
<てるてる Reading Circleとは?>
2012 年に女性学(「女性の女性のための女性による学問」)の第一人者である故井上輝子先生が和光大学を定年退職後「木曜研究会 」をスタート。2014年度に「GF読書会」と名称変更し、WANサイトの女性学講座コーナーに半期ごとの活動報告を掲載。2021年に井上先生が逝去された後は「てるてるReading Circle」として、オンラインで活動中。メンバーはさまざまなバックグラウンドの 30 ~ 70 代の女性たち。現在新メンバーを募集中。ご連絡はこちらまで:teruterurc@gmail.com
<書籍紹介>
本作は、ジェンダー論の専門家でもなく、服飾史家、社会学者でもない著者が、「ピンク」という男と女、大人と子供、様々な人々の欲望が絡み合った複雑なテーマを扱ってもいいものかと悩みながら、海外の関連記事や論文を収集しながら少しずつ書き進めたという。
なぜ女児はピンクを好むかという疑問を皮切りに、ピンクの歴史や文化的役割、ジェンダーへの影響など、女性がもつ「ピンク」に対する複雑な気持ちを考察した一冊であり、各章ごとに多角的な視点から見つめていく構成は読みやすく、「あるある」「へぇーそうだったのか」とモヤモヤと感じていたことが明文化されていく爽快感がある。
特に、「客体としてのダサピンク」と「主体的に選び取られたイケピンク」の対比は、納得のいく指摘である。論じる過程で、多様性を押し進めようとする玩具・人形メーカーの努力や、アグレッシブ(男子)対 パッシブ(女子)ではなく、アサーティブなキャラクターの登場する映画・テレビ作品が人気となってきている変化も知ることができた。
また、この本で興味深いのは女性だけでなく男性についても言及されていることである。著者は「ピンクの女性性の押し付けに悩む女性たちが自分だけのイケピンクを見つけるように、既存の男性性と相いれない男の子が自分だけの男性性を見つけられるよう、大人が助けてあげよう」と提言している。男女ともに押し付けのジェンダー性の苦しみを軽減していく方向に社会が動くことを期待したい。
なお文庫版(2019年)では、一部の統計などを新しいものに差し替え、出典元の参考文献・注を入れ、2016年以降のバービー人形の多様性への取り組み、女児向けSTEM玩具の最新情報等も載せている。単行本未収録のエッセイも増補。
<読書会を終えて>
各章ごとに担当者がレジュメやパワーポイントを作成し、論点をまとめた上で6回にわたって感想を話し合った。ピンクは、メンバーの年代によって「ギャル文化を象徴するパワーあふれる色」だったり、「海外からの支援物資の中にあった初めて見る鮮やかな可愛い色」であったりと、記憶のイメージはさまざまであった。また、フェミニズム界での性差を否定して、女児からプリンセスやピンクを奪うようなかつての中性指向型のアプローチに居心地の悪さを感じていた者には、もやもやが解消する一冊でもあった。男女ともに期待されるのは、適切な自己主張・優しさ・共感能力であり、次世代の子どもたちがピンクの罠にはまってしまわないように、絵本やアニメ・玩具等の選択には注意を払って見守っていかなければと自戒し、著者最後の言葉「いろいろなことが、少しずつ変わっていく」には希望を感じた。なお、アメリカ映画『バービー』(2023年公開)で、高らかに歌われる「ピンクは万能のカラー♪」のフレーズはさまざまな解釈が可能で、この映画もお勧めしたい。
◆書誌データ
書名 :女の子は本当にピンクが好きなのか
著者 :堀越英美
頁数 :247頁
刊行日:2016/3/14
出版社:(株)Pヴァイン
定価 :2400円+税
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