴力に関する論文の標題を示す(表11.,12.)。
     なお、「男女共同参画」を冠する論文は、「男女」により検索された論文中3
    本である。「男女共同参画」は分析概念というより行政用語であることの証左
    と受け取れる。

    (3)博士(学術)申請論文に見る超領域性
     本稿冒頭に、日本のWS/GSが学問領域、学部・学科等、輪郭づけられたDisciplineを形成するというより、あらゆる学問に視点・課題認識を持ち込む形で発展してきたことが、既存の知への批判的立ち位置の保持、Issueまたは目的志向の超領域性といった強みを形づくってきた、という認識を記した。
    ここでは、既存の知の批判的超克や、超領域性がどのように結実しているのかを、事例を通じて見てみる。事例として、直近2017年(2016年度)に、学位種別名がそれを含意ないし示唆している「博士(学術)」を授与された論文の1つ、辻 京子「児童虐待問題への経済階層とジェンダーの視点からの研究」を取り上げる(辻2017)。
    ジェンダーを主な分析軸とした、社会学、社会福祉学、看護学、臨床心理学を跨ぐ研究である。児童相談所の虐待相談受理票の記載内容を入力して作成したデータセットの統計処理による「第一章 児童虐待と経済階層の関連―児童相談所の虐待相談受理データからの考察―」、児童相談所で虐待と判定された母子世帯の母親のインタビューによる「第二章 児童虐待リスクとしての母子家庭 ―社会的排除とジェンダーの視点から―」、保健師養成課程で使用されている教科書の児童虐待に関連する記載を分析した「第三章 保健師教育における児童虐待の分析 ―ジェンダーの視点から――」、母子保健活動で使用されている虐待リスクアセスメントの分析による「第四章 母子保健分野における児童虐待防止活動とリスクアセスメント」の4つの、多くのデータを用いた詳細な実証研究に基づく論文である。  
    論文は、〈現行の児童虐待防止対策には、「両親揃った中流階層の睦ましい子育て家族」を正当とする家族規範と、子育てを母親の役割とするジェンダー規範の影響を受けた認識が組み込まれている。児童福祉、医療,母子保健分野で,虐待防止のために用いられている『児童虐待リスクアセスメント』では,経済基盤の不安定,不就労,母子世帯など,社会政策上の課題が、個人が有するリスク要因として扱われているために、特定の社会的カテゴリーの人々が通告されやすく、虐待と判定されやすい。それらの人々にカウンセリングや心理療法、子どもの一時保護、養育者への指導が行われる。バイアスを含む認識に基づいて対策が構成されているために、困難の防止と解決支援を通じた社会的包摂を目指して講じられているはずの対策が、特定のカテゴリーの人々にスティグマを負わせ、社会的排除を生んでいる面がある〉ことを明らかにしている(辻2017:2-3,16-17,28,40,54,56)。
    こうした状況を改善していくために、まず、〈児童虐待防止対策の軸を、「危険な養育者の検出」から、社会保障による子育て支援を通じた子どもの貧困の防止/解消、経済的不安定や保育の不足の社会的解決へと転換していく必要がある〉ことを指摘する。
    そして、「家族の問題や弱み」のみに傾注するのはなく、「個々の家族の強み(ストレングス)」、資源、能力にも焦点を当てた総合的なアセスメントに基づき、養育者自身が解決への方途を導きだしていけるよう(対抗ストーリーの描出)、保健師等がサポートしていく、リフレクテイィブな相互作用、ナラティブ・アプローチを活かした支援支援方法が提案されている(辻2017:51-54,57-58)。
     輪郭付けられた分野・領域を超え、意識・行動・制度・慣習といった位相を貫く、分析概念「ジェンダー」の強みが十全に発揮された論文と考える。

    6.WSGSDDBの今後
    (1)活用可能性の拡大
    WANへの移管によって、WSGSDDBの活用可能性は大きく拡大した。それまでの単独サイトから、WANのサイト内に置かれたことによって、可視性、研究者のアクセスしやすさが向上し、利用の拡大が見込まれる。そして何より、WANの活動としてこれを活かしていくことが展望される。登録論文の紹介記事や評論記事のWANサイト掲載、データベース登録情報を用いたWANとしてのプロジェクト研究の実施、WANの他の活動とWSGSDDBを結びつけ・組み合わせた活用等が考えられる。

    (2)今後の課題
    一方、WAN移管後の管理運営上の課題も少なくない。
    ①論文の把握・情報収集方法の多元化
    まず、WS/GSの研究がますますあらゆる課題・領域へと浸透していくであろう今後、抜け落ちのない把握をめざしていくためには、論文の把握・情報収集方法の多元化をはかる必要がある。これまで、国立情報学研究所CiNii Dissertations、各大学の学術情報リポジトリ等、博士論文の書誌情報や本文・要旨が収録されたデータベースの検索語による探索を、対象論文把握の主な手がかりとしてきた。探索・把握作業を恒常的に行う中で、WS/GSの実質をもつ博士論文のあらゆる分野、課題への浸透・拡がりを実感している。使用する語を増やしたとしても、検索語に頼った探索・把握はもはや限界で、登録されるべき論文の見落としを防ぐために、学協会と連携した自己申告制の導入をはじめ、他の探索・把握方法の導入、併用に着手する必要がある。
    ②海外のWS/GS博士論文データベースの管理運営方法の調査・検討
     WSGSDDBの管理運営とくに対象論文の把握収集方法、登録基準の改善に役立てるため、海外の、WS/GS博士論文データベースを探索した。まず、日本では、国立国会図書館が〈前身の一つである帝国図書館に、文部省(当時)が保管していた博士論文が移管された1935年以来、1975年の報告方法の変更、2013年の公表方法の変更を経て今に至るまで、博士論文を網羅的に収集している〉(国立国会図書館)。それが、WSGSDDBの活動を可能にしている。〈こうした国立機関による網羅的収集・管理のしくみを採っている国は他にはなく、したがって、博士論文の収集・情報管理は一義的に機関ごとである。大学院のWS/GS系研究科や、大学のWS/GS研究所には、WS/GS主題の博士論文をまとめているところがある〉(国立国会図書館関西分館2018)。また、海外の博士論文に関する情報は、国立国会図書館「リサーチ・ナビ 海外博士論文(インターネット情報源)」に集約されている(国立国会図書館2018)。
    把握し得た限り、他国の、機関を越えたWS/GSに特化した学位論文データベースには、The National Institute for Health and Welfare, Finland(THL)が公開している、フィンランド国内で公表された、WS,GS, Men's StudiesおよびGender Equalityに関連するテーマの博士論文の情報を収録したデータベースThe Dissertation Databaseがある(THL)。これ以外には、Dissertation / Database / Gender Studiesによって、膨大な数の、大学の大学院WS/GS研究科のジェンダー研究専攻のWebサイトの、同研究科で学位を授与された論文の年次別一覧頁や(OSU,SFU,U-M,USF等)、各大学図書館の学術リポジトリ―の博士論文データベースに設定された、WS/GSのカテゴリーが検索される(UCLA, UM, CSU, SU, UW, UWO等)。これらのうち、たとえば、ワシントン大学(UW)図書館が、ジェンダー、女性およびセクシュアリティ学部the department of Gender, Women and Sexuality Studiesと、セクシュアリティ&クィア研究準修士課程 Graduate Certificate in Sexuality & Queer Studiesの学生を対象に提供している、ジェンダー・女性・セクシュアリティ研究(GWSS)の博士論文および修士論文のデータベースGender, Women & Sexuality Studies: Dissertationsは、複写の図書館への納本が行われていた2012年までのGWSSの論文を、次の項目によって検索できるようになっている。
    ・著者
    ・題名
    ・論文のジャンルまたは分野別見出し
     theses GWSS,theses Feminist Theory,theses Queer Theory and Transnational Feminism
    ・テーマ(キーワードの組み合わせ検索による)
    “theses” &” black queer studies”,”theses” & “transgender identity”
    GWSS,Feminist Theory等の見出しが付される基準や、black queer studies,transgender identity等のキーワードが付される基準は突き止め得ていない(University of Washington Libraries (UW))。
    THLのThe Dissertation Databaseのそれをはじめ、検索されたデータベースにおける対象論文の把握収集方法、登録基準等の踏み込んだ調査を継続してまとまった知見として報告することを、本項他の課題事項の進展状況とともに、次報以降の課題とする。
    ②把握・収集・調査・登録作業の共同化、プロジェクト化
    そして何より、移管後もなお筆者が抱え込み、個人作業を続けてきてしまっている、把握・収集・調査・登録作業の共同化、プロジェクト化を進めなければならない。これがなければ、WANへの移管はデータベースの置き場の引っ越しを越えない。具体化、着手を要する喫緊の課題である。

    7.おわりに
    WSGSDDBに集積された博士論文の情報を通じて、日本のWG/GSの40年間の動向の一面を提示した。前項に記した活用可能性の拡大と課題の解消の進捗状況報告ともども、今後も本ジャーナル上への、博士論文データベース発の、WS/GSの可視化を継続していく。

    文 献
    Department of Women's and Gender Studies, college of Arts and Sciences,University
    of South Florida (USF):Women's and Gender Studies Theses and Dissertations.
    https://scholarcommons.usf.edu/wst_etd/ (閲覧日2018年9月30日)
    Research gateway for Women's Studies, Colorado State University (CSU)
    :Dissertations and Theses. Women's Studies.
    https://libguides.colostate.edu/c.php?g=65046&p=416690
    (閲覧日2018年10月7日)
    Syracuse University Libraries (SU):Women's & Gender Studies: Dissertations.
    http://researchguides.library.syr.edu/c.php?g=258189&p=1724221
    The Department of Women's, Gender and Sexuality Studies at The Ohio State University (OSU):Dissertations and Theses..
    https://wgss.osu.edu/graduate/dissertations-and-theses (閲覧日2018年9月30日)
    The Department of Women's Studies and Feminist Research, Western University (UWO):Women's Studies and Feminist Research Theses and Dissertations.
    https://ir.lib.uwo.ca/womens-etd/ (閲覧日2018年10月7日)
    The Digital Repository at the University of Maryland (UM):Women's Studies Theses and Dissertations. T http://hdl.handle.net/1903/2809 (閲覧日2018年10月7日)
    The National Institute for Health and Welfare (THL), Finland:The Dissertation Database. https://thl.fi/en/web/gender-equality/what-s-new/dissertations.
    (閲覧日2018年9月23日)
    UCLA Library: Gender Studies, Dissertations. http://guides.library.ucla.edu/c.php?g=180210&p=1625196
    (閲覧日2018年10月7日)
    Women's Studies,College of Literature, Science, and the Arts, University of Michigan (U-M):Dissertation Titles.
    https://lsa.umich.edu/women/alumni-friends/dissertation-titles.html
    (閲覧日2018年10月7日)
    University of Washington Libraries (UW):Gender, Women & Sexuality Studies. Dissertations. http://guides.lib.uw.edu/c.php?g=341735&p=2299649
    (閲覧日2018年10月7日)
    赤司 秀明:学際研究のための基礎的研究の必要性. 学術の動向. 1(6),1996: 77
    池田 光穂:超領域研究機関の構想に関する基礎研究.1997,
    http://cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/forum97.html
    大場 淳:学際性の進展とその影響.大学研究.19,1999: 181-199
    国立国会図書館:リサーチ・ナビ 海外博士論文(インターネット情報源). https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-335.php#kanren(2018年2月21日更新、閲覧日:2018年9月23日)
    国立国会図書館:国内博士論文の収集.http://ndl.go.jp/jp/collect/hakuron/index.html(閲覧日:2018年9月22 
    日)
    国立国会図書館関西分館:国立女性教育会館情報課を通じたレファレンスの回答(2018年9月21日).
    辻 京子:児童虐待問題への経済階層とジェンダーの視点からの研究.2017,
    http://repo.lib.tokushima-u.ac.jp/ja/110055
    内藤 和美:女性学/ジェンダー研究博士論文データベースをつくる.NWEC実践研究.4,2014: 144-157
    認定NPO法人ウイメンズアクションネットワーク:WS/GS学位論文データベース.https://wan.or.jp/hakuron/search/
    文部科学省:学位規則の一部を改正する省令の施行について. 2013,
    http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakuin/detail/1331790.htm
    (閲覧日:2018年9月22日)

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    著者名:井上 輝子 ・ 上野 千鶴子

    コメンテーター:治部 れんげ(じぶ れんげ)

    タイトル:フェミニズムは人生に効く薬    少なからぬ女性が社会に対して違和感を覚える時期がある。例えば数年を主婦として過ごした後、学歴や能力に見合わない低賃金労働しか提示されない時。あるいは愛して結婚したはずなのに、出産後は家事育児などケア労働を妻に任せて知らん顔をしている夫に気づいた時。または残業できない人を二級労働者扱いする職場文化に接した時。多くの女性が「日本には女性差別がある」と気づく。  たとえフェミニストの自覚がなくても、ここに記されたアンソロジーを読むと「私の問題が書かれている」と思うだろう。明治維新から現代まで、日本の150年におけるフェミニストの思考と主張、分析、そして怒りの歴史だ。取り上げられた論文や寄稿のテーマを出版年と合わせて見ると、女性を取り巻く根本課題が1世紀を経て「変わっていない」ことに驚く。  例えば伊藤雅子「子どもからの自立」は1975年の出版である。母親に対する過剰な期待と自らそれを内面化して生きてきた女性に、個としての生き方を問う言説は、今も雑誌「婦人公論」でよくみられる。そして、その「婦人公論」には、今から60年以上も前の1955年に石垣綾子「主婦という第二職業論」が掲載され、他媒体、男女識者を巻き込んで「主婦論争」が起きた。議論の核となるのは、無償で社会的には評価されない一方、過重に愛と献身を求められる「主婦という仕事」の矛盾するありようである。    多少はフェミニズムの知識がある人も、第二波フェミニズムや主婦問題の火付け役はベティ・フリーダンの「フェミニン・ミスティーク」(1962年)だと思っていることが多い。先行して日本で質の高い議論があった事実は、もっと広く海外に知られるべきだ。    近年、母親がひとりで育児を担う「ワンオペ育児」が社会問題として認知されるようになってきた。問題の本質を上野千鶴子「家父長制と資本制」は次のように看破する。「家事労働という不払い労働が「層としての女性」に課せられている事態こそ、女性抑圧の物質的基盤であり、この物質的基盤の変革こそが、フェミニズム革命の目的である」。    この事実は本質を突いているがゆえに、当事者の強い心理的抵抗を呼び起こす。夫婦は愛で結ばれた共同体であるというロマンチック・ラブ・イデオロギーを、女性も強く内面化しているためだ。私はこれを「可愛い妻問題」と呼んでいる。諸条件に恵まれれば、女性にも仕事と育児の両立は可能だ。しかし、仕事と育児と可愛い妻の3つを同時にやることはできない。「どれか1つをやめて下さい」と言うと、多くの女性が反発する。    この文書はもともとスペイン語圏で出版するため作られた。日本語で先行する類似文献がないことを踏まえ、特別に日本語でも公開したものである。本アンソロジーには、他にもリプロダクティブヘルス/ライツ、性暴力、家制度など、女性を取り巻く諸課題を150年前に遡って記している。早いうちに読むほど、自分を縛っているものに気づきやすい。フェミニズムが人生に効く薬であることを、若い世代に知って欲しい。

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  • アトピー性皮膚炎は母親の責任か? 2018/05/19

    2018/05/19

    • リサーチ

    著者名:奥津 藍子

    コメンテーター:雨宮 処凛(あまみや かりん)

     読みながら、何度も「そう、まさにそうなの!」と口に出しそうになった。  アトピーという、命に関わらない病気が蝕む子どもと母親の心。本論文に書かれているように私の母親も私と弟のアトピーの治療に奔走し、民間療法に手を出し、コロコロ変わる食事療法のブームに振り回され、ステロイドを巡って錯綜する情報に翻弄され、多大な時間とお金を費やした。しかし、それでもよくならなかった時の罪悪感ときたら。 ある時期から、気づいていた。母が苦しんでいるのは私たちの病気だけではなく、偏見だということに。 「子育ての仕方が悪い」かのように言う人もいれば、「妊娠中の過ごし方が悪かった」というような論調もあった。母はことあるごとに私たちに謝った。なぜ、謝ったのか。それは「自分がいい母親でないから子どもたちのアトピーが治らない」と母もまた思い込んでいたからだ。 「愛さえあれば治る」という、科学的根拠をまったく無視した当時の言説に母は追い詰められていた。ガンなど他の病気であれば決して「母の愛があれば治る」なんて言われないのに、なぜかアトピーにだけ過剰に求められる母の愛。そして多くの家庭がそうであるように、アトピーをめぐる記憶に父の姿はほとんど登場しない。 アトピーと母親という問題には、ジェンダーをはじめとして、この国の歪みが存分に詰まっている。そして母親は到底負えない責任を負わされて孤独な戦いを強いられてきた。が、アトピーと無縁の人たちにはまったく知られていないだろう。私が子ども時代一一主に80年代になる一一の母親たちに何が起きていたのか、この論文によって、改めて多くの発見があった。意欲的なテーマに取り組んだ著者に、拍手を送りたい。

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  • 奪われた「言葉」と「記憶」を取り戻すためのフェミニズム ~セクシュアルアビューズサバイバーの当事者研究~ 2018/05/19

    2018/05/19

    • リサーチ

    著者名:荒井 ひかり

    コメンテーター:信田 さよ子(のぶた さよこ)

    被虐待経験や母との関係を語る文章を目にすることは珍しくなくなった。やっと、という思いである。被害という言葉は加害を告発するという意味が含まれているはずなのに、窃盗や交通事故の被害とは異なり、DVや性暴力は被害者がスティグマタイズされてしまう。被害もまたジェンダー化されるために、多くは語られず、なかったかのように被害者は生きなければならない。#MeToo!のムーブメントが静かに広がっているのは、あの華やかなハリウッド女優たちも自分と同じ経験をしていることを知り、国を超えた「仲間」を得ることでカムアウトする勇気をもらう女性が多いからだろう。 しかし性虐待(近親姦)被害は、その背景やプロセス、構造の複雑さから、連続してはいるものの同じ平面上で語ることは困難だ。「記憶」が問われるからである。トラウマ記憶に関しては研究が進んでいるが、定義される以前に意味不明の症状(著者は摂食障害を発症した)や、奇妙な体感が先駆する。何故なのか、何なのかがわからないままフラッシュバックが起きる。性虐待・トラウマと命名できるまでの混迷の深さ、自己定義してから始まる新たな混乱と怒りは、しばしば当事者がそれを語ることを妨害する。しかし言葉がなければ、新たな語り直しがなければ生きていくことはできない。このような切迫感が本論のいたるところに満ちている。「失われた記憶が蘇る度に、連なりが途絶え、私は自分を作り直さなければならなかった」というくだりは、胸が痛む。 これだけ多くの言葉が日々ネットやメディアを通して溢れているのに、性虐待被害者がサバイバルするために必要な言葉を与えてくれたのはフェミニズムだけだった。「この当事者研究の目指すところは、フェミニズムの言葉によって自分を作り直した軌跡を辿ること」なのである。これは研究の原点を私たちに突きつける。客観性やエビデンスの持つ価値を否定するものではないが、ひとりの人間が生きていくためにどうしても必要な言語的活動はすべて研究と呼べるのではないか。本論は、既成の心理学や精神医学が取りこぼしてきた(もしくは僭称してきた)被害者像を当事者がフェミニズムの言語を用いて作り直し、しかもそれは仲間とともに行われることを示した。このような当事者研究と、客観性と論理性を旨とする既成の研究とを架橋するのが研究者の役割ではないだろうかとさえ思う。 もっとも秘されタブー化された性虐待被害者たちが、生き延びるためにほかでもないフェミニズムを必要とした。本論は当事者学としてのフェミニズムという原点を明確に示したものだろう。著者の勇気を称えたい。

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