
第5回 フェミニズム塾アドバンスコース 受講レポート
by ストロングあすか
8月28日のゼミ司会に立候補した私は、開始前にちょっとお高めの栄養剤を飲み、熱中症にならないようにエアコンの温度と水分を確認して、庶務担当の方がつくってくださったタイムスケジュールを頭に入れて、19時前にPCの前にスタンバイする。 このゼミでは受講生の関係はフラットで、司会や記録(レポート執筆)も皆が経験する、情報生産者になるための訓練の場だ。 19時開始! 緊張するな〜、だってはじめての司会なんだもん。
今日のゼミのテーマは、The 「方法論」。
あらかじめ宿題にもらった4本の博論と2本の卒論の抜粋を読んで、担当者はその論文の方法論はなにかをレジュメにして発表するのだ。方法論?え〜っと、、、??と頭に「はてなマーク」が点滅してるけど、ここをクリアしないと私は前には進めない、ということはわかっている。フェミニズム塾アドバンスコースのバイブル「情報生産者になる」を何度読んでも、「はい、これが方法論です!」と説明できるようになってない自分がもどかしい。脂汗を垂らしながら、宿題を読めるだけ読んで今日のゼミに備えた。
むずかしい。博士論文なんて今まで読んだことないし、何を書いているんだかわからない、といいたくなる。
だけど、上野先生が、私たち塾生が解こうとしているさまざまな問いにつながる博士論文をみつくろってくださっていることはわかる。この論文はあの人の問いに使えそう、この方法はあの人の研究用かな、と想像しながら読むのは、上野先生の指導に愛を感じる時間でもある。上野先生はきっと、ワードローブから服を選ぶのと同じように軽やかで楽しげに、頭の中の本棚から論文を選んでくださったのだろうな、とも思う。
私たちがフェミニズム塾アドバンスコースで学ぶ理由は、自分をとらえてはなさない問いに、方法論という道具をつかって、答えを導き出すためだ。だからゼミ生の発表と質問はどれも真剣で、一言でも聞き漏らさないように集中しているのがPCの画面越しに伝わってくる。
「この道具(方法論)は自分の問いに使えるかどうかを判断するためにも、明晰に自分の問いを立てておくことが大切です。研究計画書の重要性もよくわかったでしょ。」と上野先生はおっしゃった。はい、だから方法論がよくわかってないんだわ、あたし。。
もう一つ今日は上野先生のミニレクチャー「コメントの仕方について」があったので、内容の一部をここに書き出してみよう。
・コメントは攻撃ではない。より説得力があり、よりクオリティーの高い論文にするためのお手伝い。
・「論文にこのことが書かれていない」と書き手の関心のないものを要求するコメントがあるが、それは外在的なコメントです。無いものねだりは控えましょう。
毎回のゼミの終了後、塾生全員からコメントがレスカ(レスポンスカード)で、ゼミ終了直後から続々と届くのは楽しみの一つなのだが、今日のレクチャーで、私は冷や汗をかいた。これまで毎回、塾生の研究計画書発表へのレスカ(レスポンスカード)に私が書いてきたことは、無いものねだりの外在的なコメントばっかりだったよ、、、。
「よい論文を書くためにはたくさんのよい論文を読むことです」って、フェミニズム塾アドバンスコースのバイブル「情報生産者になる」に書いてあった。
もしかして、WANのサイトに「WAN女性学/ジェンダー研究博士論文データベース」https://wan.or.jp/hakuron/search/ があるのはそれでなのかな。
いろいろな方法論という道具を使いこなせたら、楽しいだろうな。
「研究って面白いでしょ」とおっしゃる上野先生にむかって、大きくうなずいてみたいな。
だから私は、フェミニズム塾アドバンスコースで学んでいる。
SANAE
フェミ塾アドバンスコースは、8月は夏休み、講義はないはずだった。ところが、7月の講義の時、上野先生が突然、「8月に文献購読をしましょうか」と言われた。
「鶴の一声」ならぬ「千鶴の一声」である。即座に8月28日に講義が設定された。
この時までに私たちの研究計画書はリベンジを重ねて、完成に近づいていたが、そのプロセスで上野先生は気が付かれたと思う。予想以上に私たちが方法論を知らないということを。
上野先生いわく研究計画書は「羅針盤」である。しかし、羅針盤があっても航海術を知らなければ私たちは、港に戻ることも目的に着くこともできず、大海をさまよい続ける。
上野先生は、私たちに方法論ゼミの必要を感じられたに違いない。
ゼミのためにご指定された文献は博論が5件、卒論が2件。博論は難しい。読み始めると途中で文章の迷路に入り込み,字面は追えるが、内容が頭に入らない。それでも文献ごとの担当者からの素晴らしいプレゼンと上野先生の解説により、高みにあった方法論に手が届きそうな気がしてきた。
研究者たちの労作は多くのことを私にもたらしてくれた。
そのデータ数に圧倒されたが、雑誌分析のお手本をみせてくれた論文。上野先生の「方法は結果を導き出す」に思わずうなずく。
プレゼンテーターの功績でもあるが、研究者も私たち初心者と同じように研究計画書通りに論述していることを知った驚き。
きわめてシンプルな質問に対し、言葉ではなく反応を収集し、様々な視点から検証する。検証可能な仮説を証明するとは、このことかと合点する。参与観察の実例も新鮮だ。
かくして「先行研究の検討は方法論を導く」の上野先生の言葉が実感をもってくる。
「上野千鶴子は怖い」と思う人が世の中にはいると思う。確かに怖い。不適切な言葉遣いや、概念を曖昧に定義しようものなら、鋭いご指摘がある。でも、怖い以上に上野先生はやさしい。指定された文献は、数ある論文の中から、どのような研究方法を採用すれば何が明らかになるのかを実例を通して理解できるように配慮がなされていた。研究理論の前で立ち往生している私たちへ手掛かりを下さったのだ。さらに、その優れた論文を読み、自信を失いかける私たちに「小さなことを積み上げれば、大きくなる」と励ましの言葉を忘れない。
夏が終わろうとしている。航海術も授けていただいた。研究の海にくりだす時が来ている。
第五回(KJ法講義)レポート https://wan.or.jp/article/show/10810
第四回レポート https://wan.or.jp/article/show/10754
第三回レポート https://wan.or.jp/article/show/10714
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第一回レポート https://wan.or.jp/article/show/10703
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