モイ!(Moi!こんにちは!)
森屋淳子です.

 新型コロナ感染拡大に伴う自粛生活が続いていますが,皆様お元気でお過ごしでしょうか?
フィンランドでも3/16に緊急事態宣言が発令されてから,もう少しで2ヶ月になります.
例年,5/1のVappu(ヴァップ:メーデー)には,国民が街にくり出し,皆でピクニックして春の訪れをお祝いするのだそうですが,今年は自粛.各自で静かにお祝いしました.
それでも,皆の自粛の甲斐もあって,Vappu前日の4/30には政府より,「プレスクールや小中学校が5/14から再開する」との発表があり,子供たちは「久しぶりにお友達に会える!!」と,とても喜んでいます.

自粛生活の新たな日課として,朝さんぽを始めました.朝の光を浴びると,心なしか体調も良いようです.



 日本でも,休校の長期化に対応するため,遠隔授業実施の試行錯誤が始まっていると伺っています.そのため,今回の記事では,フィンランドで子供たちの遠隔授業の取り組みを実際に体験し,私が大切だなと感じたことをご紹介させていただきます.

1. 各家庭の状況に応じた「合理的配慮」の実践
 フィンランドでは,政府の緊急事態宣言後,わずか2日間で授業が遠隔化されました.
その背景には,学校と家庭の連絡ツールとして日常的にWilmaというWebツールとEメールがすでに利用されていたことや,日頃からさまざまなコンピュータのアプリケーションを授業に活用していたことが挙げられます.
 また,「パソコン/ダブレットのない家庭には,ノートパソコンを貸し出す」「プリンターのない家庭には,印刷したものを配布する」「小学1~3年の子どもで家庭学習が難しい場合には対面授業を行う」「希望者には給食の提供を行う」など,各家庭の状況に応じた選択肢が用意されており,「これぞ合理的配慮だわ!」と感服しました.
「合理的配慮」とは,下の右図のように,個々人の特徴や場面に応じて発生する障害や困難さを取り除くための調整や変更のことを指します.

よく見かける図で原典は不明ですが,横並びの平等(左)ではなく,合理的配慮(右)が大切だと思います.



2. 学校が休校なら,保護者有志で!オンライン勉強会の取り組み
 長男の小学校で迅速に遠隔授業が導入された一方,長男と次男が毎週土曜日に通っていた日本語補習学校では,政府の発令より早い3/7より休校となり,その後,3/30には「第1学期は休校」との判断になりました.
日本語で話せるお友達との交流を子供たちが毎週楽しみにしており,7月下旬に日本へ帰国予定である我が家としては,「このままお友達と会えずに帰国するのか・・・」と,とても残念でした.

 そんな中,次男(新小1)と同学年の保護者の方から,メーリングリストに「本来なら新1年生として新しいことをたくさん学ぶ時期なのに,お友達と一緒に学べないのはとても残念なので,有志でリモートの集まりを開きませんか?」というメールが投稿されました.

なんて素晴らしい提案なんでしょう!!

 その提案に賛同した有志11名で,4月より土曜日に,約50分程度のリモート勉強会を開催することになり,今のところ4回実施してきました.オンラインツールは何を使うか,どれくらいの時間で何を行うか,誰が先生役を担当するか・・・それぞれのニーズが違う中,色々な課題はありましたが,メーリングリストやWeb会議でアイディアを出し合い,試行錯誤しながら進めています.

 実際に勉強会を始めてみたことで,ヘルシンキ日本語補習学校の先生からも「一度,オンライン勉強会を見学してみたい」というお話があり,前回の勉強会には講師の先生もオンラインで見学してくださりました.また,現在,オンライン勉強会で使用しているZoomにはレコーディング機能もあるため,子ども達が楽しそうに張り切って勉強している様子をレコーディングして,先生や運営委員会の人たちにも見ていただくことができました.

お友達の顔が見えて次男も大喜び!(ぼかしを入れています)



第3回の勉強会で挨拶当番を任命され,張り切る次男.



3.小さく始めてみることのススメ
 フィンランドはICT先進国ではありますが,皆がICTに長けているわけではありません.それでも,「とりあえず始めてみる」「始めてみて,うまくいかなければ他の方法を試してみる」「試行錯誤を繰り返しながら改善させていく」という前向きで柔軟性のある姿勢は,本当に素晴らしいと思います.また,大人がそういう姿勢を見せることは,子供にも良い影響があるに違いないと感じています.
 こういう非常事態では,「最初から完璧に」「以前と同じように」というのは無理です.何が自分たち/子供たちにとって大切なのか?の優先順位を見極めて,優先順位の高いことから始めること.「できない理由」を考えるのでなく「どうやったらできるか?」を考えること.自分たちが今の状況でも利用できるツール(たとえば保護者のスマートフォンなど)を使って,創意工夫を凝らしてみること.そういった「試行錯誤の過程」自体が,私たちの大きな学び/喜びにつながると考えます.

4.子供たちの「教育を受ける権利」を大切に
 フィンランド政府は,学校再開の根拠として,「国内外の疫学的な評価により,子供が感染源となっている可能性は低いことが分かってきた.そのため,学校閉鎖する法的根拠がもはやなくなった」と説明しています.その一方で,学校再開による感染の再拡大を防ぐため,大人数で集まらないようにする,授業時間をずらす,通常であれば食堂で食べていた給食を各教室で食べるなど,さまざまな対策をとるように学校側に推奨しています.

 そのため,学校の先生たちのご負担は多大ですし,「まだ学校再開は早いのでは?」「夏休みに入る5月末まで休校を延長しては?」という声もあります.それでも,子供たちの基本的人権である「教育を受ける権利」を奪うことの悪影響と,現時点で判明している科学的根拠を天秤にかけて考えられた結果のようです.

 以上,フィンランドで子供たちの遠隔授業の取り組みを実際に体験し,私が大切だなと感じたことを紹介させていただきました.
国によって感染状況は違うので,日本の状況はまた別だと思います.しかし,根拠もなくむやみに子供たちが犠牲になることは避けなければならない,と強く感じました.
私たち大人が,未来の社会を担う子供たちのためにできることは何か,優先順位をよく考えて,最善を尽くしていきたいです.

子供たちも大好きなOddi図書館.5/4に政府より,図書館閉鎖が解除されることが発表されました!



5月に入り,フィンランドでも桜が満開になりました.フィンランドで桜が見られるなんて,嬉しい驚きです!



・・・ 「フィンランドで見たジェンダー意識と子育て支援」バックナンバー
第1回(2020/2/10):“34歳女性首相”が誕生する社会
第2回(2020/3/10):休むことはお互い様
第3回(2020/4/10):フィンランドの新型コロナ対策

  「フィンランドの遠隔授業の取り組み」については,読売新聞でも取り上げていただきました!
ぜひ,お読みください.
「教育のネット活用,自治体や学校間で格差・・・フィンランドや米国は子どもの生活状態把握も」