法律
相談 36:学生に教員からハラスメントを受けていると相談されたが、
2016.02.11 Thu
当方、大学の非常勤講師です。私の授業を受けている学生(女性)が、常勤の教員(女性)に授業中に無視されたり明らかに自分のことと分かることで貶めるようなことを言われていた。その授業だけの付き合いと割り切り取り合わないようにした。が、あまりにも低レベルの批判を向けられて、これ以上は我慢しない方がよいと思い大学の窓口に相談に行ったところ、そこでは対応できないからと他の課に、そこからまた他の課へと回され、どこでも「あの先生か」という雰囲気でまともに取り合ってもらえなかったとのこと。最終的には「自分で先生に言うように」と言われて、唖然としたそうです。
あまりの対応に落ち込んでいるところに、他の授業でもケータイをいじっていた学生(女性)が教員(男性)にマイク越しで怒鳴られたり、彼女自身も、質問したことがその教員への批判と勘違いされてわめき散らされ(こちらは大学も問題視したそうです)、そんなことが重なって急に無力感に襲われてしばらく大学に出られなかったそうです。
本人は、私に話した時点でもうあと数ヶ月のつきあいで終わるので問題にしないと決めており、私に聞いてもらって心の整理をつけたいということでした。
そこでお尋ねしたいのですが、大学でこのような問題を訴えても取りあってもらえない場合に、どのような訴え方をすれば効力があるのでしょうか。あるいは学外で相談できるところがあれば教えて下さい。このケースは本人がやりすごすことを決めていますので、問題の内容については触れませんが、一般的なこととしてお教え下さい。
回答
回答 36:養父知美さん(弁護士)
1.大学に、「ハラスメント防止に関する規程」があれば、そこに定められている制度にのっとって、「申立」をする。
最近では、「ハラスメント防止に関する規程」を置いている大学も増えています。「ハラスメント相談員」、「ハラスメント防止委員会」、「ハラスメント調査委員会」等の機関が設置されていて、ハラスメントについての相談・助言、事実関係の調査、被害者に対する救済措置(指導教員の変更など)、加害者に対する指導や懲戒処分を含む措置、被害者と加害者との関係調整(謝罪など)などが定められており、「申立」をすれば、一定の期間内に、調査結果やそれに基づく措置がとられことが多いようです。「申立」の提出先、様式など、「規程」に従って、行ってください。
もし、あなたの勤務されている大学に、まだ、そのような制度がなかったり、制度が不十分であれば、あなたから、制度の創設、改正を、働きかけてください。
2.「訴え」を行ったこと、「訴え」の内容を明確にする。
①ハラスメントの具体的事実(いつ、どこで、誰から、どのようなハラスメントを受けたか。ハラスメントに至った事情。ハラスメントによる被害など)、②大学に望む措置(被害回復、救済のための措置。加害者に対する措置など)を明記した書面で、行ってください。回答期限を切ってください。
宛先は、「ハラスメント防止委員会」等、担当部署が分かっていれば、そこの「長」宛、わからなければ、「学部長」、「学長」など、当該学部、大学の代表者宛にします。
③ハラスメントの証拠(メール、録音、事実経過を記載した陳述書、証言してくれる人)があれば、添付するか、提出する用意があることを明記します。
提出する前には、必ずコピーを取っておいてください。直接提出する場合は、提出した日時、受け取った人の名前を控えておき、できれば、信頼できる人に立ち会ってもらってください。送付する場合は、内容証明郵便等、確実に配達されたことが証明できる方法を用いてください。
3.弁護士を代理人に立てる。
自分で、「訴え」をするのが難しい場合、「訴え」たが、大学がまともに対応しようとしない場合、弁護士に相談し、弁護士に代理人になってもらうのも一つの方法です。代わりに、大学と交渉してもらうこともできます。大学も、さすがに「無視」はできないようです。
4.裁判所に訴える。
ハラスメントの悪質性、被害の大きさにもよりますが、ハラスメントの直接の加害者のみならず、大学をも被告として、損害賠償を求める裁判を起こすという方法もあります。
5.NPOアカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク(NAAH) http://www.naah.jp/about.html
上記団体が、ハラスメントの被害相談、被害解決支援の活動を行っています。
電話、E-mail、手紙でも、相談を受け付けています。
電話 06-6353-3364 ※ 月~金【 9:00~18:00 】,土【 9:00~13:00 】
E-mail Soudan@naah.jp
手紙の郵送先
〒530-0044 大阪市北区東天満2丁目9-4 千代田ビル東館507号室
アカデミックNPO事務局
以上
回答者プロフィール
養父知美
とも法律事務所は、知をもって(法律の専門家としての知識をもって)、友として(あなた自身や家族になりかわることはできないけれど、あなたの力になりたいと願う友人として)、共に(ひとりで頑張らないで、ひとまかせにしないで、一緒に)、問題解決をめざす法律事務所です。