こころ
相談No.5「早くしなさい! 今も聞こえる母の声。もっとゆったりと生きたいのに・・・」
2010.11.15 Mon
私はせっかちな質で少しでも急ぐことがあると、すごく気が急いてしまいます。人の前で話していても、時間に追われる気持ちになり落ち着いて堂々と話ができません。
最近、小さな会で話をする機会をもつようになったのですが、持ち時間を超えても堂々と喋っている人たちの中で、私は時間が来たと思った途端に慌てて最後のまとめが思うように話せません。
そのくせ何事も取りかかるのは遅くお尻に火がつくまでできませんし、てきぱきしている面もあるのですが決して手早くできる質でもありません。旅行に行っても荷物の準備など人より遅いのが常です。そのくせ自分が急いた気分の時には人が遅いとイライラしてしまい、それが態度に表れて人を急かしてしまいます。それがとっても嫌です。
こういう質になったのは、子どもの頃、母が物事をゆっくりと丁寧にする姉に「早くしなさい、早くしなさい」と言っていたのを見ながら育ったせいではないかと思っています。
言われても自分のペースでやる姉(何を言われているのか分からなかったのでしょう)の姿を見て、私の方が母の要求に応えて速くすることに懸命だったのではないでしょうか。それで褒められたかというとそうではなく、いつも「早いけれど、荒っぽい」と評されていました。思えば、ちょっと悲しいですね。
私はまもなく60才。今さらではありますが、私の中で勝手に作動する「早くしなさい」というスイッチをオフにできないものでしょうか。近頃、急がされることに極端に弱くなってきたこともあり、もっとゆったりと物にも人にも接することができればと願うこの頃です。よい方法を教えて下さい。
回答
NO.5 回答
何度か拝読して、おっしゃるように、あなたは基本的にはのんびり屋さんなのかな、と思いました。けれども、「早く、早く」と親が姉に言ってることをご自分にも言われていることと受け取ってしまったのですね。
母と姉の葛藤がイヤ、自分にも言われるのがイヤ、等々で、あなたは言われなかったけれど(言われるより先にやったので)早くやれるようになってしまった。じつに優等生でしたね。こういう場合は結構ありますよ。たとえばわがままな姉と親との言い争いがイヤで、妹は従順というふうに。
で、私が考えてみるに、そのようにムリをなさったご自分が今となっていささか辛くなったのではないでしょうか。ご自分のペースでやりたい、と。でもひょっとすれば、ご自分のペースがよくわかっておられないのかも。ゆっくりと「上がり」あわてて「終わる」などというのも、ペースの不明の実例かもしれません。
だとすれば、もっともです。となれば、ご自分のペースを掴むということが、課題でしょうか。「ゆっくりやりたい」のですよね。これをしっかり胸に刻んでください。ここが曖昧になれば、揺らぎますから。
で、ゆっくり「上がり(別に登壇のみならず何にでも)」ゆっくり「終わって」ください。そんなことをしたら、始まりも終わりも混乱し恥をかくと思っていらっしゃいますか? でもそれでいいのです。恥をかく(と私は思いませんが)なら、それを通してまずは、優等生的なものを一度壊すのですね。なぜならこの「優等生性」は、あなたが望んで取り入れていたわけではないからです。
壊す(放り出す)ことが、何を意味するかと言えば、「早く、早く」という、別にあなたは聞かなくてもよかったのに、聞いてしまった母の声です。そう、これは母の声であって、あなたの声ではありません。ここを分別すれば、スイッチオフは少しやりやすいでしょうか。それと自分のペースを掴むということは、時間がかかります。あわてないでね。
回答者プロフィール
河野貴代美
アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。