20世紀百年にわたる女性の短歌を鑑賞する
「本書は、一九九五年上半期、「西日本新聞」に連載した「女のかたち・歌のかたち」を中心に、短歌を作らない一般読者にも気楽に読んでもらえるような女性の歌鑑賞を集めた。一九九〇年代半ばまでに刊行された歌集の歌が中心になるが、そればかりでなく二〇世紀全般にわたる百年の女性の嘆きやよろこびの全容がたどれるように構成、若干加筆訂正した。
九〇年代半ばあたりからバックラッシュが始まったが、二〇二三年日本のジェンダー・ギャップ指数は、一四六ヶ国中一二五位という過去最低の順位である。残念に思いつつ、しかし本書はフェミニズム的な側面ばかりでなく、女の経験の総体を自分の身体で濾過させるようにして書いたものを集めた。」(あとがき)
短歌をつくらない人にも、読みやすい本です。
目次抄出
Ⅰ 女のかたち・歌のかたち
恋
産む/産まない/産めない
母と子
婚/制度
家族の関係
主婦の仕事
職業
歴史/時代
病
想/肉体
死/いのち
自然/風土
性/ジェンダー
Ⅱ 歌人と歌集
此身一つもわがものならぬ―白蓮と武子
家の女 ― 若山喜志子
離縁宣告―今井邦子と斎藤茂吉
(以下省略・その他、五島美代子・斎藤史・中城ふみ子・森岡貞香・馬場あき子・河野裕子・俵万智・道浦母都子・永井陽子など)
掲出歌より
悪(あく)龍(りょう)となりて苦(くるし)み猪(ゐ)となりて啼(な)かずば人の生み難きかな 与謝野晶子『青海波』1912
梅雨ばれの太陽はむしむしとにじみ入る妻にも母(はは)にも飽きはてし身に 山田邦子『片々』1915
未亡人といへば妻子のある男がにごりしまなこひらきたらずや 森岡貞香『白蛾』1953
車より樹の間とほして燈(ひ)の見ゆる家には本当の幸福ありや 渡辺貞子『山歴』1975
いくさにて裂かれしからだ後生(ぐしやう)にて必ず直してあげるから子よ 桃原邑子『沖縄』1986
画面より「鉄の女」の声ひびき東のわれの今日のをののき 三国玲子『鏡壁』1986
◆書誌データ
書名 :女のかたち・歌のかたち
著者 :阿木津 英
頁数 :240頁
刊行日:2023/8/4
出版社:短歌研究社
定価 :1815円(税込)