2月8日、自由法曹団は、「東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の即時辞任及び同組織委員会理事の4割以上を女性にすることを求める」声明を出されました。

以下声明の抜粋です。

 会議は、本来、議題に則して参加者の意見交換の上で結論を導く場であるから、様々な意見が交わされる結果、時間を要することもある。また、新メンバーが参加することによって、それまでになかった新たな視点や視角からの多様な意見が出され、会議の議論が豊かになり深まったりすることで合意形成がなされることもあるから、会議の時間の長いことを一律に否定的にとらえるべきではない。
 したがって、森氏のように会議の時間が長いことに消極的な評価を加えること自体、会議の実質的な役割である多様な意見の交換を通じた合意の形成を否定することでもあり、民主主義の否定にもつながるものである。
 また、森喜朗氏は「私どもの組織委員会に女性は7人くらいか。7人くらいおりますが、みなさん、わきまえておられて」とも発言しているが、東京オリ・パラ組織委員会の女性理事は「わきまえて」いるから発言時間が短いという趣旨であり、「わきまえない」女性の発言時間を規制すべきという意見を公言したものである。このような「わきまえない」女性の議論を制限することは民主的合意形成に反するものであって、到底容認することはできない。

2月10日、沖縄弁護士会は「森喜朗氏による日本オリンピック委員会(JOC)評議員会での発言に抗議する会長談話」を発出されました。

以下談話から抜粋

森氏発言は、会議で発言が長いのは女性という性別そのものに根拠があるとし、女性に「わきまえる」ことを求める女性蔑視、女性差別発言であると言わざるを得ない。また、今なお日本社会に厳然と存在する性別に基づく偏見、差別、不平等な取り扱いを固定化、増長するものであり、看過できるものではない。
オリンピック憲章には、「オリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」(オリンピズム根本原則の第6項)と謳われており、この理念は日本国憲法第14条(法の下での平等)、第24条(両性の平等)のそれと共通する。

2月10日、仙台弁護士会は「東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長の女性蔑視発言に抗議する会長声明」を出されました。

以下声明からの抜粋です。

3 両性の本質的平等(憲法24条)の理念を踏まえ、政府は、男女共同参画社会の実現に向け、社会のあらゆる分野において2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待するという目標(「202030」)を2003年に閣議決定した。にもかかわらず、目標設定から18年が経過した現在も上記数値目標は達成できていない。世界経済フォーラム(WEF)の2020年男女平等指数で、日本は153カ国中121位である。
4 森会長の発言は、上記現状のもとで、男女共同参画社会の実現に向けた取組みに完全に逆行するものであり、性差別意識が社会に根強く存在していることを裏付けるものとの評価を免れない。また、森会長の発言及び会見は、瞬時に諸外国のメディアでも大きく取り上げられ、批判を受けた。森会長の発言を単なる失言として放置することは、世界各国から、日本が「性に対する偏見、差別が許容される国」と評価されかねず、男女共同参画社会へ向けた取り組みを無にしかねないものである。

2月16日、第二東京弁護士会会長名で、「森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の発言に抗議し、スポーツを含むあらゆる分野における男女共同参画の実現を求める会長声明」が出ました。

以下声明抜粋

この森会長の一連の発言は、客観的事実に基づかず、男女の固定的な性別役割分担意識や性差に関するアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)を臆面もなく発信したものであり、これが組織委員会の会長であり、わが国の首相の立場にあった人物の発言として内外に大きな衝撃を与えた。森会長のこの一連の発言は、組織委員会の会長の立場で、JOCの評議員会という公式の場でなされたものであり、「オリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向(略)などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」(オリンピズム根本原則の第6項)と定めるオリンピック憲章及び東京2020大会ビジョンである「多様性と調和」の理念に真っ向から反するものであるばかりか、わが国政府が推進し、日本全体が真摯に取り組んできた男女共同参画社会実現への努力を根底から否定するものである。それにもかかわらず、JOC会長をはじめその場にいたものはそれを制止・批判することもなく、この発言が公になった後も、各界で森会長を擁護する発言すら見られたことは、ジェンダー・ギャップ指数が世界第121位(Global Gender Gap Report 2020)といわれる現代日本社会が抱えるこの問題の根深さを露呈したものと言え、およそ看過することはできない。

2月16日、第一東京弁護士会からも「性差別撤廃と男女共同参画の推進を求める会長声明」が出されました。

以下声明抜粋

女性が参画する等して多様な構成員にて構成される会議体は、異なる意見をぶつけあう結果、おのずと議論が活発になり長時間に及ぶこともあるかもしれない。しかし、多様な構成員の積極的な発言により議論が活発化すること自体は、民主主義の発露として、またあらゆる角度から議題を検討・検証するという観点から、望ましい会議のあり方である。むしろ、議論を尽くさず、事なかれ主義にて会議が進行し、他の構成員や事務局に忖度して意見を述べない方がよほど問題がある。しかるに、公的組織のトップの地位にある人物が「わきまえ」るという言葉を用いて意見を控えることを美化することは、女性が会議体において意見を述べることに対し萎縮効果を与えるものである。