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こころ

相談No.7 「独立心の強い、母の一人暮らしが心配」

2011.01.06 Thu

70代の母は、父が早くに亡くなってから、わたしを含め二人 の子どもを一人で育て、定年まで勤めた職場を辞めてからも、 子どもたちに迷惑をかけたくない、と経済的にも肉体的にも、 わたしたちに一切頼らず元気に暮らしてきました。
その母が3年ほど前 に、終の棲家として、ケアの充実をうたうシニア向けの分譲マンションを購入しました。母には少しでも子どもたちに資産を残そうという想いもあり、自分でいろいろ検討して決めました。
ところが、この高齢者だけのマンションの中でトラブ ルがあったようで、本人いわく、私生活への介入や共有部分での交流で問題があり、〈村八分〉のような目に会っているようです。通常のマンション以上に住人は管理人さんに世話をしてもらえるのですが、そちらとの関係もうまく行っていないようです。母によれば、管理人からも〈差別を受け〉、郵便受けの中身まで見られていると言うのです。
近頃は、私が母とたまに会えば、マンションでどんな扱いを受けたかの話ばかりです。 一方では、高齢者だけのマンションの人間関係がわたしには想像のつかない状態となることも理解できるのですが、他方で、母の被害妄想かも?と少し心配になることもあります。
本人は、弁護士に相談まで出かけたらしいですが、この程度のことは思い過ごしとまったく聞く耳をもっていただけなかったようです。 心配なので、むしろ精神科を受診したほうがいいのかも?と思うのですが、それは母をとても傷つけることになるので、言い出せません。
本当に母が〈いじめ〉のような扱いを受けているのだとすれば 、マンションの管理人にわたしのほうから、注意したいくらいなのですが、それはまた、母の今後の住み心地が悪くなるとい うことで、母から止められています。 母は外に出かけるのが好きなタイプなので、マンションにはなるべくいないようにしたら?と勧めたりするのですが、そうすると、どこにいったか、何をしているのか、と詮索されると言います。母は、大損してもいいから、引っ越したいと言っています。
母の財産ですし、基本的には母のしたいようにさせてあげたいのですが、しかし、また同じことの繰り返しになりはしないかと懸念します。 今、母にわたしがしてあげられることはなんでしょうか?是 非ともご意見お聞かせください。(滋賀県 40代 女性)

回答

No.7回答

それはご心配でしょうね。 介護付きとか介護へのアクセスが密だったりする、なんというか 共同生活的な要素をもつところのようですね。私の知る限り、このような 場合だと留守を届けたり、送着物を受け取ってもらったり、イベントが 企画されたり等、人間関係が緊密のようです。
お母さんは「独立的」な方とのことですが、この住環境のどの程度を承知で入居されたのでしょうか。 仲間がいるのがいい、と思われたか、介護を心配しなくていいとか? 子どもさんたちに迷惑をかけないように、というのが大きい動機でしょうか。 また見学にいらしたときに、何か感じることなどなかったのでしょうか。
いずれにしても、母上の現在の状態を客観的に把握することが重要だと思われます。 そこで考えていただけそうな部分を書き出してみます。
① 彼女は、これまでも、あなたがお書きになっているような「被害妄想的」 傾向がありましたか。「〜される」「〜と思われている」の〜の部分が否定的。 たとえばお便りにあったように、「見張られている、いじめられる」感覚です。これを私は「られる」症候群と呼んでいます。受身的というか。でも彼女は 本来は違う方のようにも聞こえます。
② 仲の良い同住者はいないのかしら。 もしいれば聞いてみるのもいいかもしれません。
③ 管理人さんって、 あなたなりの判断でどんな方?母上は嫌がっておられますが、 これからも住み続ける場合を考えれば、聞いてみたほうがいいように思います。
全部を言うのではなく、たとえば、「人間関係で、何か気づいたことはないか」 程度です。もちろん、「そんな人なら居ていただくのは困る」にならないように。 もしうまく聞き出せるようなら、さらに母上の様子をどう見ているか、なども。
会話を重ねれば、どんな人かは少しはわかるでしょう。それとあなたとこういう話をしたことは、母に言わないように、と念を押しておきます。この秘密が守れ ないようなら、管理人失格ですね。
ただ、被害妄想と片付けてしまわず、また表層的な助言ではなく、 彼女のなかで何が困窮しているのか、被害妄想的に表現している (かもしれない)本当のところは何か、辛抱強く聞いてあげてみるのも 必要かもしれませんね。人は本当にしたいことがわかっているわけでない 場合が多々ありますから。

回答者プロフィール

河野貴代美

アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。